001 最弱ジョブ『テイマー』への転生、隠しキャラアリアとの出会い
「ジョブを選択してください」
女性の声が俺の頭の中に響いた。
ゆっくりと目を開ける。
見知らぬ場所。
ここは……どこだ?
年季の入った木のカウンター。
その後ろには、依頼書がびっしりと貼られた掲示板。
そして、カウンターの中に立つ、見覚えのある女性。
「ロキ様。どうかされましたか?」
受付の女性は不思議そうな目でこちらを見ていた。
ロキ。
その名前で、全部を思い出した。
ここは超高難易度RPG『ラグナロクの迷宮』の冒険の始まりの場所。
冒険者ギルドだ。
ロキというのは、そのゲームの主人公の名前だった。
俺は、前世でこのゲームを極めていた。
数えきれないほどの時間を費やし、隠し要素を全て見つけ出し、最強のキャラクターを育て上げた。
だから、この光景は嫌というほど覚えている。
……転生した、ということか。
そうとしか考えられない。
「ジョブを選択してください」
また声が聞こえた。
女性が示した羊皮紙には、職業を選択する箇所があった。
そこにあったのは、【テイマー】だけだった。
……マジかよ。
『ラグナロクの迷宮』には、難易度がいくつかある。
EASY、NORMAL、HARD、HARDEST、そして……INFERNO。
INFERNOは、発売当初、あまりの難しさに数年間誰もクリアできなかった。
狂気の難易度だ。
INFERNOを選択すると、ジョブは必ずテイマーとなる。
テイマーは、魔物を従えることができる。
しかし、主人公自身のステータスは全く成長しない。
少しでもミスをすると、最序盤のスライムにすら殺される。
最弱にして、最難関のジョブ。
つまり、俺は……難易度INFERNOの世界を生き抜かないといけないってことか?
嘘だろ……。
「他に職業はないのか?」
一縷の望みを託して、確認してみる。
「ありません」
受付嬢は、表情一つ変えずに即答した。
……だよな。知ってた。
やれやれ。仕方がない。
テイマーを選ばないと先に進まないらしい。
「……テイマーで」
俺は仕方なく、そう言って羊皮紙にチェックを入れた。
受付の女性は、にっこりと微笑む。
「かしこまりました。ロキ様。冒険者カードを発行しますね」
女性は慣れた手つきでカードを作成していく。
受付嬢の作業を待っている間、考えを巡らせる。
このゲームは、この世にあるたくさんのダンジョンを攻略していくのが基本の流れだ。
ストーリーモードの最終目標は、ラスボスが待ち構える「ラグナロクの迷宮」をクリアすること。
そして、この世界には時間制限がある。
一定の時間が経過すると、強力な魔王が眠りから覚め、世界が破滅へと向かう……。
俺は難易度INFERNOを世界ではじめて攻略したプレイヤーだった。
あまりにもやりこみ過ぎて、攻略サイトを運営していたほど。
その攻略知識で、なんとかなるだろうか……。
「ロキ様、お待たせいたしました」
受付嬢から冒険者カードを受け取る。
さてと。
普通に進めれば、最初はチュートリアルを兼ねた初級ダンジョンへ向かうことになる。
だが、今の俺に必要なのは、それじゃない。
俺は、あえてギルド内をうろつき始めた。
そう、あの隠しキャラを出すために。
大体五分ほど経過したときだった。
「あの、すみません!」
背後から女性の声が聞こえた。
振り返ると、そこに立っていたのは……。
澄んだ青い髪、宝石のような青い瞳。
可憐な顔立ちの、若い女性だった。
「もしかして、今登録したばかりの新人さんですか?」
女性は少し緊張した様子で尋ねてきた。
「ああ。そうだ」
「えっと、私も新人なんです。よかったら、一緒に初級ダンジョンに行きませんか?」
「……名前を聞いても良いか?」
もちろん、俺は彼女の名前を知っていた。
しかし、あえて尋ねた。
「私はアリア。新米錬金術師です」
アリアは、最初にギルドで五分間待機していないと出てこないレアなキャラクターだ。
とはいえ、珍しいだけで、仲間としてのステータスは平凡というか並以下。
それでも、俺はINFERNOを攻略するときはアリアを仲間にすることにしていた。
俺の編み出したアリアチャートだ。
……あと、アリアって、一番ヒロインとして可愛いしな。
あ、そうなると、俺って、この世界でアリアと結婚できるのか……。
なにはともあれ、ちゃんとアリアが出現してくれて良かった。
俺の攻略知識はこの世界で通用しそうだ。
「俺の名前はロキ。新米テイマーだ」
「テイマーだなんて、珍しい職業ですね」
そうだろう。この世界には俺しかいない。
「ロキさん。それでは、よろしくおねがいします」
そう言って、アリアは右手を差し出した。
俺はその手を握る。
小さくて冷たい手。
俺は、この世界をアリアと共に生き残る。
ふと、脳裏に世界の滅ぶ瞬間がよぎる。
バッドエンド。
街は焼かれ、ギルドは壊滅し、ヒロインたちは全員殺される。
俺が死ねば、この世界は魔王に滅ぼされてしまう。
そうはさせない。
俺の持つ攻略知識で生き残って、世界を救う。
そう決意した。
俺とアリアはギルドの受付に申請し、初級ダンジョンへと向かうのだった。
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