表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

忘れていた感情


 あの日、ただ何気なくテレビを見ていて、ただ毎日の日常の中を生きていただけなのに。


そこに光る君を見つけて、人生が大きく動き出した。


 ずっと、生きている価値も生きている意味も理由も自信も何も見つけられず、ただ時間を寿命を消費しているだけの人生だった。死ねないから生きていただけだった。もう半分はそんな感じで寿命を使ってしまった。

 食べることも笑うことも心を震わすことも何も魅力に感じない。

性別に囚われた生き方も捨てた。家から這い出せば、空はいつだって朝も夜も輝いていて、嵐の日さえ、私より輝いている。それでも私は死ぬことを許されない。

 雨に濡れても、凍える日も、何も感じない。空腹すら感じない。

 ただひとつ感謝したことは、私には子供も愛する人も居なかったこと。迷惑をかけたり、辛い思いをさせずに済んだこと。心から感謝した。

 いろんな髪型やカラーをして、アレンジをして、いろんなメイクをして、いろんな美容に気を遣って、いろんな洋服を楽しんで、いろんな旅をして、いろんな食事をして、恋をして、恋愛をして、そんな当たり前の生き方を闘病中は望まないように生きてきた。年齢的に妊娠も難しくなる中で、自分の心の声に気付かず死んでしまいたかった。


 でも、君を見つけて華やかな世界に憧れてしまった。高くのぼりたいと気付いてしまった。

ずっとずっと目を背けて見ないフリをして、下を向いて、辛い時にはたくさんあり過ぎる時間をただ消費して生きるしかなった。ダラダラと途方もなく続く暗いトンネルしか私の前に無かった。


 君と同じ舞台に憧れた訳じゃない、ただ自分が望む生き方に気付いてしまった。君と出会って、素直に感謝出来ないくらい痛い現実に気付かされてしまった。


 「どうしてくれるのよ。」


 見なかったら気付かなかったら、もう死ねたのに。幸せに生きたいと願ってしまった。君みたいに素敵な仲間に囲まれる人生を望んでしまった。自分もそうなりたいと気付いてしまった。


 学生の頃、たった一度だけ私の為に母親が親戚に頭を下げてくれたことがある。


 小説家になる夢。その為の費用。

それ以外は、病気になっても他人事だったのに。

 もう一度、その夢を追いかけたいと望んでしまった。本当にやりたいと思うことに気付いてしまった。


 君さ、どうしてくれるのよ。生きたいと叶えたいと望んでしまったじゃない。


「くそったれ。」








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