表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14


「音響分析、完了しました」


「みらい」の作戦室で、若い音響手が報告する。


「この波形は」風間が画面を見つめる。「通常のアジの群れとは」


"風間艦長"るりの声が響く。"群れの中心から発せられる音波には、明確なパターンがあります"


ソナー画面には、奇妙な同心円状の波紋が表示されている。深度2,800メートル。通常のアジの生息域をはるかに超えた場所で、群れは幾何学的とも言える完璧な円を描いていた。


「まるで」航海長が呟く。「何かの信号のような」


その時、るりの声に緊張が走る。


"群れが...動きを!"


ソナー画面上で、円を描いていた群れが突如として渦を巻き始める。


「これは」風間が身を乗り出す。


"風間艦長、私に接近を許可していただけますか?"


「危険だ」


"大丈夫です。この渦の中心に、何か...呼びかけているものがある"


風間は一瞬躊躇したが、


「了解。ただし」


"はい、最大限の注意を"


るりの漆黒の体が、深海の闇の中をゆっくりと前進する。


「距離800メートル」

「群れの渦、安定を維持」

「水深変化なし」


冷静な報告が続く中、るりは慎重に接近を続けた。


「距離500メートル」


その時、群れの中心から強い音波が発せられる。


"これは!"るりの声が興奮を帯びる。"風間艦長、この音波パターン。シンスイウオの"


言葉が途切れた瞬間、群れの渦が激しく収縮する。


「るり!離脱を!」


しかし、るりの反応はない。


「みらい」のソナーに、奇妙な干渉波が表示される。それは、まるで深海からの呼びかけのようだった。


「全システム、干渉を受けています」

「音響センサー、異常値を」

「るりとの通信が」


風間は、暗視カメラの映像を見つめる。そこには、渦の中心に吸い込まれていくるりの姿が。


「るり!応答を!」


返事はない。


深度2,800メートル。人知の及ばぬ深海で、未知との邂逅が始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