第四話
それから数日後。
大神官カイルは、公爵家を侮辱したこと、神殿の予算を貴族に流していたことを公にされ、職務剥奪という罰が下った。
ちなみに新しい大神官は、史上初の女性らしい。
で、その新しい大神官が、前大神官の無礼を謝りたい、とアポ無しで公爵邸へやってきた。
アポ無しの時点で無礼なんだよな・・・と思いながら、着替えて応接室へ向かう。
「急に来てしまってごめんなさい。私は、大神官リリアンと申します。よろしくお願いします。」
「私はフィオナ・ベラティアです。お話は伺っているわ」
「は、はいっ!」
「座ってください」
「あ、ありがとうございます」
緊張してぎこちないリリアンを見ていると、小動物みたいに可愛いくて癒される。
姓がないということは平民で、大貴族に挨拶にきて緊張しているのだろう。
「早速ですが聖女様。この度は愚人が無礼を失礼致しました。謝って許されるものではありませんが、私の顔に免じてお許しください」
「気にしていないから大丈夫よ。今の大神官が可愛いから許してあげるわ」
「えっ、わ、私が可愛い・・・ですか?」
「ええ。金色の美しい髪に、紫の美しい瞳と純粋な心・・・。気に入ったわ」
「あ、ありがとうございます!でも、聖女様の方がお美しいです!白磁器のように滑らかな肌、誰もを魅了する白髪、神々しさ溢れる黄金の瞳・・・!聖女様になるためにお生まれになられたと言っても過言ではありません!」
私が聖女になるのは既成事項だったけど、それは褒めすぎじゃないかしら。
「そんなことないわ。・・・あなたのことは、ベラティア公爵家が後援するわ。だから、身分は気にせず仲良くしてね」
「聖女様・・・!仲良くしていただけるなんて、この世で一番の幸せです!不束者ですがよろしくお願いします!!」
「え、ええ。よろしくね」
新大神官は個性強め・・・
お茶会をする約束をしてリリアンを見送ったあと、公爵に呼ばれた。
「お父様、お話とはなんでしょうか?」
「フィオナのこの先を話し合わないといけないと思って。アカデミーに通うか、フィオナの意見を尊重しようと思って。」
「・・・そうですね。じゃあ、アカデミーはとりあえず行きます」
「ああ、あんなアカデミーがフィオナに合うわけ・・・って行くのか?!」
「ええ。不動の首席も面白いでしょう?」
この国のことを詳しく知らないし、少し腕試しをしてみたいし。
アカデミーなら、ロマーノもいるだろうしね。
いいことづくし♪
「そうだな。我が娘にはピッタリだ。・・・ちなみに、皇太子にはいつ記憶のことを話すんだ?」
「しばらく黙っていようと思っています。どんな風にアプローチしてくるか気になるので。」
「分かった。私も他言しないと誓うよ。」
「ありがとうございます」
本来は、皇族に嘘をついたら罪に問われる。
でも、簡単に『聖女』を切り捨てられないはずだし、抜け道がある。
「アカデミーは15歳からだが、優秀な生徒は入学時期を早められるそうだから、試験を受けてみたらどうかね?」
「そんな制度があるんですね!もちろん受けます!」
「良かった。じゃあ、アカデミーに連絡を入れておくよ」
「はいっ!ありがとうございます!」
よし、ちゃんと前世で習ったマナーを復習して、この国の貴族を全員覚えて、魔法制御の勉強もして、不動の主席でいられるように頑張らないと!