第八話
「改めまして、アメリア様。お久しぶりです」
「フィオナこそ元気にしてた?」
「はい。お陰様で。」
「皇太子は変なことしてない?」
「はい。特に何も。」
試験に受かったあと、アメリア様と話す機会があった。
前世のことは黙っているつもりだったけど、やっぱり危険だと思ったから、信頼できる彼女だけに話した。
「それにしても、皇太子が悪霊だっただなんて、信じられないわ。魔力制御が上手くできなくて、私に泣きついているのにね」
「確かに強かったですが、一瞬で膨大な魔力を失ったので、それが原因だと思います。」
「魔力欠乏症のような感じ?」
「はい。」
魔力持ちの鉄則。
一つ目は合理的な理由なく攻撃魔法を使ってはいけない。
二つ目は、魔力を、所持魔力量の30パーセント以下にしてはいけない。
一つ目を破ると魔力がなくなり、二つ目を破ると、最悪の場合死に至る。
ロマーノの魔力を取ろうとする場合、特殊な魔力属性だから、勢いをつけて一瞬で取ることしかできない。
限界まで調整したから皇太子になった今でも魔力を持っているけど、何も考えず取ったら・・・。
「隠したい気持ちはわかるわ。記憶を失った自分にどうやってアプローチして惚れさせるのか・・・。見ものね」
「私は見世物ではないのですが・・・」
「フィオナのことじゃないよ。だってあなたは、大切な友達なんだから。」
「アメリア様とお友達になれるなんて光栄です」
「そんなに?というか、助けてくれたし」
「いいえ。あれぐらいは当然です。皇族でなかったとしても助けてますよ、き̀っ̀と̀。」
「皇族じゃないときは、聖女としての名声をあげるためでしょ?」
「・・・含まれますね。」
「腹黒いわね〜」
「いいえ、大したことありませんよ。社交界にはもっと沢山いらっしゃると思いますよ」
「そういえば、明後日はちょうど夜会ね」
「はい。皇太子殿下はいらっしゃいますか?」
「うん。フィオナ以外の女をエスコートしたくないからって私を誘ったの。これじゃあ、私が女じゃないみたい。」
「そんなことないですよ。アメリア様がお姉様なら、毎日がより楽しいと思います」
「もう!大好き!私が男だったらロマーノを差し置いてでも絶対に告白してたわ!女に生まれてきたことがこんなに悔しいなんて初めて!」
「・・・失礼なことを聞きますが、皇座のことは・・・?」
「それはなんとも思わないわ。皇帝なんてめんどくさいじゃない」
やっぱり、アメリア様で正解。
権力に固執する馬鹿な貴族とは格が違う。
「・・・あ、更衣室に着きましたね」
「着替えてくるから少し待ってて」
「はい」
夜会で皇太子・・・遭遇したくないな。
でも、挨拶しないとだめだからね・・・。
それは公務だと割り切るか。
色々考えていたら着替えたアメリア様が出てきた。
「じゃあ、フィオナ!学校案内してあげる!」
「あ、ありがとうございます?」