106 二人の共通点として確実にしておく
木曜昼休みの部活。
否応もなく、沈んだ顔、顔。
まだ、アイボリーとミカンの行方は知れない。
競馬場から消えた行方不明者はさらに増えて、百人を超している。
正確な数字は未だにわからないが、現時点で百十一名と発表されている。
捜索は全く進んでいないのか、警察の記者会見は苦渋の顔が並ぶのみ。
今週の京都競馬は、開催の方向と伝えられている。
しかし、ニュアンスとして危うい響き。
いてもたってもいられないのだろう。
ジンは、部活は中止にして、この時間を使って、ジンとミカンのことを話し合いたいと言っている。
無言のまま神妙な顔つきのスズカ、ブルーとピンクの姉妹。
ンラナーラはいないが、ガリやヨウドウまで参加してくれている。
ジンが誘ったのだろう。
ただ、昼休みは残り少ない。
実のある話し合いができるとは到底思えなかった。
「ジン。それでいいけど、尻切れトンボになるだろ。今日の放課後、もう一度、ここで集まる。あるいは、いつもの教室に集まるというのではどうだ?」
ジンが、ヨウドウとガリを見た。
その時間帯、彼らは勤務時間中。
出てこれないかも、と心配している。
それでも、いいではないか。
その前提で、今、できる限り話し合えばいい。
「それから、もう聞いてるかもしれないけど、ンラナーラは元気だ。会った。心配しなくていい」
と、まずは報告した。
誰もがホッとした顔をした。
ガリは、よかった、と小さく頷いた。
話し合いの前提。
それは簡単なこと。
誰かに連れ去られた、のではない。
自らの意思でどこかに行った。
これが前提。
連れ去りであれば、自分たちにできることはない。
完全に警察の仕事だ。
そして、競馬場から消えた行方不明者にも含まれない、が前提。
百人以上を相手では、自分たちには手も足も出ない。
実際、誰の胸にも、競馬場行方不明者に含まれるのでは、という思いは濃厚。
だからといって、何もしないで警察の働きを待つのみ、とはしたくない。
自分たちにできることを……。
「ヨウドウ先生。アイボリーの行方に繋がることでなくてもいいので、最近の彼女に変わったこととか、ありませんでしたか?」
ジンが早速、話し合いをスタートさせた。
だが、ヨウドウは眉間の皺を深くし、目を瞑って首を振るばかり。
「ミカンの方はどうでしょう」
そうね、関係ないことでも話すということなら、ミカンさんは。
とガリが言い出した。
「ちょっと最近、変わったかな、と感じてます」
具体的にどうってことはないけど、悩みでもあるのかな。
沈んでることも多くて。
あなたたちから見て、どうだった?
ブルータグが三年生を代表する形で応えた。
そうです。
あの子、いつもは、ゆっくり丁寧に話す子なんやけど、最近、急に早口になったり、ぞんざいな言葉になったり。かと思うと、今まで通りに話したり。
こんなこともありました。
お昼にクロワッサンとパウンドケーキ食べたいって言うから、学食じゃなくカフェに行ったんです。
そしたら、チャーハン頼むんですよ。それなら、学食の方が安くておいしいのに。
授業ではどうだったか。
俺にはそこまではわからない。
しかし、今の話から、ひとつ仮説は成り立つ。
ミカンはアイボリーと同じくPHのカニではないか。
ハルニナの言葉と符合する。
カニは意識はまだら。
最近そうなったということは、マニフェストしたばかりなのかもしれない。
ただ、そうだとしても、このことを話すわけにはいかない。
だが、二人の共通点として確実にしておく必要はあるだろう。




