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ボイスリアクト  作者: 夕村奥
第一章
8/31

共闘

朝日が差し込み宿屋の中の部屋を照らすと寝ていた智也と彩子が同時に目を覚ました。二人とも目を覚ますとふと起き上がりお互いを見つめた。

「おお、彩子か」

「あなた」

「今日は試合だったよな。早く支度しようぜ」

「そういえばヘンリーさん見当たらないわね。どこにいるか知らない?」

「そういやヘンリーさんここにいないな。いつもなら朝いつも泣いて起こしてくれるんだけどな」

「たぶん中央広場にいるんじゃない?ヘンリーさんあそこにいつもいるとか言ってたから」

「そうだな。ちょっと見に行こうぜ」

「そうね」

彼らは宿屋の部屋の中で着替えを済ませ、最小限の荷物を持って宿屋を出た。そこを出ると昨日の屋台が片づけ始められていた。その屋台を見て彼らの脳裏にはふと昨日の花火の情景が浮かんできた。この世界にも花火ってあるんだなと驚きを隠せなかったようだった。屋台の様変わりした姿に少し懐かしみを覚えながら彼らは中央広場に向かっていった。

「がちゃん、ごとん」

「かっかっかっ」

「こここうしといて」

彼らが広場に向かうところどころで型付けの音が聞こえやってみた。彼らもいつか屋台をやってみたいと考えているようだった。やがて彼らは中央広場にいるヘンリーの元までたどり着いた。

「ああ、皆さん。お久しぶりです。」

「久しぶりじゃないですよ。ヘンリーさん。昨日会ったばっかりじゃないですか」

「そうですか?それはそうと今日は試合ですよね。楽しみですね。今日皆さんには存分と驚いてもらいます」

「そんなにすごい大会が開催されるんですか、ここって?」

「普通の村ですが各地から冒険者が集まってくるところですからね。この大会では毎回ステータスが1000以上の上級冒険者が多く参加します。場合によっては超級冒険者が参加する場合もありますがその試合はとても見ものですよ。特に最終戦後のヨシキと超級冒険者の戦いはとても目ざましく目を見張るものがあります。ヨシキの必殺技は竜撃で大きな拳が5つほど出現して、高速で対象物を連続攻撃します。この拳は直径5メートルもあり、避けるのはとても困難でしょう。しかしこの竜撃をかわす冒険者が現れないかとあれこれ考えるのもこの大会の見どころの一つです」

「とてもワクワクします。ああ早く始まらないかなあ」

「そうね。。私も少しだけ楽しみになってきたわ」

「そうだな。あのヘンリーさんと互角に張り合った精鋭だ。とても強い冒険者に違いない。」

「しかしあのヘンリーさんでも勝てないヤツもたしかいたんですよね。ほら、あのダンジョンの」

「そうですね。あの化け物は人間でありながら人知を超えた力を持っていました。私もその時は世間にある程度名をとどろかせていた剣士なのでしたが、私の得意の剣撃も簡単にあしらわれてしまいました。ヨシキには多少は効いていたんですが、あの化け物には一切きかなかったのです。おそらくステータスは2100はくだらないでしょう。2150、いやそれ以上なのかもしれません。私も必殺技ソードライトピースを残していれば倒せていたかもしれないのですが、やはりそれなしでは手も足も出なかったですね」

