104 本業の仕事も、せにゃならん
翌日、能勢に来ていた。
疲れ果てているが、本業の仕事も、せにゃならん。
能勢町の西部、棚田が広がる農村地帯。
山裾に、打ち捨てられた老人ホームがある。
介護事業者が買い取り、新規の介護施設としてリニューアルする案件なのだが、その価値があるかどうか、すなわち買収する価値があるかどうかを判断するための現地調査。
その一団に同行していた。
一目見て、リニューアルの価値はないと判断できた。
建物があまりにも傷んでいた。
有料老人ホーム胡竜と書かれた看板は半分外れて垂れ下がっている。
窓ガラスは割れ、室内にも雑草がはびこり、雨漏りのおかげで天井は破れ、垂れ下がっている。
外観写真だけで判断すると大きな間違いを犯すことになる。
現地で実際に見て確認すること。
これは鉄則。
使えない、リニューアルはできない、と判断できたことが、今日の現地調査の立派な成果。
後は解体してでも、この敷地を入手する意味があるかどうか。
もう帰ってもよいのだが、せっかくここまで足を運んだのだ。
敷地の確認もしていこう。
かなり広大な敷地だ。
フェンスなどで囲まれてはいない。
周囲に広がる休耕田と、境界ははっきりしない。
事業者の幹部連中と、境界と思しき畦道や水路に沿って歩いてみる。
排水溝がまだ機能しているのか、土留めはまだ有効か、と順に見ていく。
図面には表現されていない障害物はないか、と。
木の杭が立っていた。
文字が書かれてある。
「ごりゅうだき」と読める。
なるほど、胡竜はこりゅうではなくごりゅうと読むのか。
あらかじめ見ておいた地図には敷地裏側から田畑に向けて沢があり、滝の記号があった。
これだな。
杭の矢印は、敷地の山側を指していた。
建物の裏手に回った。
すぐ近くまで山林が迫っている。
これは、大雨の時、危険かもしれませんね、などと言いながら、山裾に沿って歩いてみる。
サラサラと水が流れていた。地図にある沢だ。
増水による浸水、土砂崩れの恐れはないだろうか。
せせらぎに沿って、小径がある。
ちょっと見てきます、と小径を沢に沿って登って行った。
じゃ、一緒に、と業者連中もついてくる。




