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異変調査

 朝早くということで、人気のないギルドの受付にメルは足を進める。ギルドの位置は猫の頃から知っていたが中に入るのは久しぶりであった。



「あの〜ちょっといい?」



 受付嬢の若い女性が笑顔で応答すると、メルは適当な言い訳を口にした。



「酒場に来た魔法使いのお客がこの街に地震がくるかもって」


「地震ですか?その魔法使いの方とご連絡付きます?」


「配膳してた時に聞こえてきただけだからその人の事は知らない、注意しといた方がいいよ」


「報告しておきますね、私達も何かよくない事が起こる前兆を感じているんです」



 早朝から依頼を受ける冒険者も少ない為今は忙しくない、受付嬢は情報共有をする事にした。



「最近、ロカの森の動物や魔物が激減していて調査に向かった冒険者達も具合を悪くして帰還するんですよね、地震が来るとしたらこの土地に何か良くない事が起こってそうで」


「やっぱり森かぁ…」


「え?」



 やはり野良猫達が言っていた森に何か原因があるみたいだ。メルは冒険者達が早いこと解決してくれる事を願った。



「じゃ、地震の件はなるべく広めといてね」


「上次第ですが私も助力します、情報ありがとうございました」




__




 酒場に戻ったメルはヨルズに報告した。



「やっぱり森で何かあるっぽいね」


「アンタの言った通りじゃないかい」


「私達動物は環境の変化に敏感だから、まぁ今の私は鈍くなっちゃったけど」

  

「地震の揺れはどの位だい?」


「大きいと思うよ、ボロい家は崩れるんじゃない?」



 ヨルズは何か考え込み、メルは2階に上がり二度寝した。




 __





 それから特に何もなく1週間後。


 昼12時から客が増え出す酒場でメルはグレーのハーフパンツとエプロンに着替え、接客に勤しんでいた。



「3番焼肉定食、6番ミートパイとフライドポテトね」


「了解ッ!」


 厨房のヨルズの旦那は慣れた手つきで次々と料理を完成させていく。



「ふぅ、ピーク過ぎた」



 2時を過ぎるとお客の数は減り、メルはヨルズから叱られない限界のラインでダラダラと皿洗いや食器を拭いて時間を潰す。



「メル、今日のバイトは上がっていいよ」


「え、ほんと!!」


「あぁ、コイツと少しロカの森に散歩に行ってきな」


「この子がヨルちゃんのペットなのねぇ」



 

 ヨルズの横にいる、全身黒を基調とした高いヒールにタイツと胸元の露出の多い若い女。メルは鼻につく様な甘ったるいその女の匂いに顔をしかめた。

 



「だれこの人、ていうかなんで森なの」


「メルちゃんデートに行きましょ?」


「この女はエリザベードって言ってな、Sランク冒険者の魔法使いだ」



 そこからメルはロカの森には行かないと口論になるが、ヨルズは地震によって客に被害があれば客足が遠のき酒場が無事でも意味が無いと諭す。森の異変を突き止めれば、1週間の休暇とお菓子の店で好きなだけ買っていいという条件でメルはしぶしぶ森に行くことにした。



「メルちゃんは魔法に興味ない?」


「興味ない、むしろアンタとババアがどんな関係なのか気になる」


「やんっ、アンタじゃなくてエリザと呼んでぇ」



 エリザベードの匂いがキツイ為、メルは少し離れて馬車を貸し出している場所へと向かっていた。



「ヨルちゃんと私は昔、一緒のパーティーで活動してたの」


「へぇ〜、ババアって昔は冒険者だったんだ」


「ヨルちゃん今はおっきくなっちゃったけど、昔は戦場の乙女なんて云われるくらい美人さんだったのよぉ」


「キャハハハ、あの拳骨巨人が?」


「フフフッ、ヨルちゃんに言いつけちゃお〜」


「それだけは勘弁して…」



__




【Sランククエスト】 ロカの森の異変調査。


 魔物動物個体の急激な減少、深い霧に覆われており視界不良。

 森侵入時、魔力減少を確認。魔力切れの冒険者多数。



             受注_エリザベード・ランページ

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