「そんなにやばいヤツだったんですか。ヤツは何をしているんでしょうね」

「私にはわかりません。しかし油断は禁物です。あの化け物は超級冒険者でも勝てるのもごく一部でしょうから遭遇すればとても危険なので、すぐ逃げてください」

「わかっていますよ。俺だってこれまでの旅を通じてモンスターの危険さは私なりにわかっているつもりです」

「それならいいんです。さあ、闘技場に向かいましょう」

「闘技場のチケットは買わなくてもいいんですか?」

「チケットなら3人分買っておきましたよ」

「そうですか、ありがとうございます」

「私も久しぶりにヨシキに会えるので多少わくわくしていますよ」

「ヘンリーさんにも好きなことはあるんですね」

「私は昔から強くなるのが趣味みたいなものでして、戦いは胸が熱くなります」

「俺もいざとなると怖いですが、楽しくなる時もありますよね」

「男ってほんとに戦いが好きなのね」

「おう、彩子もわかってくれたか?」

「私にはわからないけどあなたがとても好きなことはわかった」

「彩子も参加すればいいのに。面白いと思うぞ」

「私はいいの」

「そうなのか。ヘンリーさんそういえば食べ物はどこで売ってるんですか?」

「基本的に闘技場の内部に売店がありますので、そこで買うことができます。それ以外にも闘技場の観客席にも売り子が歩いているので、そこでも買うことができますよ」

「この世界にも売り子みたいなのもあるんですね」

「もともとこの闘技場もリアクターとその仲間の発案みたいでして、そこで売り子の概念もこの世界で使われるようになったんですよ」

「そうなんですか。俺もヘンリーさんに聞いてばかりで悪いですね」

「いいんですよ」

「いつも智也がごめんなさい。自分で考えるように言ってるんですが」

「彩子だって考えてないじゃないか!ヘンリーさんに頼ってばかりじゃないか!」

「失礼ね。あなたよりは頼っていないわ」

「俺だって自分で考えてるよ」

「まあまあ二人ともケンカしないでください」

「ふんっ」

「俺だってしらない!」

「じゃあ私はなにか買ってきますので」

「わかりました」

「サッサッサッサッサッサッ・・」

ヘンリーは闘技場の階段を下りていき、そのまま闘技場の中に入っていった。その間彼らはおのおの闘技場の試合場や向かいの観客席を見ながら終始無言を貫いていた。それがしばらく続き、智也が口を開いた」

「この闘技場の人多いよな。まるで粒だな」

「そうね・・・・」

「俺たちもその中の一人だと考えたら、なんか面白いよな」

「そうね。っていうかあなた例えが下手ね」

「他になんかないの?観客がうごめいてるとか、おびただしい人が闘技場に集まっているとか」

「お前のその表現だって不気味だよ。俺の方が現実に近い表現をしてるぜ」

「まあ失礼ね。私の方が実際に忠実だわ」

「お二人さん。食べ物買ってきましたよ。皆さんがお好きなタピゴボももちろんありますよ」

「ヘンリーさん最高です。タピゴボもう俺の好物になりました」

「私もタピゴボ好きです。この村の農産物もとてもいいですね」

「この村はヨシキがとても性格がいいのでたくさんの人が集まって農産物やらそのほかのものを発展させてきましたからね。このタピゴボの原料のタピタピも昔からこの地の産物であとから集まった人たちが改良に改良を重ねて作ったんですよ」

「そうなんですか?この村もけっこうたくさんの人から愛されているんですね」

「こことても素敵だなと思っていたけどやっぱりみんなに愛されているのね」

「さあ、一回戦が始まりますよ。皆さん」

試合場の中央に向けて闘技場から唐突に審査員らしき人物が現れた。その後次々とその審査員と同じ服装のあたかも審査員のような人が試合場の周りに集まって、試合場の周りに置かれている椅子に座った。

「みなさん、大変お待たせしました。まもなく一回戦が始まります。あと数分で始まりますのでもう少しお待ちください」

「トゥントゥントゥントゥン・・・・・」

闘技場の中心地よい音が鳴り始めた。俺たちはその音を聞いてまもなく試合が始まるんだなと体で感じた。

「お待たせしました。一回戦を開始します。1回戦は竜人族出身のドリアさんとドメスト国出身のソリトの対戦です」

二人は闘技場の試合場への入り口からお互い逆方向から試合場の端と端へ向かってそこで止まった。彼らはそこで一礼をしてお互い構えた。竜人族のドリアは手に槍を持ち、片方の手に小さな盾を持っていた。ドリアは黒い鎧に身をまとい逆三角形の黒い盾に黒いロングソードを持ち、全身黒装備の重装歩兵だった。

