286 彼女のために…… 自分のために……
それに、先生、ご存じですよね。私はカニ。
人を好きになる、ということを避けてきました。
なので、経験が……。
恋、と言いましたが、よくわかりません。
彼女もカニ。
揺れ動く心。
でも、彼女、会った時に、なんといいますか……、コロッと変わった態度……、そんなことは一度もありませんでした。
……、私のことを、その……、少し、好きになってくれているのではないか。
そんな期待、思い、願い? が募りました。
そんな思い、正夢と言いましょうか、現実になれば、どんなに幸せだろう、と思うように……。
かといって、若い人のように、ストレートに、とはいきません。できません。
つかず離れず、というのでしょうか。
遠くから見るというのでしょうか。
自分の勘違い、ばかげた夢、という考えが心の中に大きく存在していました。
どうなるものでもない。
いつか彼女には好きな人ができて、別れの時が来る。
それはわかっています。
それでいいのです。
彼女には幸せになってほしい。
これが私の望むことです。
私はその時まで、自分勝手な夢を見ておればいい。見させてくれればいい。そう思っていました。
勘違い、夢、片思い、彼女の幸せを願う気持ち、自分の幸運を願う気持ち。
そんな思いが交錯する日々でした。
彼女のために……。
自分のために……。
しかし、私はカニ。
意識は揺れ動きます。
時に振れ幅が大きいときには、自分の気持ちを律するのに、苦労することもありました。
そんなとき、彼女に嫌な思いや、もしかすると恐怖を与えてしまったこともあるかもしれません。
その都度、私自身も苦しみました。
ノイローゼ一歩手前だったこともあります。
会いたい、もう会わないでいよう、と常に、気持ちは揺れ動いていました。
はっきりしているのは、私が彼女を生涯、幸せにすることはできないということ。
それなら、もう会わないほうが彼女のため。
でも、まだ夢を見ていたい自分もいるのです。
彼女から五芒星の巡礼の話を聞いたことがありました。
私もしてみよう。
そうすれば、この葛藤も、少しは鎮まってくれるかもしれないと思いました。
苦しみを和らげてくれるかもしれません。
一回目、今年の春に回りました。
なんていうんでしょう。
なんとなく、気持ちが落ち着いたような気がしました。
単に、回ったという達成感だったのかもしれませんが。
二回目、そう、先生とばったりお会いした時です。
回り終えました。
でも、一回目ほどの達成感はありませんでした。
行けないところが多かったことも影響しているのかもしれません。




