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111 三つの殺人事件、ひとつの自殺、二つの行方不明……

「俺が知っていること、話していいか? アイボリーやミカンの行方とは離れていくし、関係ない話かもしれないが」

「……そうしてくれ」

「あくまで、関係ない話、かもしれない。いいな」



 学食のパート職員イオが行方不明であること。

 栗東の呉掛風穴で元騎手レイミの死体を発見したこと。

 京北の五大木というところで、フウカの上司サリの死体が見つかったこと。

 能勢の胡竜滝で、元競馬場職員アサツリの死体を見つけたこと。



「これらも警察は捜査を始めている」


 ヨウドウは何も言わない。

 そう、言えないだろう。睨みつけたくもなるだろう。

 自分の娘が行方不明なのだ。

 安易な感想など、言えるはずもない。


 代わって、ジンが呟いた。

「殺人事件……。栗東以外にもあったんだ……」

「そう。二人も」

「しかも、今度は見ず知らずじゃない人が……」



 学食のパートさん、イオとは見知った仲。

 サリと会ったことはないと思うが、フウカの上司。

 元競馬場職員アサツリは、かつてルリイアを通して因縁の仲。

 そして、たこ焼き居酒屋は何度か行ったことがある。かつ、ブルータグ、ピンクタグのアルバイト先。

 そもそもは、たこ焼き居酒屋案件、などと言って、始めた調査。

 なにも進んでいないし、まともに話もしていないが、それでも発端はこれ。


 これらの事件と、アイボリー、ミカン含めた百余名の失踪事件。

 なんら根拠はないが、全く無関係と切り離してしまっていいだろうか。




「三つの殺人事件、ひとつの自殺、そして百人以上が行方不明……」

 ジンが、逡巡している。

 ガリの目が突き刺さっている。


 ヨウドウは目を閉じてしまった。

 スズカらは不安そうな目を向けてきた。



「ジン」

「ミリッサ」


 そうだ。

 これはジンが始めた調査。

 任せなければ。

 でないと、教員が学生に押しつけた、ことになってしまう。

 ジン、辛いだろうが。

 難しい判断だろうが。


 でも、もう無理、でもいいんだぞ。

 アイボリーとミカンのことは警察に任せるしかない、という結論でもいいんだぞ。


 どう、声を掛けてやればいいだろう。

 やめようか、と言えば、やります、と言うだろう。

 続けられるか、と問えば、大丈夫です、と言うだろう。



 しばらく、だれも口を開かなかった。

 花壇の虫が一斉に鳴きだした。


「ミリッサ……、先生……。そう……。ボクは……」


 スズカらの不安な視線を受け、ジンは、ガリに目をやってから、ヨウドウを見つめた。


「ボクは……、調べないといけないと思う。今出たすべてのことを。それから、いなくなった百人に共通することがないかどうか……」



 やはり、そう言うか……。


 本当に、それでいいのだろうか。

 取り組むことは、正しいことなのか。


 俺の本当の気持ちは……。

 アイボリーとミカンを探し出す。これは絶対。諦めるわけにはいかない。

 警察に期待している。しかし、状況から見て、任せきっていいとは思えない。

 ただ、こちらも手詰まり。なんら、突破口はない。


 ならば、遠回りになるかもしれないし、目的地が異なる全然違う道かもしれないが……。

 取り組むべきだ。

 いや、取り組みたい。

 アイボリーとミカンのために。そしてジンのために。ヨウドウのために、みんなのために。


 こう言うしかない。

「ジン、後はジン主導で進めてくれるか」


 ジンは秋空を見上げた。

 ねぐらに向かうムクドリが群れを成して飛んでいく。


 そして、フッと息を吐きだした。

「……うん。でも、その前に、ランのことやお館様のこと、あんたたち、聞きたいでしょ」

 と、スズカらに問うた。


 スズカは肩をすくめただけだったが、ピンクタグがゆっくり、慎重を滲ませた口調で言った。

 知りたいです。ね、お姉ちゃん。

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