「はじめっ」

開始早々竜人族のドリアがソリトに向かって槍をぶん投げてきた。

「パアンッッ」

ソリトは盾で体を槍から身を守った。槍は盾に当たってから上方向に回転しながら飛んでいった。その直後ソリトが竜人族に黒いロングソードで攻撃を仕掛けた。その攻撃は間違いなくドリアに当たったと思われたのだが、投げた槍が戻ってきてその剣を跳ね返した。そしてドリアがその槍を受け取ってソリトの腹部に向けて槍を突き刺そうとした。

「カー―ンッ」

しかし槍は重装備の鎧には刺さらずソリトは後ろに飛ばされた。槍は刺さらなかったようだが、ソリトの腹部にはダメージが通っていたようだ。ソリトは激痛からか腹部を抑えたのだがドリアがソリトの兜に槍で横から殴打した。ソリトはそのまま横から転倒した。ソリトはそのまま起き上がらず、審判がカウントを始めた。

「ワンッツーッスリーッ」

「カンカンカンカンカン・・・・」

「ドリアさんの勝利です。2回戦進出です」

「おお、竜人族の方が勝ちましたよ。やっぱり運動神経がいいからでしょうか?」

「竜人族は身体能力が高いのでそういうことなのでしょう」

「でも重装備で攻撃が通っていなかったように見えたのですが、通っていたのですか?」

「鎧からでも衝撃は貫通するので衝撃で吹き飛ばされたくらいですから、相当な威力で体で受け止められなかったのでしょう」

「やっぱりあのレベルの戦いを見るのは楽しいよな。俺久々に感動した」

「まあやっぱり智也は戦いが好きだね」

「皆さん、次の試合が始まりますよ」

「次の試合は剣士アンドリューさんと獣人族出身のエンライさんの対戦です」

アンドリューは剣士の名に恥じぬ立派な大剣を両手に装備していた。獣人族のエンライは何も装備しておらず、生身で試合場に立っていた。

「はじめっ」

「獣人族のエンライが先制攻撃した。エンライは一直線に4本の足で地面を強くけって空中に飛び上がり、アンドリューに向けてとびかかった。アンドリューはエンライの攻撃を剣ではじき返そうとして剣を体の後ろに大きく下げてからエンライに向けて大剣を振り上げた。

「パアアンッ」

「ビュオオオッッ」

するとエンライが大剣を空中に弾き飛ばし、大剣は大きく宙を舞い地面に落ちた。そのまま獣人は片方の手でアンドリューの顔めがけて長い爪がある手を振り下ろそうとした。しかしその攻撃を彼は間一髪にかわしてから獣人族に強烈にパンチを食らわせた。

「バンッ」

そのパンチはエンライに直撃しエンライは遠くに飛んで行った。このチャンスを逃すまいとアンドリューは飛ばされた大剣を持ち、エンライに向けて走り出しエンライに大剣を振り下ろした。エンライはなんとか大剣を両腕で受け止めたが全くその剣は動かず、じりじりとエンライに刃が近づいてきた。

「まいった」

エンライがアンドリューにこう発言すると大剣はエンライのもとから離れていった。

「アンドリューさん、2回戦進出です」

「おお、人間も獣人に張り合えてるじゃないか」

「あの人間は特殊なのでしょう。あそこまで大きな大剣を振り回せるのですから、相当な力を持っているのでしょう。普通は人間は獣人族や竜人族に勝つには魔法やスキルで埋める場合が多いのですが、あの人物は力が強いのでそういうのがなくても勝つことができたのでしょう」

「今度はどんな人物が出るのかなあ。楽しみだなあ」

「さあ、次の試合は剣士ヴァドアさんと召喚士リューザクトとさんです」

ヴァドアは片手に丸い盾を装備し、彼もまたロングソードを携えていた。召喚士リューザクトは何かローブのようなものを着ていて、何を装備しているのかわからなかった。しかし片手には鞭を持っているように見えた。

「はじめっ」

ヴァドアはリューザクトに向けて走って行って斜めにロングソードを振りかざした。そのまま彼のロングソードが彼の腕めがけて振り下ろした。

「カン」

「ギギギギ・・・・・」

しかし彼のロングソードは手に付けていた鎧に当たったようで何も起こらなかった。ヴァドアはそれからロングソードを彼に向けて振り上げて振り下ろした。しかし彼はそれを片手で受け止めた。

