第二十一話
「んっ・・・」
「フィオナ!目が覚めたか!」
「あ、お父様・・・。私、どれぐらい寝ていたのでしょうか?」
「・・・丸5日だ」
(魔力欠乏症は危険ね)
「ごめんなさい。魔力を二割まで減らしてしまいました」
「謝らなくていい。みんなの命を救ってくれてありがとう」
「いいえ。もとは私が悪いんです。」
「そんなことない。・・・皇太子殿下に聞き取りをしたら、『メイドたちに寝室へ入ることを遮られ、どうしようと悩んでいたら記憶を失い、気づいたら血まみれで寝室にいた』と仰った。」
「・・・そうですか。」
「そして、フィオナに謝りたい、とも言っていた。」
「アカデミーでお話します。・・・ところで、5日で回復するとは、何かしてくださったのですよね?」
「・・・ああ。大神官様に治癒魔法をかけてもらった。今は別室で休んでいるが、私と交代制でフィオナの看病をしたんだ。」
「リリアン様が・・・。」
「お茶会の約束がなくなったら悲しい、と率先して看病をしていたよ。」
「今はどこにいらっしゃいますか?」
「応接室にいる」
「・・・行ってきてもいいですか?」
「ああ。・・・無理はしないで」
「はい。」
リリアンが休んでいるという応接室の扉をノックしようとすると、中から声が聞こえてくる。
「・・・です!」
「・・・んだと?・・・は・・・で・・」
部屋の奥の方で話しているのか、声が聞き取りづらい。
(気配的に・・・リリアンと男の子・・・ってことはリリアンとロマーノかな。)
「リリアン様、入ってもよろしいですか?」
「えっ?!フィオナ様?・・・いやいや、きっとこれは夢ですね。まさかフィオナ様がいらっしゃる訳・・・」
「現実ですよ、リリアン様」
「本当に本物のフィオナ様ですか?!」
「ええ。私を看病して、治癒魔法もかけてくださったと伺いました。ありがとうございます」
「フィオナ様のためなら痛くも痒くもありません!」
「それは言い過ぎですよ。・・・でも、リリアン様のおかげでこんなに早く回復しました。本当にありがとうございます。」
「聖女様の為なら何でも!」
「ふふっ。やっぱりリリアン様は可愛い」
「そんなことないです!聖女様は、まるで輝くダイヤモンドのように美しいです!!」
「・・・ありがとう。嬉しいわ」
「いいえ〜」
リリアン様と話していて、もう一人の存在を忘れていた。
「・・・フィオナ」
「失礼致しました、皇太子殿下。」
「・・・ああ」
沈黙が流れ、雰囲気が悪くなるが、私は謝る気はない。
だって、私は被害者側だし。
「メイドと騎士達を傷つけてすまなかった。・・・ただ、フィオナがこの世界からいなくなる感覚がしてつい・・・。」
「はい。確かにその頃、私はこの世界にいませんでした」
「っ・・・!じゃ、じゃあ、もしかして・・・!」
「悪霊の世界で、王と話してきました」
「っ・・・!」
「私こそ、内緒で悪霊の世界へ行ってしまってごめんなさい。」
「・・・いや、僕が悪かった。令嬢の寝室に入るだなんて、やってはいけないこと。この三日で、マナーを学び直してきた。」
「・・・!」
私に許してもらう為だけに、そこまでしてくれるだなんて。
「・・・これで、許してくれるか?」
「はい。」
・・・そして、また存在を忘れている人がいた。
「あの・・・。なにかあったのでしょうか?」
「・・・リリアン様、後で詳しく説明しますので、今は内密にお願いします」
「わかりました!」
詳しい計画を立てようと思ったけど、体調が悪くなってきた・・・。
「もう少しお話したかったのですが、体調が悪くなったので戻りますね。看病とお見舞い、ありがとうございました。」
「・・・部屋まで一人で戻れるか?」
「はい。護衛もいるので大丈夫かと。」
「・・・いや。大神官、フィオナ嬢を部屋まで送ってもらえるか?」
「かしこまりました。・・・ではフィオナ様、行きましょうか」
「・・・ええ。」