298 どれもこれも無理筋でしかない
キリコ、奈良の古社で暴行されそうになったチサ、暴行しようとした男、そして、上町ペンタゴン関係者、具体的にいうとココミクについて、吟味された。
しかし、当然ながら唸るばかり。
「じゃ、ささやき担当は殺されてるって仮説」
しかし、こちらも結局、アイボリーの「無理すぎ」の一言で瞬殺。
「じゃ、最後にクワッチーサビラさんにスポットを当てたいと思う。あの人について、ボク、思い出したことがあるんだ」
あの人が自殺した時、ミリッサとボクはその現場にいた。
そして、死んだ人の顔を見た。
「おでこにでっかい傷があって、周りが真っ赤に腫れあがってたんだ。今できたばかりの傷じゃないよ。つまり、自殺した時についた傷じゃない。もっとずっと前、できた傷が治らなくて腫れあがってる。そんな傷」
でね。
奈良の古社で襲われた女の人は、とっさに男の顔に石を叩きつけたんだ。
それで助かったんだけど、それってさ、クワッチーサビラさんの顔の傷じゃない? って。
「あ、それって」
と、推理の解らしきものが見えた気がしたのだろう。
皆の顔に一瞬、希望が浮かんだが、これもたちまち萎んでしまう。
「結局、チサを襲った犯人だったとしても、コールミーささやき説と同じ。ささやき犯という意味では無理筋でしかない」
チャイムが鳴った。
ルリイアが出ている。
議論はいったん、小休止。
「あんまり、食事、進んでないね。ここで食事タイムにする?」
「だね!」
ルリイアに手招きされた。
「ショウジョウという人が先生を訪ねてきています」
「ほう」
インタホンに出ると、小柄な男が映っていた。
迷彩服を着、サングラスに黒いマスク。
「ミリッサ殿」
「おう、ショウジョウ殿か」
「左様でございまする」
「今開ける」
「かたじけない」
「いったい、そんな格好でどうした? 目立ちすぎるだろ」
「え、左様ですか? え、と、お渡ししたいものが」
「ん?」
「根本道場入場者のリストを作成いたしましたので。それから」
「お、そうか。さすがサイバー隊、早いな」
そうか。
それなら。
「ランもいるが、いいよな?」
「どういうことでしょう?」
「皆の前で、説明してくれるか?」
「かしこまってございまする」