「ビュオンッ」

リューザクトは剣を手で握りながら遠くにぶん投げた。しかしリューザクトというのは何者なんだ。すべてが人間離れしていてとても同じ人間だと思わなかった。投げ飛ばされたヴァドアは受け身をしたが結構吹き飛ばされてしまったのでそこそこダメージを受けてしまったようだ。彼はダメージを受けて立てなくなっているとリューザクトが召喚を始めた。彼のあたりには直径10メートルほどの魔法陣が出現し、魔法陣から少しずつ体長7メートルほどの光の外形が出現し、やがてその外形はモンスターになった。そのモンスターは長いくちばしをもちどれかといえば鳥に似た化け物だった。その化け物はヴァドアの方に突進し、ヴァドアは場外まで吹き飛ばされてしまった。その化け物は場外まで飛ばされたヴァドアに突進を開始した。もうヴァドアは気絶していたのだがそんなものはお構いなしに突進した。

「バー―ン」

その化け物の攻撃はヴァドアに直撃し、そのまま闘技場の観客席まで飛んで行った。そのヴァドアは瀕死だった。たった2発食らっただけで冒険者が意識不明になるとかこれまで見たことがない。もしかしてヘンリーさんが言っていたダンジョンに出てきたやつなのか?

「リューザクトさん、失格。戦闘不能の対戦相手に攻撃を仕掛けたことにより、失格です。」

そう審判員が言うと彼は右手を後頭部に当てながら、その審判員を蹴り飛ばした。

「わーーーーー」

それと同時に観客が大騒ぎをした。

「グヴァアアアァァ」

「わーーーーーードタドタドタ・・・」

「ヘンリーさん、あいつは何者でしょう?もしかして先日話していたヤツですか?」

「・・・・・・」

「ヘンリーさん!」

「そうです。奴は私をモンスターに変えたやつです。皆さん、逃げてください。あいつは危険です」

「わかりました。ヘンリーさんも行きますよ」

「いいや、私はヤツを止めないといけませんので」

「ヘンリーさん一緒に逃げましょう。今のあなたでも勝てないでしょう?」

「いや、私は市民の安全が一番大事なのです。ここで目逃せません。皆さんはこの闘技場から避難してください。私も後から追います」

「いやだったら俺たちも戦います」

「危険です。あの化け物を2体も相手なのであなたたちが行けば命の危険が伴います。私は戦いの経験もあるので大丈夫です」

「そんなわけありません。逃げましょう」

「市民を犠牲にするわけにはいけません」

「グヴァアアアァァ」

「バアァー――ンッ」

突然あの鳥の化け物が観客席まで飛び乗ってきた。その直後逃げ遅れた市民を一人ずつくちばしでつついていき市民を気絶させていった。そういえばあの化け物は瀕死にするだけで殺したことは聞いたことがないな。ヘンリーさんのパーティーメンバーも瀕死にされるだけで殺されることはなかったな。いったいこれはどういうことなのか。しかし人間獣人関係なく襲っている。いったい何のためにこんなことをしているのだろう。俺はそのことに頭を悩ませる。しかし今は非難が最優先だ。ヘンリーさんと一緒に逃げなければ。

「ヘンリーさん!一緒に逃げますよ。俺たちにはあなたが必要なのです」

「いや、私は」

「ヘンリーさん私からもお願いします。私たちと一緒に逃げてください。いくらヘンリーさんでもあの化け物には歯が立たないですよ」

「でも、私は」

「ヘンリーさん!私たちはあなたに様々な場面で助けられました。私たちにも少しくらい恩返しさせてください。私たちはヘンリーさんに無事でいてほしいんです」

そのとき闘技場の中からある一人の男がやってきた。その男は黄土色の鎧に銀色のナックルを装備し、腕にシールドを装着させていた。その男はあの鳥の化け物のところに一瞬で移動し、化け物の背中にケリを食らわせて、試合場までぶっ飛ばした。そのまま男はそのモンスターの頭に膝蹴り加え、瞬時に胴体の横に移動して、赤いオーラが男の周りにまとい始め大きな拳が現れたと思ったら胴体に向けて直径5メートルほどの赤い拳が炸裂し、あの召喚士のもとへ吹き飛んで行った。召喚士は召喚獣の姿を見て激怒し、その男と向き合った。

