274 脳に酸素だ!
「ミャー・ランの良人、ミリッサ殿じゃ!」
良人!
言うのではないかと思った。
「そしてその子弟の方々! そしてその友人の方々じゃ!」
体はまだゆっくり上昇していく。
お館様の高さまで。
と思ったが、そうではない。
さらに高みを目指す。
畏れ多くもお館様の頭上、倍ほどの高さで上昇は止まった。
ライトが眩しい。
ここで、挨拶するのか!
なんという!
持ち上げてくださるのはよいが、こんな不安定な状態で!
しかし、何を話せば。
頭の中、真っ白白の透明状態。
ヤバすぎる!
真下には、学生たちの顔が輪になっている。
「ミリッサー、頑張ってー」
特大獰猛猫から発せられたランの甘い声。
こんな時に。
なに言ってやがる。
妖怪連中から、笑い声が上がった。
嘲笑ではない、と思おう。
しかし、ランのおかげか、妙に落ち着いてきた。
深呼吸だ。
深呼吸。
大きく息を吸って……。
吐いて……。
スーーー、ハーーー。
スーーー、ハーーー。
脳に酸素だ……。
聴衆は静まり返った。
よし。
前置きはなしだ。
お館様のお言葉もごく短かった。
威厳をもって。
しかし、できるだけ大きな声で。
でなければ、ランにだって届かない。
では、参るぞ。
「お!館様!より!!!」
わわっ。
「声、デカすぎー!」
ランの声。
知らんがな。
こんな大きな声になる仕掛けがあるなんて。
再び笑い声。
う、嘲笑、ではないと思おう。
では、改めて、参るぞ。




