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第15話 ロミとエリオット②

 列車から降り立った僕らは、まず入国手続きを済ませ、ホログラフィック案内板を目印に宇宙エレベーター乗り場へと歩を進める。ハイネセン中央駅は、想像をはるかに超える巨大さで、その構造は複雑に入り組んでいた。幾多もの路線が交錯し、人々は足早にそれぞれの目的地へと向かっている。頭上には巨大な六角錐のガラスドームが広がり、日光が明るく降り注ぎ、駅構内を照らしていた。眩しさに目を細めながらも、僕はアメリア軍関係者の姿がないか周囲に目を配り、警戒した。先日エリオットに頼んで、僕の行方を依然として不明扱いにしてもらっている手前、用心に越したことはない。


「さあ、みんな、こっちだよ!」


 エヴァンさんが、ホログラフィック案内板を指し示し、僕らを導く。子供たちは、見慣れない景色に目を輝かせ、きょろきょろとあたりを見回していた。特にロミは、宇宙エレベーターに強い興味を抱いているようで、「あれに乗るの?」と何度も僕に問いかけてくる。


「ああ、あれに乗って、ハイネセン中央宇宙港まで行くんだ」


 僕が答えると、僕が答えると、ロミはカニの如く手足を動かし、目を一層輝かせた。


「早く乗りたい! さっさと行こうよ!」


「ロミは焦らない! まだ並ばなきゃいけないから、そんなにすぐには乗れないわよ? ね、そうよねスレイちゃん?」


「うん、まあね。ちょっと静かにしてね」


「もう! スレイも今日はどうしちゃったの?」


 クレアはスレイに意見を求めるが、彼女は周りの情景に囚われ上手く返答できない。それはそうとやはり、三人の子供たちの中で、宇宙関係の仕事に憧れを抱いているロミが一番興味津々のようだ。子供たちの期待に応えたい僕は、エヴァンさんの後を急ぎ足で追った。

 やがて、僕たちは宇宙エレベーター乗り場に到着した。目の前には、何本もの巨大なエレベーターが天高くそびえ立ち、宇宙港を目指す人々で活気に満ち溢れていた。


「「うわー、すごい!」」


 子供たちは、目の前にそびえ立つ巨大なエレベーターを見上げ、歓声を上げた。

「あれが、宇宙エレベーターだよ」


 僕がそう言うと、子供たちは目を丸くして驚嘆の表情を浮かべた。

 僕たちは、しばらく乗車を待った後、順番が来て宇宙エレベーターに乗り込み、いよいよ宇宙港へと出発する。エレベーター内は、家が一軒丸ごと入りそうなほど広大で、まるで駅舎そのものが垂直に移動しているようだった。内装も細部にまで手が込んでおり、快適な空間が広がっていた。窓の外を見るため移動し、目をやると、首都ハイネセンの多様な街並みが、まるで美しいモザイク画のように展開していく。


「「綺麗……」」


 クレアやスレイも窓に顔を近づけ、うっとりと街並みを眺めている。遠ざかっていく首都ハイネセンのきらめく光が、次第に小さくなっていく。他の子供たちも窓の外に釘付けになり、心を奪われたように景色を眺めていた。

 やがて巻雲や巻積雲を抜け、母星エリシアの全貌が、まるで青い宝石のように輝く姿が見えてきた。同時に、各地から伸びる宇宙エレベーターが燐光をきらめかせ、宇宙へ向かって伸びていた。それらは一つの軌道上に向かう。その構造物に視線を添わせるように顔を上げると、惑星を大きく囲むオービタルリングの金属面見えた。帯状のそれは緑の生息圏と恒星の光を反射して眩く暖かい光を放っている。

 しばらく宇宙エレベーターは、静かに、そしてゆっくりと上昇を続け、やがて僕らは宇宙港へと到着した。エレベーターを降りると、目の前にラグランジュポイント二に位置するコロニー、カリスト・トーラス行きのシャトル乗り場が見える。ホログラフィック案内板に従い四番乗り場へ向かい、シャトルに乗り込むと、出発の時が間近に迫っていた。




