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008 VSジャイアント・スパイダー

 俺たちは扉を押し開ける。

 ボスの間へと足を踏み入れた。


 そこは、広大な円形の空間だった。

 巨大な蜘蛛の巣が、複雑に張り巡らされている。


 部屋の中央、その蜘蛛の巣の最深部に、ひときわ巨大な影がうごめいていた。


「……グルルルル」


 低い唸り声が、部屋全体に響き渡る。

 影がゆっくりと動き出す。

 その姿を現した。


 ジャイアント・スパイダーだ。


「……怖い」


 セシリーが震える声で言った。


「大丈夫だ。俺たちがついている」


 俺はセシリーの体を支えていた。

 その手に、ぎゅっと力を込める。

 少しだけセシリーの表情が和らいだ。


「みんな、さっきの作戦どおりに!」


「はい!」


「キュイ!」


 アリアとミズタマは力強く答えた。


「……はい。わたくしも、全力を尽くします」


 セシリーも、震える声ながら、しっかりと頷いた。


「……行くぞ!」


 俺は声を張り上げ、戦闘を開始した。


「グシャアアア!」


 ジャイアントスパイダーが雄叫びを上げ、素早く動き出す。

 最初は通常攻撃だ。


「ミズタマ、前へ!」


 俺の指示でミズタマが素早く前に出る。

 ジャイアントスパイダーの前脚が、ミズタマに振り下ろされた。

 鋭利な刃にも似た前脚。


「キュイ!」


 ミズタマは小さな体を震わせながら、その攻撃を受け止める。

 高い防御力でダメージはほとんどない。

 ……もしも俺が食らったら即死だ。


「次はアリア頼む!」


「はい!」


 アリアが先頭に立つ。


 ジャイアントスパイダーが口元から紫色の霧を吐き出した。

 アシッドスプレーだ。

 強い酸性の霧だが、アリアの特殊防御力であれば、ほぼ無傷だ。


 通常攻撃、アシッドスプレー、通常攻撃、アシッドスプレー……。

 ジャイアントスパイダーは、規則的なパターンで攻撃を繰り返す。


 3回のループが終わったところだった。


「……来るぞ!」


 俺は叫んだ。

 ジャイアントスパイダーが、体を大きく震わせ始めた。

 強力な技の予備動作だ。


「セシリーさん! アリアに『チェイン・アロウ』だ!」


「は、はい!」


 セシリーは震える手で弓を構えた。

 狙いを定め、矢の形となった魔力を放つ。


「縛鎖の魔矢チェイン・アロウ!」


 矢は真っ直ぐにアリアへと飛んでいく。

 そして、アリアの体に命中した。


 ジャイアント・スパイダーは一瞬動作を止めた。


 俺達が何をやっているのか、さっぱり理解できなかったのだろう。


 そう、チェイン・アロウはいわゆるデバフ技。

 相手に使って、攻撃を必ず当てる……という使い方が一般的だ。


 だが……。


「アリア、ファントム・バリアだ!」


「わかりました!」


 アリアはファントム・バリアを使用した。

 アリアの体が2つに分裂する。


 そして、チェイン・アロウの効果は幻影のほうに引き継がれている……。


「グオオオオオオ!」


 ジャイアントスパイダーが雄叫びを上げる。

 全身から毒々しい紫色の霧を噴き出し始めた。


 ポイズンミストだ。

 これは、本来は超強力な全体特殊攻撃……!

