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5 見えない心

(公爵様がわたしを好いてくれているようには思えないのよね……)


 嫌われてはいないはずだけれど、これまで領地でお会いしたときは主に葡萄や畑の話しかしていない。

 一度か二度、最近あれそれが流行っているそうですね。そうみたいですね。というような会話もしたけれど、その程度。


 そもそもイブニール公爵は公務で来ているために領主であるわたしの父と話すことが多く、わたしはほとんど関わりを持てずにいた。


(今だってこの温度感だもの……)


 涼やかに座し、呪いについてゆるやかに説明を進めていく姿はどう贔屓目に見ても、愛している人とついに婚約が結べる喜びとは捉えがたい。


(なにか理由があっての婚約だと思ってはいたけれど、愛という言葉が絡んでくると真実味が少しもないわ)


「どんな結果になったとしても、責任は感じないでいただきたい」


 イブニール公爵がわたしのことを慮ってか、ひときわ優しさを滲ませる声で言った。


「突然愛を望まれても難しいことは理解しています。あなたの心が動く保証がないことも。けれど、そこは私が努力をします。だからどうか、婚約をしていただけないでしょうか」


 切実さを帯びた真剣な語句が胸へと突き刺さる。愛する人に求められて嬉しいはずなのに、どうしようもなく苦しい。


(その言い方だとまるで、わたしの気持ちさえ整えば解呪できてしまうみたい)


「解呪を目指すのであれば、私も愛される努力をしなければなりませんよね……?」


「まさか!」


 恐る恐る聞いてみると、イブニール公爵は身体を微かに仰け反らせて否定した。それからなんでもないことのように次の言葉を音にする。


「私はすでにマクベル嬢を心から愛しています。ですからマクベル嬢は私の愛を受け取るだけでいいのです」


 わたしは目を見開きイブニール公爵をじっと見つめた。もちろん表情は読み取れない。


(この方は、こんなにも簡単に嘘をつく方だったのかしら)

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