109 いやな気、を感じたと言うんだ
藤棚に勢ぞろいしたものの、すでに夕刻。
話し込むには時間は少々物足りない。
ヨウドウもガリも、参加してくれている。
ジンがてきぱきと進めようとしている。
「ボク、ひとつ、思いだしたことがある。アイボリーのこと」
ヨウドウ先生。
あの時のこと、話してくださいよ。
ほら、上町ペンタゴンに行った時、アイボリーは、絶対行くなって抵抗してた。
あれ、なんだったのか。
ボクらと別れた後、アイボリーがどんな話をしたのか。
知りたいです。
ヨウドウが疲れ切った顔をあげた。
「そうだった。それを皆に聞いてもらうべきだったな。アイボリーはあの時」
いやな気、を感じたと言うんだ。
いやな気、言い換えると、悪意のある気配、というのかな。
怨霊とか、そういった類の。
どうもピンとこなかったんだが、いろいろあるだろ。
あの地域は、大戦場になった地域だ。
夏の陣、冬の陣?
それに、大阪大空襲。
地獄絵だったんじゃないか。
そんなことも思い出して。
アイボリーは、具体的に、誰の、とか、何の、とは言わなかった。
でも、娘はそういったことに敏感なんだ。
昔はそうでもなかったんだが、ここ数年、その面の感受性が鋭くなったみたいで。
と、ヨウドウが目を向けてきた。
つまり、妖怪が実在することを前提に話していいものか、と。
あの日、アイボリーの口から、妖怪とか妖とか物の怪、という言葉が出たのかもしれない。
それなら、それを前提にあの日のアイボリーの行動をより詳しく話せるかもしれない。
しかし、スズカやブルー・ピンク姉妹がいる。
この娘らに、話していいものかどうか。
以前、ランは、隠すことじゃない、とは言った。
ヨウドウやガリ、ジンも、妖怪の村に行き、お館様にも会っている。
これらは問題はない。
が、三年生は、妖怪の存在を知らないはず。
知れば、胡散臭がられるだけならまだしも、妖怪に連れ去られたのかも、というストーリーに直結する恐れがある。
妖怪の話は、やめた方がいいかも。




