第二話
「フィオナ、心当たりはないのか?」
「心当たり・・・。」
心当たりがあるというか、わたしが聖女の力を使えるのは決定事項なんだけどね。
「言いづらいなら無理しないで。フィオナの助けになればいいなと思っただけだから。」
「今言わせてください」
今言わないと、きっと暫く言い出せないと思う。
意を決して、話し始めた。
「・・・私、人生三回目なんです。」
「前世の記憶があるってこと?」
「はい。一回目のときに聖女になって、色々あって世界をつくりかえました。二回目は、一回目で利用した悪霊がわたしの結界を破って人間の世界に来たので、色々あって彼は人間になって、最終的にこの世界をつくったんです。」
「その、元悪霊というのはもしかして・・・」
「はい。皇太子殿下です」
「だからフィオナのことを知っていたんだな。」
「はい。色々あって、そうなったんです。」
「色々あった、が多い気もするが・・・。まあ、教えてくれてありがとう。」
「いいえ。いつか言わなくてはいけなかったことを言うのが早まっただけですから。」
その後少し話していると、神殿に到着した。
「ベラティア公爵様、ベラティア公女様、我がオリラ大神殿へお越しいただきありがとうございます。本日は魔力属性診断でよろしかったですか?」
「ああ。頼んだ」
「かしこまりました。では、こちらの部屋で少しお待ちください」
通された部屋でつかの間のティータイムをしていると、公爵が気まずそうにしながら話しかけてきた。
「フィオナ、良かったら、皇太子殿下とフィオナの過去について教えてくれないか?」
「はい。最初のわたしは・・・」
それから、王太子妃としてこき使われていたこと、国を滅ぼすのに協力してくれたロマーノを悪霊の世界へ戻したことなど、さっき省いたところを大まかに話した。
「こんな可愛いフィオナをこき使うだなんて、なんて酷い王太子だ!地獄に落とされて当然だ!」
「そこまででも・・・」
「でも、フィオナは傷ついたんだろう?」
「・・・まあ、少しは。でも、いいことの記憶の方が鮮明です。」
「気になったんだが、一つ前の人生で婚約者がいたんだろう?その人と結婚していたら、聖女の魔力を失ったってこと?」
「はい。世界をつくりかえるのに成功して、悪霊も来る気配がなかったので、もう次の世代に聖女の座を譲ろうと思っていたんです。」
「そうなんだな。」
沈黙が続き、居心地が悪くて逃げ出したくなったタイミングを見計らってか、神官が準備が完了したと伝えに来た。
「じゃあフィオナ、行っておいで」
「お父様は来ないのですか?」
「ああ。ここで待っているよ」
「はい。行ってきます、お父様!」
「公女様がいらっしゃいました」
「公女様、私は大神官の・・・」
「・・・?どうしましたか?」
「あっ、いいえ。お美しいなと思いまして」
「ありがとうございます。嬉しいです」
「・・・なら良かったです。」
素直に喜んでいる乙女の笑顔を浮かべたが・・・この人わたしのことちょろいと思ってるな、と気づいた。
きっと、わたしが乗り移る前のフィオナだったら、普通に喜んでたかも。
でも、わたしは人生三回目。
見え透いた嘘と誰でも分かるマナー違反なんかに引っかからない。
「話が脱線してしまいましたね。では、早速魔力属性診断をしましょうか。」
「ええ。」
渡された器具に魔力を流すと、器具の色が光り輝く金色に変わった。
「えっ?!ごめんなさい、器具がおかしいようです。こちらでもう一度・・・」
改めて渡された器具も、金色に輝く。
「僭越ながら、人などの怪我を治癒したことはありますか?」
「今朝、お父様の怪我を治癒しました。」
「フィオナ・ベラティア公女様、神殿にお住いを移していただけるとありがたいです」
「つまり、わたしに神殿勤めして欲しい、と?」
「それとはまた違った意味になりますが・・・。とりあえず、ベラティア公爵様も交えてお話させてください」
「え、ええ・・・。」
聖女としてこき使う・・・じゃなくていいように使う・・・じゃなくて、保護したいんだよね?
そういう意味であってほしい。
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