第十五話
「あ、フィオナ。おかえり」
「ただいま戻りました、お父様」
「フィオナ、お前に客が来ているんだが・・・」
「・・・誰ですか?」
「トワイ帝国の皇太子、クローディア殿下だ」
「・・・はい?なぜそんな方が・・・?」
「私にも分からない。だが、フィオナに会うまで帰らないと仰っているから・・・」
「わかりました。急いで着替えてきますね」
「ああ。・・・ごめんな、こんな頼りない父で・・・」
「いいえ。私のことを心配してくれるだけいいお父さんですよ。」
とにかく、着替えながらどうするか考えないと。
「失礼致します」
「・・・君が、あの・・・」
「お初お目にかかります。フィオナ・オリィ・ベラティアと申します。御足労頂きありがとうございます」
聖女と正式に認められたときに頂いた「オリィ」という名前もつけて挨拶した。
「ああ。クローディア・ロイアだ。よろしく」
「よろしくお願いします」
隣国、トワイ帝国の皇太子・・・クローディア。
かつてのロマーノを彷彿とさせる黒髪と真紅の瞳。トワイ帝国は年中日差しが強いのもあり、健康的な肌の色をしている。
「座ってくれ」
「ありがとうございます」
「今日は、フィオナ嬢に大事な話があって来たんだ」
「どのような内容でしょうか?」
「はっきり言うと、俺と一緒にトワイ帝国に来ないか、という提案なんだが。」
・・・やっぱりそんな気がした。
「・・・私に利点が無いように感じられますが。」
そもそも、トワイ帝国は一夫多妻制を取っている時点で怪しい。
一夫多妻制はもう二度とお断りよ。
「トワイ帝国は一夫多妻制だが、絶対に側室は取らないし、影で誰かを囲うこともしないと誓おう。・・・だって、十分傷ついただろ?」
「・・・どのような意味でしょう?」
「まさか、忘れたとは言わないだろう?・・・フィオナ、俺だよ」
この皇太子、あのクズ・・・じゃなくて、一回目の人生のあのクズ王太子の生まれ変わり?