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7.『瞬間移動の奇跡』を喰う

フタバも戦闘に積極的に介入する覚悟を決めた。

「『被膜(ひまく)の奇跡』『被膜(ひまく)の奇跡』」

フタバの両手からひとつずつ光球が放たれイツキ・フタバそれぞれの身体を包んだ。

コレは自分を守るモノだとイツキは自然と心得た。

「イツキ、次にアレが現れたら、私は 『発光の奇跡』を発動 する。アレが射程圏内に来たら手を叩き、目を つぶれ」


戦闘中に視覚を自ら閉ざせなどというなんとも抵抗感のある指示だったが、発光?と言っていたから目くらましを狙うんだろうと予測しイツキは超薄目で対応することにした。


今は物体は見えない。物体に一定以上の思考能力があるならば、瞬間移動で直接攻撃を狙える距離に出現するはずだと、2人は各々でそう考える。

イツキとフタバは互いに背中を預け、急襲に備えた。


じりじりと。

もしかしたら物体は退散したのかと期待したくもなるほどの体感時間が流れた。


「!!」

イツキは自身の左前方、頭の高さに物体の出現を感じ、用意していた反射行動で手を叩いた。

「『発光の奇跡』」

イツキは薄目にしていたが、それでも少し視界が白く滲んだ。

物体は視覚を奪われた状況に対応できておらず、出現したポイントから自由落下をしはじめていた。


「イツキ、やれ」

「指2本だな!」


「『名を与えて』突け」


イツキはフタバからの瞬時の指示に戸惑うことなく、脳裏に浮かんだその言葉と共に、突く。


「『穿孔(せんこう)』!!」


スコッと音が鳴り、物体の胴に穴が空く。

「仕留めた!」


イツキは人生で生き物を殺めたことはないが、この時もそのような心持ちにはならなかった。物体を破壊した……そのような実感しかなかった。


物体は自由落下の勢いのままボトッと地面に落ちた。物体の軌道が変わらなかったことからも、イツキの一撃は打撃を伴う類の攻撃ではないとフタバは分析した。


イツキは息を整え、

「フタバ、見たか、注文通り仕留めたぞ!」

とフタバの方を向こうとしたが、

「イツキ、まだだ」

そうフタバから警告を受けた瞬間、物体が跳ね、脚を首に巻きつけてきた。


―――爪が、来る!!


腕でとっさに頭をガードすると軽い衝撃があり、それにより皮膚に張り付いた膜が消失したとハッキリと感じられた。


「クッソ、近…すぎるッ!」

「イツキ、人体で一番硬いのは 歯だ」

フタバの言わんとしていることを瞬時に理解する。

「うらああああああああッ!」

前歯にエネルギーを集めるイメージを展開、物体の頭部に噛みつく。歯は闇をまとっていた。


カ――――ン


噛みついた行為にそぐわない、乾いた音が鳴り響いた。

腕もえぐってやるから離れやがれ!と思うと同時に脳裏に言葉が浮かぶ。考察を放棄し浮かんだ言葉をただ読む。


「『瞬間移動』」


イツキは巻き付いた脚からすり抜けるように、10センチだけ離れた地点に、確かに、瞬間で移動した。


その一瞬の出来事を目の当たりにしたフタバは衝撃を受けた。

「イツキ 貴様、『奇跡』を喰った とでも言うのか」


もう物体は動きを止めていた。


しっかり止まっていることを確認し、用心のため物体から少し離れ、十分な距離を取った所でイツキは思う。

(蹴りと一緒だった……噛みちぎった感触じゃなかった。口の中にも何も無い……)

フタバが近付きながらイツキに詰め寄る。

「イツキ、『瞬間移動の奇跡』は先天の『奇跡』ではないのか」

「んなこと訊かれたってわかんねーよ。……今日色々、非日常を目にしたことだけは受け入れるとしてもだ」


イツキはフタバの方を向いて断ずる。

「フタバ……お前も間違いなく非日常の類の存在だな」

フタバの返答は嚙み合わない。

「私にとっては 今いるこの場所が まず非日常だ」

2人の間には敵を退けた安堵が無い。


「説明……できるんだろーな?」

「私こそ貴様に説明を求めたい」


物体はいつの間にか、消えていた。


エピソード8以降はちまちま更新する予定です。長い目でお付き合いいただけると幸いです。

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