第二十話
「医務官、みんなの容態は?」
「フィ、フィオナ様・・・!」
医務官たちは顔を見合わせたあと、首を横に振った。
「最善を尽くしましたが、できることはもう・・・。」
「生きているならまだ大丈夫。部屋へ案内して」
「は、はいっ!」
案内された部屋に入ると、包帯が赤く滲んだ4人がベッドに横になり、浅い呼吸をしていた。
「フィ、フィオナ様・・・。任務を遂行できず・・・申し訳・・・」
「喋らないで。今治癒するから」
「お手を・・・煩わす訳には・・・」
「いいから静かに!効果が減ってあなたたちが死んだら、それこそ力の無駄使いよ!」
「っ・・・!!」
脳内で大規模な魔法体系を素早く組み立て、魔力を流し込む。
「うっ・・・!」
四人もの致命傷を同時に治癒するのは初めてだったため、大量な魔力消費で倒れそうになる。
(・・・だめ。倒れたらだめ・・・)
視界がぼやける眼を擦り、おぼつかない足を叩き、さらに魔力を流す。
「残りの魔力量は・・・半分・・・」
所持魔力の三割以下まで使用すると、魔力持ちの鉄則を違反し、最悪の場合死んでしまう。
(なんとか、持ち堪えないと・・・)
完全に治さなくても、少し休めば回復する程度で止めれば、魔力も足りるはず。
(・・・あと少し・・・)
最後に魔力を勢いよく流し込むと、包帯に染み付いていた赤色が消え、苦しそうなみんなの顔が和らいだ。
(で、できた・・・)
安心して、床に座り込んでしまう。
残った魔力量を計算しないと・・・と立とうとすると、目の前が真っ白になる。
「えっ・・・?」
カナたちの声が聞こえるが、視界はどんどん狭まり、真っ暗になった。