第24話 託されたもの③
すべてのイベントを終え、目の前のガラス越しに見えるのは、シャトルの翼端灯が暗闇の中で点滅する幻想的な光景が広がる。先ほどの賑やかさとは打って変わり宇宙港は、いつもの日常を取り戻していた。一方の私は、会見に時間を取られ今後のことを考えていた。過去の記憶を手繰り寄せながらこれからどんなことが起きたかなどを思い出していたがはっきりとは浮かばない。レーアさんのメモにも詳しいことは書いていなかった。そんな暗雲が立ち込めているとふと、先ほど私との関係を偽った赤髪のレーアが近づいてきた。
「さっきは助かったよ、お二人さんありがとう」
「どういたしまして」私はきまりの悪さを感じながらもお辞儀をする。
「私の名前はレーアっていうんだけれど、あなたの弟さんがいなければ、今頃、留置所に連行されていたでしょう。野暮な質問だけれどあなたの名前は?それと、弟さんの名前も教えてくれる?」
私は少し考え、言葉を選びながら答えた。
「初めまして、レーアさん私はエアリアって言います。この子の名前は……まだ分からないんです。姉弟ではなく……預かったという表現が正確で……、少し複雑な事情があるんです……」
レーアは少し首を傾ける。
「預かった、ね……。それは少し複雑な関係性だなあ……。でも、助けてくれたことに感謝するよ。エアリア、とっても響きの良い名前だね。でも最初の方はあたしとエアリアさんとの今の関係性を踏まえて君って呼んでいくよ、それでいい?」
——少し、厚かましい人だな……。
「はい、その呼び方でお願いします」少々の厄介さを感じながらも、私は了承する。
「それで、急な質問だけれども……これからどうする?もう夜も遅いし、君たちに行く当てはあるの?」
レーアは、私の目をじっと見つめながら尋ねた。そのブラウンの瞳には、好奇心と心配の色が入り混じっていた。
「特に予定はありません。ただ、今、この子と二人で……」
「そう……。もしよければ……うちに来ない?今夜はゆっくり休んで、明日から自分のことを考えたらどうかな?そこにいる彼も今日、大活躍だったし……ゆっくり休ませてあげたいでしょう?」
——!
レーアの提案に、私は戸惑いを覚えた。見知らぬ人についていくべきではない。今はこんな世の中だ、悪意を持った者に利用される可能性も否定できない。しかし、彼女の言葉には嘘や悪意が感じられなかった。それに、今夜の宿がないのも事実だ。それに……私の体の中にある何かが過去の記憶と共に訴えかけている。この人について行け——と。
「あの……ご迷惑でなければ……よろしくお願いします」
「迷惑だなんて、とんでもないよ。むしろ、君たちを助けたいと思っているよ。それに、君たち二人の話をもっと聞きたいしね」
レーアは微笑んだ。その笑顔は、どこか寂しげで、それでいて温かかった。私は、彼女の申し出を受けることにした。
「あ、ありがとうございます、レーアさん。それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
「そう、それは良かったよ。あ、それと今度から名前はレーアで呼び捨てでいいからね、さんづけは少しあたしにとっては堅苦しいからさ。さあ、行こう!」
「は、はあ~~~ わかりました」
そう言ってレーアは急に残った片方の私の手を握り、歩き出した。闊達な様子の彼女に関わらず、手は不思議と温かかった。セリアさんの手のぬくもりとは違う。けれど、どこか懐かしいような、安心できる感触だった。私たちは夜の宇宙港を後にし、彼女の家へと向かった。
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