表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/26

第十八話

「お嬢様、お時間です」


「・・・ええ。」



アカデミーの休日の今日は、ロマーノたちには内緒で悪霊の世界に行くことにした。

悪霊の王へ謁見の申請をして、許可をされたのが一昨日だったため、今日行くことになった。



「お嬢様・・・お気をつけて」


「攻撃は効かないから大丈夫よ。」


「・・・ご無事をお祈り申し上げます」


「行ってくるわ」



悪霊の世界の入口をかつてのように召喚すると、強い澱んだ風が吹き出し、一歩前に進もうとする足が止まりかける。



(でも、この問題を解決しないと進まない。)



心を鬼にして強ばる足を動かし、中に入る・・・









「ふう・・・。」



何とか入口を閉じたあと、瘴気が漂う王城へ入ると、案内をする、と従者がやってきた。



「フィオナ様でしょうか?」


「ええ。」


「・・・こちらへどうぞ」



しばらく歩いていると、重厚な扉を構えた部屋の前に来た。



「王様がお待ちです」


「案内ありがとう」



重厚な扉が開けられ、ただでさえ薄暗かった廊下より暗く重い空気が漂う空間が広がる。



「・・・来たか」


「お初お目にかかります。オルガナ帝国のフィオナ・オリィ・シュディアと申します。謁見を許可して頂き、ありがとうございます」


「こちらは挨拶しなくてもわかるだろうから、本題に入る」


「・・・はい。」


(私が王のことを知っているからって挨拶を省くだなんて・・・。)



基本的な社交界のルールは、悪霊の世界でも同じ。



(どれだけ私を下に見ているのやら。)


「あいつを返してもらえるかい?」


「・・・彼と、皇帝陛下の意思に従います」


「時間が無駄だ。せっかく謁見を許可したというのに、分からないだと?」


「ええ。公爵令嬢に決定権などないことは、陛下の方がよくお分かりなのでは?」


「・・・はっ!・・・捕らえろ」



返答が気に障ったのか、私を捕まえようとする。


私の腕を掴もうとした一人の兵士の手は、神聖力によって常に貼られている結界で弾かれる。



「・・・言い忘れていましたね。私は聖女なので、攻撃は通じないのですよ。」


「貴様が聖女だったとは!不運な・・・!」


「ところで、『貴様』は、敬っている人に使っていた代名詞なんです。敵の私を敬ってくださるなんて、女神様も喜ばれますね。・・・前も誰かに言った気がしますが。」


「・・・帰れ」


「かしこまりました。・・・またお会いできることを楽しみにしていますね」


「ふんっ」



いつかあなたと決着をつけるわ、と宣戦布告して退出する。


王城の外へ出てきて、人間界の入口を召喚しようとすると、武器を持った悪霊が私を囲んだ。



「外交問題になるから、気絶ぐらいで留めておかないと・・・」


「・・・総長!不審者です!!」


「なに、侵入者なんて俺が・・・って?!」


「・・・なんであんたが?」


「王様に力を貰ったからな。きっと今頃大騒ぎしているだろう」



捕まったはずの、クローディア皇太子・・・という名の元王太子が悪霊の集団の”総長”として悪霊の世界に逃亡してきたようだ。



「人間やめたんだね」


「ちがう!俺は”敵”を倒して王様の右腕になって、人間として英雄になるんだ!」


「”敵”ねぇ・・・。その”敵”って誰?」


「さあ・・・。王様は秘密主義なんだ」


「信用されてないだけじゃなくて?あんたの”敵”に情報を教えるんだもの、秘密にするよね」


「そ、そんなことない!フィオナなんて、俺様の手にかかれば一発で・・・」


「おっと。何回も言うけど、私に攻撃は通じないわよ、王太子さん。」


「っ・・・!・・・王様っ!!」



王太子が叫ぶと、悪霊の王が召喚される。



「・・・お前まだ居たのか」


「帰ろうとしたらこの人たちがいたので足止めされました。・・・もしかして、決着をつけたかったのですか?気づけずごめんなさい。」


「そういう訳ではない!・・・クローディア、この人は客人だから、危害を加えないように。」


「・・・はい、王様」


(ふう、やっと帰れそうね・・・)


今度こそ帰ろう、と人間界の入口を召喚し、悪霊の世界を後にした・・・






「えっ・・・?!」


「あ、フィオナ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