ウチな、うんこちんちんおっぱいで笑える家庭を作りたいねん
「は?」
「なんべんも言わすなアホ、ウチかて暇やないねん」
「知らんがな」
「自分が変なこと聞いてきたから、わざわざ答えてやったっちゅうに」
「知らんがな」
「あほらし」
「その言葉、そっくりそのまま返してええか?」
「ほんなら自分、おっぱい嫌いなん?」
「は?」
「嫌いか?」
「いや……まあ……好きやけど」
「めっちゃ見てくるやん、きっしょ」
「じゃあ、お前はちんちん好きなんか?」
「嫌いやったら、自分と付き合ってないねん」
「ああ……うん」
「きゅうに照れんなや、きっしょ」
「うっさいわぼけ。じゃあ、うんこ好きなんか?」
「嫌いやったら、自分の下の世話せえへんって」
「それは……ごめん」
「きゅうに謝んなや、きっしょ」
「いや……うん。ありがとうな」
「……はよぉ元気になって、退院しぃ。ほんならめっちゃおいしい手料理食べられるねんて」
「まじか……。そんならすぐ治して、退院せなあかんなぁ。そんで、うんこちんちんおっぱいで笑える家庭を作るんや」
「約束やで」
「ああ、約束や」
——
「母ちゃん、何かええことでもあったん?」
「え?」
「めっちゃにやにやしてるやん」
「昔のこと思い出してん」
「昔って……父ちゃんのこと?」
「ふふ、よくわかっとるやない」
「父ちゃんってさぁ、どんな人やったん?」
「父ちゃんはなぁ……おっぱいが好きやった」
「なにそれ、きっしょ」
「きっしょいやろ……そんでな、うんこちんちんも好きやってん」
「えっぐぅ」
「えぐいやろ……でもな、そんな父ちゃんのことが誰よりも好きやってん」
「信じられへん」
「いつか自分にもわかる日が来るて」
「わかりたないなぁ」
「いまはわからんでもええねん。でもな、いつかきっと、わかる日がくんねん」
「ふーん」
「ふーんって、関心なさすぎやろ」
「だってさー、そないより母ちゃんが元気になってくれたほうが、よっぽど嬉しいねん」
「そうかー、ほんなら、うんこちんちんおっぱいが好きになるまで頑張らなあかんなー」
「わー、めっちゃ好きやー」
「なんやその棒読み」
「……だからさ……はよぉ、元気になってな」
「……まかせとき。そんで、うんこちんちんおっぱいで笑える家庭を作らなあかんねん」
——
「これからさ、どんなふうになるんやろな」
「そんなん決まっとるやない。ウチな、うんこちんちんおっぱいで笑える家庭を作りたいねん——」