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310 妖怪軍団に取り囲まれて

 父母は離婚しました。

 その理由、私はよく知りません。

 父も母もいい人なのに、なぜ、って思いながら大きくなりました。


 妹が病気になったことは関係ありません。

 父が私を引き取り、母が妹を引き取った後で発病しましたから。


 母とは、時々ですけど、連絡を取り合っていました。

 福崎に行く前の晩、久しぶりに母から連絡が来ました。

 避難、ちゃんとしてる? しなきゃダメよ、って内容でした。

 明日、福崎に行くよ、って返事しました。

 お母さんは、どこに避難するの、て聞きました。


 そしたら母は、私はどうしようか、迷ってるって言いました。



 ものすごく不安になりました。

 母は妹を一途に愛しています。

 迷ってるってことは、妹の状態が悪く、連れ出せないってことじゃないか。


 運悪く、父は海外出張で連絡もままなりません。

 何度も母に呼びかけました。

 避難しなきゃ、って。


 でも、それきり返事が来ません。

 焦りました。


 母の住まいは京都競馬場の近く。

 今すぐ、避難してくれなくては。



 とうとう当日になりました。

 迎えに行こう、と思いました。

 どこでもいい。

 とにかく、少しでも京都競馬場から離れたところへ。

 ネットカフェでも野宿でもいいから、どこかへ避難。


 私、車、運転できませんし、電車ももうすぐ止まる。

 タクシーも近くまでは行ってくれません。

 焦りまくっていました。


 そんなタイミングで母から連絡が来ました。


 やっぱり避難はしない。

 むしろ、妹のために、爆心地に行くんだって返事が。


 爆心地?

 そう聞き返しましたが、返事は、あなたは元気で幸せな人生を送ってね、と。


 それきり。


 うろたえました。

 爆心地?



 もしや、と思いました。


 まさか、京都競馬場、つまり、妖怪さんたちが魔獣退治のために何かとてつもないことされる場所、そこに行こうとしてるんじゃないか、と。



 すぐに警察に電話しました。

 救助してくれって。

 母の名前も住所も言いました。

 電話番号も伝えました。


 警察の窓口の方、すぐに出動すると言ってくれました。


 でも、それきり警察からはなんの連絡もありません。

 きっと、母は見つからないよう、隠れているんだと思いました。

 GPSも切ってるんだと思いました。



 もう、無我夢中でした。

 もう、私が行くしかありません。

 なんとしてでも探し出し、徒歩でもいいから、できるだけ京都競馬場から離れたところへ連れ出すしかない。


 家がある山科から自転車で向かいました。



 もう、夜半になっていました。

 時間の猶予はありません。

 あまりに遠い。

 でも、必死で自転車を漕ぎました。


 やっとの思いで競馬場まであと数キロのところまで来ました。


 道路は封鎖されています。

 しかたなく、田んぼ道や堤防を走りました。


 でも、たちまち妖怪軍団に取り囲まれてしまいました。

 行かせてくれないのです。


 そこに、大きな三毛猫が現れました。

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