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107 上手な嘘をつけるようなやつではない

「それ以外に、気になること、ある?」


 うーん。関係ないかも、なんですけど、と今度はピンクタグ。

 ミカンちゃん、ビワイチがどうのこうのって。

 なんのこと? って聞いたら、アイボリー先輩が話してくれたって。

 ミカンちゃん、アイボリー先輩が好きみたいで。

 それでですね、ビワイチって調べてみたら、琵琶湖を自転車とかで一周することみたいで。

 すみません。

 きっと、全然関係ない話ですよね。

 アイボリー先輩とミカンちゃんが、競馬場から急にビワイチに出発したなんてこと、あり得ないし。



 なるほど。

 アイボリーが話したのだろう。それ自体、不思議でも何でもない。


 ジンも、ありがとう、ほかには? と言っただけで、それ、関係ないよ、とは言わなかった。



 これ、言っていいことかどうか。

 と言い出したのはスズカ。


「見たことがあるんです。ミカンが泣いてるのをアイボリー先輩が慰めてるところ」


 いつ頃だったかな。

 夏休み前。

 ミカンが入部する前。

 五号館と八号館の渡り廊下で。

 私、通りかかって。

 なぜ、泣いていたのか、知りません。

 ミカンとまだ親しくない時だったから、理由、聞かなかったし。

 先輩に聞くのもどうかと思ったので。



 これも、ミカンがPHカニであることを示唆している。

 さっきのブルータグの話と同じだ。



 そうか。

 もしや……。


 行方不明者に共通するのは、PHであること、ではないか。

 さらに言えば、PHのルアリアンとカニの抗争に関係するのではないか。


 ミカンもPHカニだとすると、あれではないか。

 パクチー汁。

 飲むことによって、PHではなくなる。

 つまり、アイボリーやミカンはアンマニフェスト中。

 療養期間を経て、本来のアイボリーとミカンになって、復帰する。

 それを知らない人から見れば、こつ然といなくなり、おおむね二週間からひと月で、またこつ然と姿を現す。


 スタンドから急に姿を消したことの説明にはならないが、もしそうだとすると、PHの存在を知らないジンらには、手も足も出ない。

 出ないどころか、真実に近づくこともできない。


 一方、もしそうだとすると、心配は無用、だ。

 ハルニナら、ルアリアンによって丁重にサポートされる。




 ほかには?

 とジンが促しているが、もう、手を挙げる者はいない。


 実は、危惧していたことがある。

 ヨウドウかガリ、あるいはジンから、妖怪の仕業とは考えられないか、という言葉が出るのではないか、と。


 これについて、絶対はないが、あり得ないと思っていた。


 お館様がそんなことをするはずがない。

 そんな指示を出すはずがない。


 あれからお館様にも会った。

 ランにも会った。

 ショウジョウやカワウソや谷川乃蛍にも会った。

 ケンジンというやつにも。

 白龍は俺を助けてくれた。


 皆、普段通り。

 誰にも、そんな様子は微塵もなかった。


 お館様やケンジンはとにかく、ランやカワウソらは、シンプル思考。

 上手な嘘をつけるようなやつではない。

 俺が気づけなかっただけ、という可能性も否定はできないし、信じたいという気持ちが勝っているだけ、かもしれないが。

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