「ヘンリーさん、あの男ってどんな人なんですか?ひょっとあの化け物を退治してくれるのでしょうか?」

「あの男はヨシキです。ヨシキならあのモンスターなら倒してくれるでしょうがあの召喚士に敵うのかはわかりません。だいぶ避難は終わりましたがまだ瀕死になった市民の回収がまだです。この大会に参加している中で腕のある冒険者が集めていますが、まだ半分ほどしか回収できてません。その間私が行ってきます」

「ヘンリーさん、行かないでください。お願いします」

「わんっ」

ヘンリーはそういってヨシキのもとへ駆けつけていった。俺たちはヘンリーを引き留める資格はあるのだろうか。これまで彼に散々甘えてきていまさらいかないでくれなんで甘すぎるよな。ヘンリーさんのライバルで親友の彼を助けに行くのは当然だよな。それに比べて俺は。この世界に来て結構時間がたったのに、戦力にならないなんて。俺が強かったらヘンリーもみんなもあんなことにならなかったのに。でもいまだに俺はヘンリーを失いたくないと思っている。そうだよな、彩子!これからも一緒に旅をしていけるよな。ヘンリーさんが負けるわけはないよな。ヘンリーがヨシキのもとで何か話しているような気がする。俺たちがそうしていたように。その直後、あの化け物が立ち上がり二人を見た。そして二人に突進を始めた。

「ドドドドドド・・・・」

二人はその攻撃をなんとかかわして、その後ろ姿をみてからヨシキが後ろから竜撃を食らわせた。

「バアンッ」

赤い拳が化け物に当たり、赤い炎が拳をまとわりつきさらに大きな一撃となってあの化け物が飛んで行った。

「ズ――――――ッ」

それに激怒して召喚士がヨシキに飛び蹴りを食らわせようとした。しかし、ヘンリーゆく手を特大の盾で遮り、ヘンリーの方に注意をそらそうとした。そのすきにヨシキがモンスターの上から竜撃を再度発動して、その拳が胴体に直撃した。するとその化け物は意識を失ってしまった。

「うおおおおおおおお」

その光景に召喚士は激怒して、ヘンリーに膝蹴りを食らわせようとした。だが踏み込む直前に盾を配置して、踏み込むのを防いだ。チャンスを察したのかヨシキが召喚士に竜撃を食らわせようとしたのだが、彼がなんとかその攻撃をかわして、ヨシキにけりを加えた。その攻撃でヨシキは数メートル吹っ飛んで行った。その直後召喚士は飛び上がり、ヘンリーに襲い掛かった。ヘンリーは避けようとして移動したのだが、その召喚士の所持していた手裏剣を逃げる方向に投げ、逃げられないようにした。ヘンリーが止まったところ、召喚士がヘンリーの方に歩き出した。ヘンリーは逃げようとしたのだが手裏剣を巧みに投げて、ヘンリーの目の前に来るまでリューザクトから逃げられなかった。攻撃の届くところまでリューザクトが移動したところ、ヘンリーに会心の一撃を打ち込もうとしたのだが、その瞬間ヨシキが横から竜撃を2発打ち込んだ。一発目は下から二発目は上から攻撃してリューザクトを地面にたたきつけた。

「ボワッ」

リューザクトはこの攻撃で結構なダメージを食らった。そのすきにヘンリーはヨシキの後ろに避難した。

「おらあっ」

リューザクトは全身に紫のオーラをまとい始めた。すると一瞬でヨシキに渾身の一撃を食らわせた。その攻撃でヨシキは10メートル以上吹き飛ばされてしまった。それから先ほどよりも大きい魔法陣を出現させ、召喚を始めた。すると魔法陣から5メートルほどの光の外形が出現ししばらくすると頭に角の生えたユニコーンらしき怪物が出現した。その怪物は一直線に主人の元へ向かい主人を馬上に乗せてヘンリーとヨシキから離れた。そして主人をおろしてからヘンリーの方に空中をかけながら全速力で向かってきた。ヘンリーはその速さを見切ることができずにとりあえずその場から離れようと思ったのだが、ヨシキ一瞬でユニコーンの横に現れ、横からケリを加えてそのユニコーンらしき怪物がヘンリーに直撃するのを防いだ。

