006 VSロックリザード、そしてミズタマの進化
「……グオオオオオ!」
ロックリザードが雄叫びを上げ、突進してきた。
いよいよ中ボス戦の始まりだ。
一手でも間違えたら即死である。
ふぅ、と息を吐いて気合を入れた。
「アリア、下がっていてくれ! ミズタマ、前に!」
俺の指示で、ミズタマが素早く前に出る。
アリアは俺の指示通り、後方で待機する。
ロックリザードの最初の攻撃は、「ロックニードル」。
全身の鱗を硬質化させ、無数の針のように飛ばしてくる技だ。
これは防御力・特殊防御力を無視する、固定ダメージ攻撃。
ミズタマがいくら防御力を高めていようとも関係がない。
10ダメージを受ける。
ロックリザードが大きく息を吸い込み、全身の鱗を逆立てた。
次の瞬間、無数の鱗の針が、ミズタマに向かって飛んでくる。
「キュイ!」
ミズタマは体を丸め、衝撃に耐える。
しかし、鱗の針はミズタマの体を容赦なく貫通し、ダメージを与えていく。
ミズタマのHPが、12から2に減った。
「キュイィ……」
このままミズタマが倒れたらゲームオーバーだが……。
「ミズタマ、毒液だ!」
ミズタマは、すぐに反撃を開始する。
紫色の液体が、ロックリザードの体に命中し、毒状態にする。
「グルル……!」
ここで、【命の雫】の効果が発動する。
ミズタマのHPが、10回復した。
あとは同じことの繰り返しだ。
ミズタマは【命の雫】で毎ターンHPを10回復しつつ、「ロックニードル」を受け続ける。
俺とアリアは、ただひたすら待つだけだ。
毎ターンHPが回復するとはいえ、ミズタマにとっては痛いはずだ。
しかし、ミズタマは耐え続ける。
【命の雫】の回復力で、ギリギリのところで持ちこたえているのだ。
……ごめんな、ミズタマ。
もう少しだけ、我慢してくれ。
俺の視線に、ミズタマは「キュキュイ」と覚悟を決めたように鳴いた。
さて、そのままぎりぎり耐えていたときだった。
ロックリザードの残りHPが1/3を切った。
その瞬間、ロックリザードの動きが変化した。
「……グオオオオオオオオ!」
ロックリザードが、激しい雄叫びを上げ、全身を赤く染め上げた。
そして、地面を激しく叩きつけ始めた。
「来たな」
「……グガガガガ!」
ロックリザードは、地面を叩きつけながら力を溜め始めた。
全身が、さらに赤く染まっていく。
これは……一ターン目の溜め行動だ。
次のターン、ロックリザードは超強力な「ロックフォール」を繰り出してくる。
一撃でも喰らえば、ミズタマもアリアも耐えきれない。
当然ながら俺も即死。
だが、攻略法はある。
「ミズタマ、とろける!」
俺の指示にミズタマが反応した。
ミズタマは、体を溶かすようにして地面に広がった。
どろどろの液体状になり、ほとんど地面と同化している。
溜めからの超強力な『ロックフォール』の一撃。
しかし、地面に広がったミズタマには、全く当たらない。
岩は、ただ地面に激突し、砕け散るだけだ。
「……グ、グオオオ……」
ロックリザードは戸惑っているようだ。
自分の攻撃が全く効いていないことに混乱しているのだろう。
あとは、この繰り返しだ。
ロックリザードが「ロックフォール」を放つターンに、「とろける」で回避。
パターンさえわかってしまえば、簡単な話だった。
ロックリザードは、焦りと苛立ちを隠せないようだ。
無駄な攻撃を繰り返し、体力を消耗していく。
そして、ついに、その時が来た。
「……グ……オ……」
ロックリザードが力なく地面に倒れ込んだ。
毒のダメージで、ついに力尽きたのだ。
その巨体が、光の粒子となって消えていく。
「やった……!」
アリアが、歓声を上げた。
俺も、深く息を吐いていた。
大丈夫だろうとは思っていたが、気を抜けない戦いだった。
「キュイ!」
ミズタマが元の姿に戻り、嬉しそうに鳴いた。
その体には、傷一つない。
【命の雫】と「とろける」のおかげで、完全に無傷で勝利したのだ。
「あれ? なんかありますよ」
そう言って、アリアが地面を指で示す。
そこにあったのは、淡い水色に輝く美しい宝石だった。
「【スライムの涙】だ」
これは条件限定でドロップする非常に貴重なアイテムだった。
スライムが、ロックリザード戦で無傷勝利をした……という条件だ。
ロックニードルでダメージを受けてはいるが、【命の雫】で回復しているため、無傷扱いとなっていた。
「ロキさん、すごいです! こんな珍しいアイテム、初めて見ました!」
アリアが目を輝かせながら言った。
「ああ。これを使えば、ミズタマは……」
俺はミズタマに【スライムの涙】を使った。
すると、ミズタマの体が光に包まれた。
光は徐々に強さを増し、やがてミズタマの体を完全に覆い隠した。
そして、光が収まった時、そこに立っていたのは……。
水色の髪を持つ、可憐な少女だった。
その姿は、まるで水の精霊のようだ。
「キュイ……?」
少女――ミズタマは、不思議そうに自分の体を見回した。
そして、俺とアリアの顔を交互に見つめた。
「ミズタマ……?」
アリアが、恐る恐る声をかけた。
すると、少女は、にっこりと微笑んだ。
「キュイ!」
その声は、確かにミズタマのものだった。
「ミズタマが……進化したんだ」
ミズタマは、スライムからスライム・レディに進化したのだ。
スライム・レディは、普段はスライムの姿をしているが、人間の姿にもなることができる。
そして、スライムの時よりも、はるかに高い能力を持つ。
俺はミズタマのステータスを確認した。
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名前:ミズタマ
種族:スライム・レディ
レベル:3
HP:30/30
MP:15/15
攻撃:3
防御:80
特攻:3
特防:10
速度:10
スキル:体当たり、毒液、とろける、ローリング、自己再生
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レベルが上がり、全体的にステータスが上昇している。
特に、防御力はさらに高くなった。
そして、新たなスキル「ローリング」と「自己再生」を習得している。
ローリングは連続で攻撃を当てると威力があがっていく技だが、命中率が低すぎて使えない技だった。
「ロキさん、本当にすごいです! スライムの進化なんて、私、初めて見ました!」
アリアは興奮した様子で、俺の手を握ってきた。
「ミズタマが頑張ってくれたおかげだ」
俺は女性の形態となっているミズタマの頭を撫でた。
嬉しそうに身をよじる。
「私、ロキさんのこと、本当に尊敬します!」
アリアは真っ直ぐに俺を見つめてきた。
「……ありがとうな」
さて、さっさとダンジョンを踏破して、ボスを倒さないとな。
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