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京都


 彼女が連れ出してくれてから、辛くなるとよく京都に行くことが増えた。

バスや電車に乗れるようにもなった。

いろんな神様に会えるようになって少しずつ人生が好転して行くのが自分でも分かった。


 今日訪れた神社では結婚式が行われていた。

たくさんの参拝者に祝福され、身内の人に支えられ、神社の人が差した赤い和傘の下に二人が照れ臭そうに俯き、参道から本殿までを歩いていく。一歩一歩と進む新しい夫婦の歩みが私の心を震わせた。


 自分はこういう幸せをいつしか諦めていた。

誰かを好きになったりすることは、以前の私には依存や憑依のようなマイナス面しか見出さなかった。

だからもう今回の人生では必要無いと思って、考えることもなかった。


「神様、いつかあの人と私も結婚できますように」


気づいたらそう願っていた。


袴姿の彼が頭をよぎる。

照れ臭そうに笑う君の顔が、友人に茶化されて笑う君の顔が、あまりにもリアルに視えて、息を飲んだ。


その隣にいるのが私だったらどれだけいいかと苦しくなって、神様に頭を下げて神社から出て行った。


何の取り柄もないおばさんが、前世がどうだとかゴチャゴチャ言って、住む世界の違う年下の俳優に想いを抱いていることが、どれだけ気持ち悪いことか、自分が一番理解している。


それでも何故か頭から心から離れなくて、苦しい。


 君は今日、どんな顔をしてどんな考えを抱いて、どんな夢や野望を掴もうとして、苦しんだり傷付いたりしながら前に進んでいるのか。

 叶うなら、近くで聞きたいと望んでしまった。

その時、見上げた空は眩しくて、風に流れる雲が形を変えていく。

同じ空が二度と無いように、君の今日も二度と無い。

私はそれを知れないまま、月日だけが過ぎて行くのかな。

 伸ばした手が空に届かないように、私はきっと君には届かないのかな。

君ならなんて言うかな。


「空が上にしかないと思ってない?青く見えないだけで、君の側にある空間が空かもよ。

ずっと側にあったのに気づかなかっただけかもよ。」




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