303 スルメをこねくり回しながら聞いた話
ショウジョウは我関せずという顔で、スルメをこねくり回しながら口に入れている。
この調査をショウジョウに依頼してあることを、結果が出るまでは伏せておきたかったが、もう、いいのかもしれない。
「ショウジョウ殿、それで、あと一つ、依頼してた件は? もう、分かりました?」
猿妖怪が胸を張った。
「もちろん。これが一番、手こずり申した」
ミリッサ殿がワレに依頼なさった中でも、これが最も難題でござってな。
なにしろ、一カ月間の行動を洗い出せ、とのお仰せですから。
少々ニュアンスが違うが、いいだろう。
続けてくれ。
あい、分かり申した。
まず、コールミーという男。
八月一日から二十日まで、京都の病院に入院しておりました。
膵臓癌だとか、で。
検査入院、ってやつですかな。
カルテも見ておりまする。
かなり、お悪いようで。
検査入院としては、長うござるし、数年前からこれで三度目でござるしな。
退院後は、ほとんど出歩かず、八月中は、近所のスーパーに何度か、それから床屋に行っただけですな。
住まいは宇治で、少なくとも宇治市内から出ておりません。
次は、クワッチーサビラという男。
こちらは、八月一日から沖縄に行っとります。
向こうでは、どうも金策ですかな、親戚やら高校や中学時代のお友達、幼馴染巡り。
八月十日にそのまま東京に飛んで、また、金策行脚。
大阪に帰って来たのは、八月十五日。
その後は、火曜日午後に出かける以外、店に閉じこもっておりました。
「そうだったのか……」
もっと詳しく話しましょうか?
「いや、さすがショウジョウ殿、調べきることもすごいが、報告も的を得て端的。大変参考になりました。ありがとう」
大げさすぎるくらいにショウジョウを労っておいて、ジンらの反応を見た。
実は自分自身が驚いていた。
こんなに明確に、推理を否定されるとは。
「なんだあ」
とジンが呟いた。
「一から、やり直し?」
「挙がってた名前、全部消えちゃったけど……」




