292 ほんと、すごいね
手を挙げる者はいない。
「じゃ、ボクから話すね。ボクも目の覚めるような末脚で差し切れるわけじゃないよ。いい?」
何人かが頷いた。
「ミリッサから聞いてる話もあるから、それも織り交ぜながら。今日は、疑問や思いついたことがあったら、その場で言って。今日が最後だから」
「その前に、俺から」
これまで知りえたことのほとんどは話してある。
ただ、タイムラグはある。
今朝、ショウジョウが届けてくれた情報。これは伝えておきたい。
「奈良の古社での乱暴未遂事件。三カ月前、正確に言うと夏休みの終り、八月二十六日火曜日の深夜。
チサという若い女性が襲われた。
乱暴されそうになったのか、殺されかけたのか、そこは女性の供述はあいまい。
もう一つ。
京北事件。
サリ殺害の容疑で拘留されているピックパットの供述。
殺人を自供している。
聞き取った警察官の記述はこうだ。
上町ペンタゴンの根本道場でお告げがあった。
願いを叶えたくば、五芒星を回れ。
五本木の地で出会う女を殺せ。
そこで、翌週火曜日九月二日の深夜、京北の五本木に向かい、居合わせた女を殺した。
「とのこと」
「ミリッサ、新情報をありがとうございます! でも、それってどうやって」
「手に入れたか、か? あれ、あれだよ。ほら、猿の妖怪」
「あ、そか! ショウジョウさん!」
「その通り! いろいろ役に立つ」
「へえ! なるほど。ミリッサって、ほんと、すごいね」
「ランが」
「フフ。じゃ、進めていいですか?」
「ああ、後はジンに任せる」
ジンがすべての情報をごく短いフレーズで説明していった。




