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3 あれだけ来るなと言ったのに!
暗闇の中、茶色っぽいものがぐんぐん近づいてくる。
巨大猫!
ランめ!
あれだけ来るなと言ったのに!
ん?
ランか?
あ、誰か跨ってる!
くそ!
ええい!
なんでこんな時に!
構うものか!
まずこの二人だ!
「待ってくださーい!」
と、また声。
みるみる近づいてくる。
あれは!
あ、ああ!
大猫から飛び降りると、女にしがみついた。
「お母さん!」
えっ!
なんだ?
どうでもいい!
もはや時間がない!
連れていけ!
暴れまわる女と車椅子を妖怪が易々と抱え上げた。
「話は後だ! ハルニナもメイメイも! あいだみちへ!」
走るな!
車椅子の子に負担がかかる。
走らずに急げ!
あいだみちに飛び込むと、口はたちまち閉じられた。




