第六話
「フィオナ様、出発のお時間です」
「ええ。」
私は、アカデミーの特別試験を満点合格した影響で、急遽今日から通うことになった。
「えっと、特秀Sクラスは一階の端の教室であってるよね?」
「はい。」
春まで待てば新年度になるけれど、試験で満点なら、一年生の終盤からでも大丈夫だろう、という学校の判断で、グループが出来上がっていて年上しかいないところに入れられることになった。
「そういえばフィオナお嬢様。皇太子殿下も特別試験に合格されたそうですよ。ただ・・・」
「ただ?」
「合格ラインをギリギリ超えたぐらいなので、来年度から一年生として入学する予定だそうです。」
「ふふっ。やっぱりすごいわね」
「皇太子殿下のことをご存知なのですか?」
「私が彼を知っていることは内緒にしてね。」
「・・・かしこまりました。」
ロマーノが人間になるとき、強大な魔力を一瞬で全て失った。
その反動で、今世の魔力量はとても少ない、制御が難しいなど、色々副作用がある。
それを考えると、実践ばかりの特別試験の合格ラインを超えたのはかなりすごい。
「到着しましたね」
「じゃあ、行ってくるわ」
「はい。行ってらっしゃいませ。」
まず最初に職員室に向かうと、アカデミー長室へ案内される。
「ああ、君がフィオナ嬢か。変な時期からの入学になってしまってすまないが、早く見たくてな。困ったことがあったら、担任に言ってくれ。」
「ありがとうございます。」
「ちなみに、もうすぐ年度末テストがあるんだ。詳しい範囲や内容は他の生徒も交えて説明するから、短い期間になるが頑張ってくれ。」
「・・・はい。」
年度末テストって何するの?!
教科書暗記系テストなら、同級生に教えてもらわないと無理だよ?
疑問と不安を抱えつつ、担任に先導されながら教室へ向かう。
担任は教室に入り、生徒に編入生が来たことを伝える。
「・・・ということだ。じゃあ、入ってきてくれ」
「皆様、ごきげんよう。私はフィオナ・ベラティアです。将来この国を支えていく仲間だと思いますので、ぜひ仲良くしてください。よろしくお願いします。」
「じゃあ、フィオナ嬢の席はあそこだ。」
「ありがとうございます」
案内された席に向かうと、隣の男子生徒が顔を真っ青にしていた。
「大丈夫ですか?お顔が・・・」
「だっ、大丈夫です!気にしないでください!」
・・・まあ、年上だし触れないでおこう。
と、初日の午前中は特に何も無く終わった。
特に何も無いというのは、誰からも話しかけられなかった、ってこと。
まあ、同学年だけど年下だし、(多分)頭いいし、公爵令嬢だからなのかな。
まあ、理由はなんであれ、テストで首席を取るためには友達を作らないと。
と、いうことで、私の頭の中に最近インプットされた『貴族名簿 - オルガナ帝国版 - 』から、特秀Sクラスで、勉強もマナーもよい令嬢を探した。
それに完全に当てはまるのは、女子同級生総勢15人中の1人だけだった。
その彼女の名前は、アメリア・オルガナ。