277 琉球列島に伝わる銘酒にて
ステージの中央。
車座に座っている。
その中央にお館様と俺。
まさに差しつ差されつの距離。
自分の目の高さはお館様の鳩尾あたり。
目のやり場がない。
右側にはラン、そしてハルニナ。
左にはマカミ。
お館様に負けず劣らずの特大オオカミ。胡坐をかいて座っている。
ランの姿が女の子の姿でホッとはするが、正面と左側の威圧感が半端ではない。
妖怪たちは、それはそれは飲むは飲むは、食うは食うは。
様々な催し、アトラクションが行われているが、それどころではない。
俺の後ろには妖怪が長い列を作っている。
一言、ご挨拶を。
一献、盃を。
その間にも、お館様がお声を掛けてくださる。居並ぶ妖怪連中をご紹介くださる。
名刺交換するわけでもないから、その瞬間に名を覚えねばならないが、そんな芸当、持ち合わせていない。
子狐が一人、盆に一粒の錠剤を持ってきてくれた。
飲めという。
いいのか、飲んで。
ランが、目で大丈夫と言っている。
それでは。
何の薬か知らないが。
お。
酩酊が近かった頭が一気にすっきりした。
体もしゃんとした。
なるほど、体内のアルコール分を一瞬にして分解してくれる薬か。
これは人間界で販売すれば、大人気間違いなしだ。
いつ果てるとも知れぬ宴。
ガリさん、頼むよ。学生たちのこと。
飲みすぎないように。
それに、適当な時間に引き上げさせてくれよ。
ん?
ジンがいないな。
そうか。
誰かに案内を頼んで、シュウに会いに行ったのだろう。
「ミリッサ殿。それがし、琉球の小島に住まいをいたす黒墨乃大王と申すものでござる。さきほどの貴殿のご挨拶、いたく感服いたしました次第にございまする。これなるは琉球列島に伝わる銘酒にて、ぜひご相伴にあずかりたく。ささ、ご一献。サトウキビを原料とし……」
長蛇の列は、どんどん伸びて、もはや最後尾がどこかもわからない。
まさか、この数万人を相手にせにゃならんのか?
ランやハルニナとも話したいが、とてもできる状態ではない。
そのハルニナがお館様と、なにやら小声で話している。
きっと、コアYDの復旧について、頼み込んでいるのだろう。




