第二十三話
短い・・・・
低音ボイスで囁いたロマーノが私の顎を上げ、顔が近づいてくる。
(こ、これは、唇にキスしようとしてる?!)
焦りつつ、少し怖くて目を閉じると、ちょっと待ってみても唇に触れるものがない。
(ま、まさか、騙された感じ・・・?)
そっと目を開けると、ロマーノの顔がすぐ近くに。
ああ、これは完全に騙されたやつだな・・・と思った瞬間、ロマーノの唇が触れた。
「んっ・・・!」
不意打ちに驚いて、離して欲しくて胸を叩いても、年上で(年齢にしては)屈強なロマーノには到底叶わない。
「んん〜っ」
息が苦しくなってきて、胸をさらに強く叩くと、やっと離してくれる。
「ぷはっ。で、殿下、一体何で・・・」
「俺は”男”だからね。フィオナを狙う奴を牽制するためだよ」
「私を狙う人なんて・・・って何するんですか!」
「ほら、これで近寄ってこないよ。」
「な、何を・・・って!」
首元にちくっと痛みを感じ、魔法で姿見を出すと赤いマークがついていた。
「こういうことされるの、初めて?」
「は、初めてです!敵地でなんてことを!」
「・・・俺も、フィオナ嬢の意見に賛成だ」
「「っ・・・!」」
ロマーノにからかわれていると、第三者の、聞きなれた声がする。
「・・・久しぶり、ロマーノ。」
「・・・悪霊の王にご挨拶申し上げます。オルガナ帝国皇太子、ロマーノ・オルガナです。こちらは、婚約者候補のフィオナ・オリィ・ベラティアです。お招き頂きありがとうございます」
「・・・クローディア」
「はーい、陛下。なんですか?」
「ロマーノを生け捕りにしろ」
「わかりました!」
王がクローディアを呼び出し、ロマーノを攻撃するよう命ずる。
「殿下、剣に攻撃力促進の魔法をかけました。王太子は前世分も合わせて、そこそこ剣の実力があるので気をつけてください」
「わかった。・・・フィオナもね」
「・・・はい」
「話は済んだか」
「はい、王様。・・・では、こちらでも決着をつけましょうか?」
「・・・ああ」