 しかも定数ダメージなので、まともに食らうとアリアでさえ瀕死になる。


 しかし、チェイン・アロウの効果でアリアの幻影へと向かっていく。

 さらに、アリアのファントム・バリアによって幻影が攻撃の身代わりになってくれる。

 幻影を出すコストとして、アリアの体力は1/4削れてしまったけれど……。



「……グ、グオオオ」


 ジャイアントスパイダーは力を使い果たし、動きが鈍くなった。

 全身から疲労の色が滲み出ている。


 いまがチャンスだ。


「今だ! セシリー、ジャイアントスパイダーに『チェイン・アロウ』!」


「は、はい!」


 セシリーは再び矢の形となった魔力を放つ。


「縛鎖の魔矢チェイン・アロウ!」


 魔法の矢は放物線を描き、ジャイアントスパイダーの胴体に命中した。

 命中した箇所から不可視の魔力鎖が伸び、ジャイアントスパイダーを拘束する。


「ミズタマ、『ローリング』だ!」


「キュイ!」


 ミズタマは小さく鳴くと、体を丸め、高速で回転し始めた。

 そして、ジャイアントスパイダーに向かって突進していく。


「グ……!?」


 ジャイアントスパイダーは、魔力鎖で動きを封じられ、回避することができない。


 ミズタマの『ローリング』がジャイアントスパイダーの体に直撃した。


「グシャシャ!」


 ローリングの最初の一撃は余裕だったらしい。

 ジャイアント・スパイダーには効いていない。


「もう一度だ、ミズタマ!」


 ミズタマは再び体を丸め、回転し始めた。

 先ほどよりも、さらに速く、そして力強く。

 ローリングは命中率が低いが、あたりつづければ威力が二倍、三倍と増していく。


「グ、グオオオオオ!」


 ジャイアントスパイダーは必死にもがくが、魔力鎖から逃れることはできない。

 二度目の『ローリング』が、ジャイアントスパイダーに炸裂した。


「グ……」


 ジャイアントスパイダーの動きが鈍くなる。

 その巨体から、力が失われていくのがわかる。


「最後だ、ミズタマ! 全てを出し切れ!」


「キュイ!」


 ミズタマは決意を込めた鳴き声を上げた。

 そして、全身の力を振り絞り、最後の『ローリング』を繰り出した。


 その速度は、もはや目にも止まらない。

 まるで、水色の流星のようだ。

 ジャイアントスパイダーへと突っ込んでいく。


 三度目の『ローリング』が、ジャイアントスパイダーの体に直撃した。


「グ……オ……」


 ジャイアントスパイダーは力なく地面に倒れ込んだ。

 その巨体が光の粒子となって消えていく。


 静寂がボスの間を包み込む。


 俺たちは勝利したのだ。


「やっ……た……!」


 アリアが力なく地面に座り込んだ。

 その顔には疲労の色が濃く浮かんでいる。


「キュイ……」


 ミズタマも、疲れたように小さく鳴いた。

 その体は泥だらけになっている。


 ……勝てた。

 勝てたんだ!


 俺はアリアとミズタマのほうへ近づいていった。


「ロキさん!」


 アリアが急に立ち上がり、俺に抱きついてきた。

 その瞳には、涙が浮かんでいる。


「怖かった……でも、勝てた……!」


「アリア、当たってる……」


 ぷよぷよが……。


 アリアは俺の胸に顔を埋め、静かに泣いていた。

 その細い肩が、小刻みに震えている。


 俺の足元にミズタマがすり寄ってきた。

 スライムの体から人間の女性の体になり、くっついてくる。

 どうやらアリアの真似をしているらしい。

 こっちもぷよぷよだ……。


「さすがです」セシリーは言った。「ロキ様がいなければ、私は生き残れなかった。本当に感謝しています」


「俺ひとりじゃ何もできなかった。本当にみんなのおかげだ」


 なにせ、俺はレベル1で、ステータスがオール1なんだ。

 皆の協力があってこそ、俺は生きていける。


 しばらくアリアは俺の腕のなかで泣いていた。

 アリアはゆっくりと俺から体を離す。


「ロキさん。本当にありがとうございました」


 俺はうなずいた。

 本当に、俺は作戦を考えただけ。

 皆が頑張ってくれたから勝てたのだ。


 さて、帰ろうか……と考えたところで思いだした。

 ダンジョンのクリア報酬を忘れていた。


 ジャイアントスパイダーがもともといた場所へ移動する。

 そこに、光るアイテムが落ちていた。

日間ランキング入り目指してます!


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