307 かなり刺激的な話だけど、大丈夫?
食堂のおばちゃん、イオ。
いわば毒女だった。
一年ほど前から、エヌケイビーの妻、ヤタブーを呪い殺そうとしていた。呪い殺すと言っても、何度も何度も、ありもしないエヌケイビーの浮気を手紙の形で送り続けていたんだ。
エヌケイビーはイオを殺してしまうことで、浮気を完全に清算しようとした。
あいつは俺に、浮気だとは認めなかった。実際どうだったのか、分からない。
いずれにしろ、妻を守るため、と表現した。
エヌケイビーはこう考えたんだ。
イオのことだ。
浮気の証拠を大量に保管しているはず。
ヤタブーを呪い殺すための偽の証拠。
生成AIを使えば、無尽蔵に作れる。
妻の体のことを考えると、もう時間の猶予はない。
そこで思いだしたことがある。
「何年か前に、エヌケイビーは自分の耳で聞いたことがあるんだな」
根本道場に巣食った妖怪が、人を殺せとそそのかしていたことを。
そこで思いついた。
これに便乗すれば……。
イオを殺しておいて……。
ペンタゴンを除く四つの地点で各一つずつの殺人。
自分が捕まることはない。
立派なアリバイを作っておきさえすればいい。
四つの事件は、別の事件として扱われ、それぞれの犯人が捕まる。
四つで打ち止め、と判断されれば、イオの死体が発見される恐れは小さくなる。
「かなり刺激的な話だけど、みんな、大丈夫?」
「うんうん。それで?」
奈良のチサ殺しは誤算だった。
クワッチーサビラが殺し損ねた。
でも、事件化したので、同じこと。
「なるほどね。でも、大勢に影響なし」
と、ジン。
「そう」
「もし、イオさんの死体が発見されたとしても」
「だな」
「実際に人を殺した犯人が、真っ先に疑われる」
「ジン。冴えてるね」
「そりゃ、ミリッサに鍛えられてるからね」




