彼女との前世での繋がり
わざと自分が傷付くようなことを聞いて、相手の心を推し量ったり、もう迷惑をかけないように彼女との関係を終わらせようとした。
でもそれが許されないことだと私だけが知っていた。
前世で彼女は私の兄か弟だったようだ。
彼が戦争から帰ってきた時には、実家から遠くに嫁いだ私は、姑にいびられひどい扱いを受け、幼い子供と身投げしてこの世にはいなかった。
墓すら建ててもらえず、供養もしてもらえない私たちに、彼は自殺した場所に大きめの石で簡易なお墓を作った。
「手を合わすしかできない。」
悔しくて泣く日もあった。
時間を見つけては訪ねて手を合わせた。
自分も戦地で言葉にはできない辛い思いをした。
けれど、離れているとか辛いとか忙しいとか大変だとかそんなことを抜きにして、力になれていたらこんなことにならなかったことを一生後悔する人生になった。
裕福で無くても、今よりはずっとマシな生活をさせてやれたと、連れ出せたと、その後自分が結婚しても悔やむ毎日になった。
自殺は周りの大切な人の人生さえも滅茶苦茶にすることをこの時私は学んだ。
そして、今世、彼女が私を助けてくれたり、連れ出してくれた理由もこれで分かった。
自殺すると成仏できないとよく聞く。本当にその通りで、真っ暗闇の小さな空間で絶望と後悔の中、這いつくばって苦しむ自分が視えた。
そして、時間を見つけては何時間もかけて供養に来てくれる彼の愛が無かったら、私は今もそこに取り込まれたままだった。
今世も真っ暗闇の中、地獄の中で暮らしていた私を明るいところへ連れ出してくれた、唯一の友人は前世でも私を救ってくれていた。
今世、彼女は何も覚えていないけれど、魂だけは知っている。
今も私とは離れた距離で暮らしているし、家庭もある。
頻繁に連絡も取らないし、恋愛関係にも発展しないよう、できるだけ長く関係が続けれるように女性で産まれてきた。
私が何度ひどいことをしても縁が切れなかった。
もちろん限界はあると思う。いつかそんな日が来てしまうかもしれない。
けれど、私が死にそうな時、自殺してしまいそうな時、今世もまた同じ過ちを犯してしまいそうな時に唯一救ってくれた友人だった。
そして、そのことを今世で知っているのは私だけで充分だ。
ただ、もう一人手を合わしに来てくれていた人が視えたが、この時はまだ誰か分からなかった。