「ビュッビュビュビュビュユーッ」

しかしその巨大な図体が切った風は膨大でヘンリーとヨシキは暴風に直撃した。ヘンリーとヨシキはその暴風で足が飛ばされそうになったがなんとか踏みとどまった。そのモンスターはヘンリーたちから距離を取り始めた。ヘンリーはなにか察したのかその方向に特大の盾を出現させ、進行方向をふさいだ。それを見たモンスターがもう一度ヘンリーに向かって突撃してきた。と思ったが進行方向をすり替えてヨシキの方を狙った。ヨシキはあまりに急だったのでかわすことができなかったのだが、特大の盾を斜めに設置させ進行方向をずらした。

「バアンッ、ドオンッ」

ヨシキの竜撃からの連続した竜撃が炸裂した。直径5メートルで赤い炎がまとわれた拳がモンスターを直撃して大きく吹き飛ばされた。それからヨシキとヘンリーがそのモンスターに向かって走り出したところ、リューザクトがその場を阻んできた。まずヨシキの元へ斜め上から膝蹴りを食らわせようと数十メートル離れたところから飛び出し、ヨシキめがけて膝を向けてきた。ヘンリーが盾で2重にして攻撃を阻もうと試みたがその膝蹴りは盾を簡単に破壊し、ヨシキに直撃すると思ったがヘンリーが接触直前に横からリューザクトに体当たりをして、ヨシキには少し当たるくらいで済んだ。しかしヘンリーはその膝蹴りを方向は異なったがまともに食らったので、気を失ってしまった。ヨシキはその光景を見ていた。そのあとリューザクトが攻撃を仕掛けようとしたところ、ヨシキのオーラが紅色に変わり、いち早くリューザクトに竜撃を加えた。

「ドゥオオオオンッ」

「バンッバンッバンッドンッ・・・・」

リューザクトはその攻撃を食らい地面にたたきつけながら20メートル吹き飛ばされた。つづけてヨシキは彼の元へ飛び上がって吹き飛ばされている途中のリューザクトにもう一竜撃を加えた。

「ヴァンッ、ドオンッ」

リューザクトはさらに20メートル吹き飛ばされた。その後ヨシキはヘンリーの元にいった。ヨシキはヘンリーの体を起こして彼はヘンリーに頭を擦り付けた。直後にヘンリーは目を覚まし、ヨシキに何かを言った。ヨシキはそれに首を振っていたのだがヘンリーはそのまま言い続けた。その後ヘンリーが立ち上がり、リューザクトの方へ行った。ヨシキは反対に俺たちの方に来てこういった。