 ~翌日~ 降恒1時55分 


 僕たちはシャトルの中で一日を過ごした。ショートワープ機能のおかげで、約一日で第一衛星ルリス近辺に到着する。ラグランジュ点二に位置するコロニー、カリスト・トーラスへは降恒二時に到着予定だ。ネットの情報によれば、このコロニーは直径一八㎞、全長四二㎞の円筒形、宇宙観光が主要産業であり、毎年多くの観光客が訪れる人気の観光スポットだ。内部は宇宙観光コロニーだけあって、内部は植生よりも宇宙空間を直接感じられる構造になっており、居住区にいながらにして、十分な宇宙体験ができそうだった。

 ただ、近年のアメリアのインフレの影響か、かつて賑わっていた一般市民の姿は減り、今では比較的裕福な家族連れやカップルが目立つようになったのが見受けられる。特に、アメリア連邦国の歪な世帯年収ピラミッド——中間層が著しく細く、富裕層と低所得層に二極化した社会構造——を反映してか、若い家族よりも、老後の蓄えを持て余した高齢カップルの姿が目立った。僕たちは周囲の高齢者特有の、どこか懐かしいような匂いを微かに感じながら、入港手続きを済ませ、コロニー内部へと足を踏み入れた。

 子供たちを連れ、僕らは胸を高鳴らせながら宇宙体験の受付へ向かうと、巨大な宇宙飛行士のモニュメンが見えてきた。その目の前に整然とした姿のエリオットが、受付の前でアメリア軍の制服に身を包み立っていた。I.F.D.O.ナンバーツーという立場からして、階級は定かではないが、アメリア軍の中でも相当高い位であることは間違いなさそうだった。その姿を見て、僕の胸の奥にわずかに痛みが走った気がした。しかし今日は、エリオットが特別に手配してくれた無料チケットのおかげで、通常では考えられない体験ができる。気持ちを落ち着かせ、ここはエリオットの力を最大限に借りようと、僕が先導して彼に近づき、お願いした。


「エリオット、今日は子供たちに貴重な体験をさせてくれてありがとう。みんな、ここに来るのは初めてなんだ。よかったら案内してくれるとうれしい。みんなで安全に楽しめるように、お願いするよ」


 エリオットは眼鏡の奥の目を細め、にこやかに僕たちを見やった。


「シン、そしてお子さんたち、ようこそいらっしゃいました。私はI.F.D.O.(アメリア恒星間航行研究開発機構)総長補佐のエリオットと申します。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、そちらにいらっしゃるロミの実の兄です」


 エリオットがそう言い、僕はふと子供たちに視線を移すとロミはさっと僕の後ろへ身を隠すように引っ込んだ。エリオットはその様子に気づき、僕の近くを少し気遣うような視線で見ていた。彼の挨拶が終わると、僕たちは案内されて宇宙服の準備室へと向かった。受付で人数分の番号札を受け取り、それぞれの番号が示すロッカーに番号札をかざすと、静かに開いた。中には、丁寧に畳まれた宇宙服が用意されている。事前に受付で身体検査を済ませていたため、用意された宇宙服は皆の体型にぴったりと合ったものだった。まず、下からズボンを履くように宇宙服を下から履き、体全体が覆われたところで、手首のパネルに触れると、宇宙服はまるで第二の皮膚のように体に吸い付くようにフィットした。さらにパネルを押すと、ナノマシンが頭上を包み込み、透明なヘルメットが瞬時に形成された。僕が普段身に着けているパイロットアーマーに比べると、白く、やや大きく、そして柔らかそうなナノマシン素材で作られており、最初は少し動きにくそうにも感じたが、鍛えられていない子供たちにとっては十分な性能だった。全員の装着が終わったのを確認し、僕らはエアロックへと向かう。士官学校時代に宇宙活動の手順は徹底的に叩き込まれた身だ。僕は皆を先導し、いよいよ宇宙体験場へ続くエアロックへと歩き出そうとした。しかし、エヴァンさんは何か急な用事ができたようで、僕に手を振って言った。


「少し用事ができたから、先にみんなと行っててくれ」


 僕は内心で小さな疑問を感じつつも、リアン、ロミ、クレア、スレイを連れて、宇宙空間に直接露出する宇宙体験場へと続くエアロックへと足を踏み出した。

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日にちが開いた場合も大体0時か20時頃に更新します。


また

https://kakuyomu.jp/works/16818622174814516832 カクヨミもよろしくお願いします。

@jyun_verse 積極的に発言はしませんがXも拡散よろしくお願いします。

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