表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/151

第16話 青年(リアン)の望み③

 ~23期 下旬~  昇恒11時07分  晴れ


 いつものように、意識は深い眠りの淵へと沈み、僕は夢を見ていた。そこは、いつものようにどこまでも広がる白茫々とした空間。一人、取り残されたように僕はそこに佇んでいる。ふと、遥か彼方の一点に目を凝らすと、ぼんやりとした人影のようなものが立っているのが見えた。無性に、その存在と話がしたいと感じ、僕は導かれるように最初はゆっくりとそして徐々にスピードを速める。

 近づくにつれて、その人影は次第に輪郭を帯び、誰なのかがはっきりと見えてきた。間違いなく、それはリアンだった。しかし、彼に近づけば近づくほど、僕は胸に湧き上がる不吉な予感に息を呑む。


 ——!


 彼の体はまるで泥のように形を失い、溶け崩れ、今にも消え去ってしまいそうなほど、儚く、頼りない姿になって揺らいでいた。だが、その像様は目に焼き付くほど美麗だった。一瞬、僕は気を取られられた。それでも、やるべき行動が湧き上がってくる。あの時、クレアを救い出した時のように、リアンをこの混沌とした世界から引きずり出さなければならない——焦燥感に駆られた僕は、必死に手を伸ばし、彼に触れようとした。しかし、リアンは微かに首を横に振り、僕の行動を拒絶するかのように背を向け、ゆっくりと、しかし確実に遠ざかっていく。


 ——ま、待ってくれ!


 それでも僕は彼を追いかけようとした。

 走る。走る。腕を振り、脚を必死に動かし地面を掴む。 不思議とあるはずのない風が体を包み不思議な万能感を感じる。

 だがその度に、遠ざかるとともに彼の体はまるで水彩画のように、白い世界に滲み、ゆっくりと溶けていく。自身の必死の行動と目の前の現実が相いれない。その現実に全てが破られていく。しばらくの時間が経ち、リアンは白い空間に完全に溶け込み、その一部となってしまった。


 届かない。

 掴めない。

 救えない。

 全身の血液が抜かれるような無力感が、冷たい刃のように全身を貫いた。そのあまりにも残酷な現実を、僕は受け止めることができず、ただ茫然と、その白い空間に一人立ち尽くすことしかできなかった。伸ばした手の先に、確かにあった“ぬくもり”の幻を感じながら——。


 二日後、彼は静かに息を引き取った。


「面白い!」「続きを読みたい!」と感じていただけたら、ぜひブックマーク、そして下の★5評価をお願いします。 皆さんの応援が、今後の執筆の大きな励みになります。

日にちが開いた場合も大体0時か20時頃に更新します。


また

https://kakuyomu.jp/works/16818622174814516832 カクヨミもよろしくお願いします。

@jyun_verse 積極的に発言はしませんがXも拡散よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