「ヘンリーと俺がひきつけるから、お前たちは早くここから脱出しろ」

「は、何言ってるんですか。ヘンリーさんも一緒に逃げるんですよね」

「ヘンリーはあなたたちや市民を一人も犠牲にしたくないと言っている。彼はこれまでずっと貫いてきた意志だ。彼は一度もこれを曲げたことがない」

「でも、ヘンリーさんも後から来るんですよね」

あたりまえだよ。大丈夫。あいつを倒して俺が絶対ヘンリーと戻ってくる」

「本当ですよ」

「おうよ!」

そういうとヨシキはヘンリーの元へ戻っていった。

「ねえあなた。ヘンリーさん大丈夫なの?」

「大丈夫さ。ヘンリーさんだから大丈夫だろう。あの戦いぶりを見たろ。絶対大丈夫だよ」

「絶対無理しているわ。ヘンリーさんさっきから動きが鈍いわよ」

「もしヤバかったら俺が何とかするから、お前だけでも逃げろ」

「あなたはどうするの?」

「俺はヘンリーのとこに行ってくる」

「あなた駄目よ。とても危ないわ」

「俺もどこかで活躍しないといけないと思ってたんだよ」

「あなた今無理してるでしょう。私もヘンリーも守りたいと思って悩んでいるんでしょう。私はいつも智也と一緒だわ。そんなに悩まないで」

「おお、わかってるんだけど。ん、ん、ん、俺ヘンリーさんを助けに行きたいんだ。お前もとても大事だけどヘンリーさんを助けに行きたいんだ!」

「それはわかってるわ。けどあなたの命も大事にして。あなたいないと私この世界で一人だわ。私を一人にしないで」

「俺はあんな奴と戦って死ぬわけないじゃん。大丈夫だよ」

「まだそんなこと言って。ヘンリーさんが逃げてほしいって言ったんだよ。あなたがここで逃げなかったらヘンリーさんが悲しむよ」

「でも俺はいく。そしてお前は戻って闘技場から脱出して避難場所までいっておいてくれ。頼む、これだけが俺のお願いだ」

「だめだわ、あなた。ん、ん、ん、だってあなた私を大事にするって言ってくれたでしょ」

「ここで俺が逃げたらこの先きっと逃げ続ける。ここで逃げるわけにはいかないんだ。お前は避難場所で待っておいてくれ」

「絶対生きて戻ってくるって。約束だよ」

「おう!」

智也はそう言って彩子の元を離れていった。彩子は彼がヘンリーの元へ走っていったのを見届けて、彩子は避難場所に急いだ。彩子は智也が生きて帰ってくることを信じて、独りで避難場所まで走っていった。彼女はそのとき何を考えていたのだろう。ヘンリーのことかはたまた智也のことか。彼女はこれからの旅のことを考えているのだろう。もう一度これまで通り3人で旅をできるのだろうか。彩子はこれからのことを不安げに考えながら、中央広場を通って避難場所にたどり着いた。そこにはざっと1000人以上集まっており、とても喧噪としていた。皆今日の出来事で胸を痛めているのだろう。彼女は一人でこの喧噪な避難場所で過ごしていくうちにとても不安になってくる。智也は帰ってくるのだろうか。もし帰ってこなかったらどうなるんだろう。彼女はそのことで頭がいっぱいだ。いまごろ彼らは何をしているんだろう。もしかしたら襲われている最中で最悪の場合死んでいるんじゃないか。こんなことを気にしてもしょうがないことは分かっているのだが、とても不安で気にせずにはいられない。喧噪な空間の中でそれはなおさら引き立てられる。やがて避難場所で救援物資が届いた。食事と必要最低限の生活用品だった。智也がいるときはおいしいご飯が食べられてヘンリーさんがいるときはみんなで談笑したな。頼むよ、二人とも帰ってきてくれ。そう考えながらひたすら彼らの帰りを待つ彩子であった。

「ヘンリーさん!」

「智也さん。どうしたんですか。ここはとても危険ですよ。早く逃げてください」

「俺はヘンリーさんを見捨てることができません。ヘンリーさんと戦います」

「いけません。奴はとても強いんです。あなたじゃとても太刀打ちができません」

「俺もそこそこ戦えますよ。」

「あなたにはこの世界を変える義務があるのですよ。こんなところで・・・」

「でも俺はヘンリーさんを守るって約束したんですよ。ここであきらめきれませんよ」

「今はヨシキさんがヤツを引き留めてくれてます。それとこの村に救援を呼んでいますので我々は任務は敵を引き付けることです。おそらくあと2時間ほどで近くの町の熟練冒険者が駆けつけてくれるらしいですから」

