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103 あ、裸の方がよかったんや

 いくばくもせず、胸のお守りが熱を持った。


 そうか。

 こっちから来るか。

 頼むから、素っ裸で来るのはやめてくれよ。

 ちゃんと服着て、出て来いよ。

 念のため、カーテンを閉めておこう。


 お守りの下からオレンジ色の煙が吹き出した。

 同時にランの声が。

 あの時と一緒だ。


「宿題、持ってきたよー」

「服、着てるやろな」

「あ、裸の方がよかったんや」

「冗談言うな」



 オレンジ色の煙は出続けている。

 煙は室内には広がらず、リビングの中央に溜まっている。

 凝縮し、濃度が増してくる。

 徐々に形を成してきた。

 人の形に。


「あいだみちから来てもよかったんやけど、ハルニナの依頼のせいで、あいだみち連中、今日はお取り込み中」

「なるほどな」


 煙はいよいよ濃密に、物質的なものに。

 人の形はますます明瞭になっていく。


「ご飯作られへんけど、いい?」

「気にするな」

「この方法やったら、物持って来られへんから」


 ついにランが床に横たわっていた。

 こちらを向いている。

 いつものランの姿。

 黒猫でもなく、巨大黒豹でもなく。


「お待たせ」


 ランは立ち上がるなり、トカゲの頭を撫でた。

「ご苦労さま」




 ランは、まず宿題、提出するね、と話し出した。


 フウカの上司、サリ。

 死んでいた。

 場所は、京北町の山中。

 場所はここ。


 スマホで位置情報を送ってくれた。

 金閣寺からまっすぐ北。国道四七七号が大きく屈曲するあたり。山中。

 地名なのか、五大木、という文字があった。


「警察には言ってないよ。ミリッサ、見に行く? 明日だったらあいだみちも通してくれると思うよ。ま、山道をずんずん登って行ったら行きつくけど」

「いや、死体発見者にはなりたくない。もう、こりごり」

「せやね」

「それとなく、警察に知らせてくれ」

「りょーかーい」



 サリの死体は、とてつもなく大きな木の洞の中に倒れていたということだった。

 明らかに絞殺死体。

 死後、ひと月ほど。


「立ち喰いそば店なら開けるくらいの洞なんやって。祠があって、その後ろに。他に情報、いる?」

「なんてところ?」

「祠のこと?」

「そう」

「わからない」

「遺留物は?」

「うん。祠に清酒がお供えしてあったくらいかな。女性のポケットの中まで、うちの連中、調べなかったって」

「その清酒。銘柄は?」

「ごめん。それも情報なし。調べなおそうか? 行って帰ってくるだけだから、すぐに調べられるよ。あ、でも、お酒もうないかも。うちの連中、飲んじゃったかも」

「はいはい。じゃ、ポケットの中とか、頼めるか。ほかに人がいた形跡はないか、とか、周りになにか落ちてないかとか、わかる範囲でいいから」

「OK。警察の捜査をかく乱しないように、なにか持ち出したり、死体をできるだけ触らないように、って言っとく」


 それだけ言うと、顔見に来ただけやから帰るけど、また来るねー、とランは消えた。



 早速、フウカに連絡を。

 と思ったが、止めておこう。

 殺されていたことは、フウカにとって知らなかった方が都合がいい。

 知って得することは何もない。

 万一、捜査の矛先がフウカに向かった時、知らなかったで貫き通すためにも。

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