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309 少しだけ深まった連帯感だけを持って

 やがて、ジンがしみじみと言った。


「いったい、なんだったんだろ。今度の事件」


 サークル部長を慰めるつもりなのか、口々に言う部員たち。

「大人の愛って、怖いよねー」

「食堂のおばさん、定型文だけど、人は見かけに……」

「きれいすぎる人だからかなあ」

「なんかねー」

「もっと、ミリッサみたいにシンプルに、好きって、大空の元で、なんていう風にはならないのかしらねー」


「俺は、誰にも、生まれてこの方四十数年、好き、なんて言葉、言ったことないぞ」

「だからかなあ。ハルニナ先輩もメイメイ先輩も、ラン先輩だって、困ってるのは」


 は? 困ってるもんか。特に、ランはな。


「ふうん。そう? ほんとに?」

「ミカン、しつこいよ。そんなにこだわってたら、あんた、勘違いされるかもよ」

「へへ。勘違いされても、面白いかも」


 なぜか、話は妙な方向に転がっていく。

 もうみんな、あっさり、すっきりしたいのだ。

 いつまでも、ややこしすぎる話をこねくり回していたくはないのだ。

 はい、おしまい、って放り出したいのだ。

 かすかなかすかな達成感と、少しだけ深まった連帯感だけを持って。




「私……」


 と、スズカが誰に言うともなく、独り言のように言った。


「なになに?」

 ジンが特別に明るい声をかける。

 待ってたよ、というように。


「私……」


「どしたん?」

 と、ブルータグも身を乗り出した。

「話して」

 と、アイボリーも微笑んだ。



「私……、キリコの娘……、なんです」



 声にならない驚きの声。

 驚きを必死で隠した顔、顔、顔。


「そう……」

 ガリの声が唯一の反応。

 誰も、声の繋ぎようがない。


「警察から連絡がありました。母は逮捕されました。アサツリ殺害の容疑で」


 無言、という反応。


「自供しています。妹は施設に」



 スズカが顔を上げた。

 ジンを見た。

 そして、ンラナーラに視線を向け、こちらを向いた。


「あの日、先生。本当にすみませんでした。ご迷惑をかけて」

「もうそれ、謝ってもらったよ」

「はい……。あの時のこと、話してませんでしたけど、今、話していいですか?」

「もちろん。あ、でも、話さなくてもいいんだよ」

「ううん。聞いていただきたいです。みんなに聞いてほしいから。五芒星の事件とは関係ないんですけど」

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