「2時間守ればいんですね」

「でもボイスリアクトは禁止ですよ」

「何でですか?」

「あの人物がボイスリアクトを知っているとばれてしまいますよ。すると標的があなたになって我々の努力が水の泡です」

「でも俺は!」

「私もあなたの気持ちは分かります。私を借りを返してくれようとしているんですよね」

「違う、俺は!」

「私たちはあなたや皆さんが安全に生活していけるためにこうやって戦っているのですから。これが私たちの一番の幸せです」

「それならなおさらあなたを見捨てるわけにはいきません」

「じゃああなたにヤツを止められますか?」

「それは・・・」

「私も後で帰ってきますよ。心配しないでください」

「本当ですよ。約束しましたからね」

「はい。任せてください」

「バンッ」

彼らの間に大きな一枚の盾が遮った。

「何をしてるんですか。ヘンリーさん?」

「智也さんはいち早く避難場所まで行ってください。私は後を追いますから」

「ヘンリーさん!」

「ヘンリーさん!」

ヘンリーは智也の元を去って、ヨシキの方に加勢しに行った。智也はヘンリーを見捨ててしまったと魂が抜けたような気持ちになり、今にもすべてを投げ出してしまいそうになった。しかし今自分が死ぬわけにはいけないと思って彼は踏みとどまり、泣きじゃくりながら避難場所に向かっていった。誰もいない慣性とした住宅街を抜けて、中央広場を通り抜け、避難場所に向かった。

「智也!」

「彩子!」

「ヘンリーさんはどうしたの?」

「ああ、俺の加勢は必要ないとか言われて。何もできずに帰ってきちゃったよ」

「とにかくあなたが無事でよかったわ。私とても心配したのよ」

「ごめん」

「それより救援物資もらってきたら?」

「そうだな」

彼らはそのままその避難所で一夜を過ごした。そのままヘンリーとヨシキは帰ってこなかった。彼らはいったいどうしたのだろうか。救援が到着する2時間のうちに何があったのだろうか。明日になっても避難所にはヨシキとヘンリーは来ない。誰に聞いてもヨシキとヘンリーの情報はない。わかっているのは二人が消えたことだ。そうだとしたら村の守り神を失ってしまったこの村はどうなってしまうのだろうか。二人は懸命に二人の痕跡を探すのだが何も見つからず一週間がたってしまった。

「ねえあなた、ヘンリーさん見つかった?」

「やっぱりどこも知らないって。俺たちこれから何をすればいいんだろうか」

「わからないわ。でも私たちにも何かはできるはずよ。何かこの町で探索してみない」

「そうだな。いまだに信じられなくて空っぽだけやりたいこと見つければ何か見つかるでしょ」

「そうね。とりあえずこの店に入ってみましょう」

ヘンリーがいなくなって一週間がたち彼らはいまだに消えたことを信じられないでいた。ヘンリーさんはたぶんどこかでかくれんぼしてるんだ。そしていつか俺たちの目の前に現れてびっくりさせるんだ。ヘンリーそんなことはお見通したぞ。・・・ヘンリー・・・。

「戻ってきてくれよ。ヘンリー。ん、ん、んっ」

「きっと大丈夫わよ。いつかひょこっと姿を現すわ」

俺はいじらしくも泣いてしまった。なぜこんな気持ちになるのだろうか。ヘンリーは後をつけると言って帰ってこなかった。それにヨシキもヘンリーを連れて帰ってくると言って、・・・。みんな嘘じゃないか。嘘なんてつくなよ。見苦しいだけだぞ。

「しっかりして、あなた。ヘンリーさんだからどうにかするわよ。それにヨシキさんもいるわよ。心配いらないわよ」

「さ、宿屋に帰りましょう」

俺たちが宿屋に帰る途中、あの馬車を見かけた。その馬車には少女がいつも通り窓を眺めていて俺たちと目が合ってしまった。少女は苦笑いするとまたカーテンの奥に消えてしまった。あの少女は何を考えているのだろうか。

「さあ、あなた。食べ物だして」

「おう」

「クリエイト・・・・・スパゲッティ」

俺たちの前にミートソーススパゲッティが出現した。いつも通りその光景に驚嘆した。

「ねえ、あなたおいしいわね」

「ああおいしいな」

「このミートソーススパゲッティをヘンリーさんに食べさせたことあったわよね。そのヘンリーさんの顔を思い出したら、今でも笑ってしまう」

「ねえ、ヘンリーさんいつかころっと帰ってくると思うわ。なんかそんな気がするの」

「あの人だったら、何とかなってるか。彩子が言ってきたらなんかそう思ってきた」

「今日は疲れたから早く寝ましょう」

「おう!」

彼らは食べてから談笑しながらそのまま就寝した。今日の話はヘンリーの話がいつもより少し多かった。


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