315 見舞ってやってはくれないだろうか
さあて、と。
出かけるか。
今日は、みんなと初詣。
京都の藤森神社にお参り。
拘置所から送られてきたエヌケイビーからの手紙。
そしてコールミーからの手紙。
エヌケイビーからの手紙には、高校時代から今に至るまでのヤタブーに対する思いが連綿と綴られていた。
肉筆で書かれた思いは、胸に来るものがある。
一年半ほど前、春の天皇賞の日。競馬場で出会ったイオと、なんとなく親しくなり、その夕、競馬場内のプチカジノ型遊園地「ポーハーハー・ワイ」で遊んだ。それが、すべての不幸の始まりだったと書かれてあった。
その夜、淀駅近くの競馬ファンが集まる居酒屋で食事した。
後にも先にも、競馬場外で会ったのはその一度きり。
その時、上町ペンタゴンを経営してると話したことが、そもそもの間違い。
それさえ話していなければ、付きまとわれることもなかったのに。
その後、ヤタブーの体調が悪くなっていった。
最初はその原因がわからなかった。
病院に行こうと言っても、行こうとしない。
何度も尋ねるうちに、イオから連日、あなたの夫が浮気している、あろうことか、妻と別れて私と結婚する予定だと、嘘だらけの手紙が届いている、ということが分かった。
いつの間に撮ったのか、ポーハーハー・ワイで遊んだ時の写真や居酒屋での写真も何枚か、添えられて。
なんと、行ったこともない店やラブホテルの前の写真も。合成した写真なんだろう。
時すでに遅し。
妻はすっかり心を病んでいた。
もう、俺を、自分の夫を、信じられなくなっていた。
イオとの話し合いを持つつもりはなかった。
そんなことをすれば、それを逢瀬として、また嘘の手紙が送られてくる。
もう、殺すしかない。
しかし、絶対に捕まるわけにはいかない。
自分がイオ殺しの犯人として捕まれば、妻はどうなるだろう。
これ以上、妻の心を傷つけるわけにはいかない。
以前、根本道場で寝てみた時、妙な声を聴いたことがある。
人を殺して戻ってくれば、願いを叶えてやろう、というように聞こえたことがあった。
これだ。
この手を使おう。
ミリッサ君、そういうことだったんだ。
先日お願いした件、妻や娘に会ってくれただろうか。
本当に、身勝手なんだけど、見舞ってやってはくれないだろうか。
きっと、俺はもう、妻や娘に会うことはないだろう。
面会に来てほしいとは思うが、来てほしくないとも思う。
身から出た錆。
あわせる顔がないんだ。
頼む。
見舞ってやってほしい。
ヨウドウ君と一緒に。
そんな内容の手紙だった。




