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第17話 決められた人③

 そんな完璧な生活を毎日送る日々で私は時折、不思議な夢を見る。夢の中の私は、温もりに満ちた木造のログハウスにいた。そこは、現実の私の住まいとどこか似ているようでいて、決定的に異なる雰囲気を持っていた。

 いつもと同じように、夢の朝、私は目を覚ます。解き放たれた窓の外には、夏の盛りのように緑が生い茂っている。普段なら空調の効いた快適な部屋にいるはずの私が、夢の中では、夏の湿気を帯びたまとわりつく熱気と、生い茂る草木の、どこか懐かしい匂いを感じていた。普通なら不快に感じるはずのその空間が、不思議と心地よく、これまでに感じたことのない温かい感情が胸に湧き上がってくる。

 軋む木の階段をゆっくりと降りていく。階下からは、話し声と、何かをコトコトと心地よい音が聞こえてくる。リビングルームに入ると、若い女性と、長い髪を揺らす女の子が、何やら刃物を使って作業をしていた。そして、茶髪の男の子。さらに、もう一人……いや、複数かもしれない——言葉では表現できない、光り輝き、揺らぐ、人の形をしたエネルギー体のようなものが、そこに「いる」。私は彼らと一緒に机を囲む。女の子は、出来上がった料理を次々とテーブルに並べていく。


 ——彼女がこれを作ったのか。バランスが悪い品揃えだが……。


 皆で食卓を囲み、何か言葉を発してから、目の前に出された朝食を食べ始める。食卓に並ぶのは、タンパク質が多く、野菜が少ない、栄養の偏りを感じる品々だった。体調を崩しやすい、もう少しバランスを考えて作るべきだと冷静に分析しながらも、そのどこか栄養が偏っているはずの食事が、なぜか私の心を温かく包み込んでくれるのだった。

 黒髪の少女が私に話しかける。

「どう、スレイちゃん美味しい? 私が今日作ったのよ?」

 ——スレイ。どこかで聞いたことのある響き……。

 その名前は、私の心を本当の意味で暖かくさせてくれた。まるで心の奥底に封印された、遠い記憶の扉を優しくノックするかのように、心の奥底に眠っていた何かを揺さぶるのだった。

 しばらく朝食を食べていると、茶髪の男の子と長い髪の女の子が、唐突に、些細なことで口喧嘩を始めた。男の子が食べ物を残そうとしたこと、それが喧嘩の原因だった。


「いいんだよ、美味しくないからさ!」


「大人になるために、健康に意識して食べなさいよ!」


 二人とも真剣な表情で言い合っている。そんな子供たちの言い争いを、若い女性が優しくたしなめる。

「はいはい、二人とも落ち着いて。そのくらいの量だったら、残してもいいじゃない」

 女の子は「えー」と不満そうな、唖然とした表情をし、男の子は口を半円型にして勝ち誇ったように喜ぶ。

 そして、光り輝くエネルギー体のような存在は、何も言わず、ただ静かに、私たちと一緒にテーブルに座って黙って見守っていた。その存在からは、言葉を超えた温かい波動が伝わってくる。まるで、全てを包み込むような、深い愛情とでも言うべきか、不思議な求心力を持つ存在だった。

 私は、この騒がしくも温かい光景を眺めながら、言いようのない幸福感に包まれていた。胸の奥がじんわりと温かくなり、まるで、ずっと探し求めていた場所にようやく辿り着いたような、そんな安心感に満たされる。


 ——これが、本当に私の求めているもの……?


 そう思った、次の瞬間。視界がぐらりと揺らぎ、意識が急速に薄れていくのを感じた。まるで深い水の中に沈んでいくように、周りの音は遠く小さくなり、目の前の景色はもやがかかったようにぼやけていったのだった。


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日にちが開いた場合も大体0時か20時頃に更新します。


また

https://kakuyomu.jp/works/16818622174814516832 カクヨミもよろしくお願いします。

@jyun_verse 積極的に発言はしませんがXも拡散よろしくお願いします。

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