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第16話 青年(リアン)の望み⑥

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 翌日から僕は、再びエアリアさんのエミュエールハウスで、ただ時間だけが過ぎていく日々に戻った。エヴァンさんの農作業の手伝いもしばらく休ませてもらい、ただ茫然と、子供たちを眺めていた。彼らは本当に強い。きっとリアンとも触れ合っていたはずなのに、もう、いつもと変わらない日常を生きている。その姿が、ひどく眩しく感じた。ロミがフレモをいじり、クレアがエアリアさんの代わりに料理をし、スレイが難解な本を読む。その些細な、けれどかけがえのない日常の温かさだけが、まるで限界まで伸ばされたガラス細工のように、今の僕の存在を辛うじて繋ぎ止めているようだった。

 しばらく机に突っ伏していると、ロミがぐだぐだしている僕を見かねてか立ち上がって言う。


「シン、もう大人でしょ! 僕たちの先生もしてるのに、何やってるの、見ていてダサいよ! 前の姿に戻ってよ!」


 だが、久々に聞いたロミの叱咤は、雑音のようにしか聞こえなかった。


 ——別にいいじゃないか。エアリアさんだって、隙間時間には地下室で作業をしている。大人の僕にだって、そのくらいの時間は許されるはずだ。今の僕は、何も与えられていない、ただのお荷物。何もない机の上でぼうっとしていて、何が悪い? 


 彼の切なる願いが理解できなかった後悔。ただ、僕の存在を認め、温めてくれた人がいなくなってしまった事実。それらが頭の中をぐるぐると回り、失ってしまった喪失感は晴れない。二週間前は、リアンが生きているかもしれないというかすかな希望だけが、かろうじて僕を突き動かしていた。しかし、今はもう、何もない。無理に活力を上げようとする気力さえ湧いてこない。

 そんな僕を察してか、クレアが作った料理を机の上に置きながら励ましの言葉をくれる。


「シン、最近ずっと元気がないみたいだけど、大丈夫? 前みたいに何かしてみたら? シンが生き生きしている方が、私はいいよ!」


「クレア少し厚かましいよ! シンは今やけくそなんだ、ほっといておこうよ! まさかまた……」


「うっうるさいわね! 別に良いじゃない、シンのこと心配しても!」


 しばらくするとロミとクレアはいつもの様に喧噪をはじめ、スレイはいつもの様に本を読み。エアリアさんは地下室にこもり作業を続ける。その中で僕だけが変わってしまった。臨時教員として子供たちに心身の繋がりの大切さを教えたはずなのに、今、それが自分に降りかかっている。まさに、自分が自分に教えるべきなのに、体はまるで子供のように言うことを聞かなかった。僕はただ目を閉じ、この空虚が過ぎ去るのを待つしかなかった。

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日にちが開いた場合も大体0時か20時頃に更新します。


また

https://kakuyomu.jp/works/16818622174814516832 カクヨミもよろしくお願いします。

@jyun_verse 積極的に発言はしませんがXも拡散よろしくお願いします。

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