勝算
「ようやく海の街ファートルに到着です。皆さま準備できましたか?」
「どんな町なんでしょう」
「ファートルは絶景がところどころにある素晴らしい街です。私も興奮しているところです」
オリビアは笑顔で智也のほうを向いて言った。
「俺も楽しみです。どんなところなのかな、と興味があります」
「ファートルには海中都市があり、そこには祭壇があります。そこでは様々な鉱石やアイテムを祭壇に捧げて、スキルや武器防具を手に入れることができます。私はそこの祭壇は使ったことはないですが、すごい強力なスキルを手に入れることができるらしいです。ヴァージレッドというアイテムを二つ捧げると、攻撃力2倍のスキルを手に入れることができるらしいです。そのほかにも例えば赤いレア鉱石3つと白い牙を2つをささげると、攻撃力300の武器が手に入るらしいです。強力なものだとカットインピードという攻撃力1000の武器が手に入るらしいです。毎日冒険者がこぞってこの祭壇に足を運びます。私もいつかそこに訪れたいと思っているのですが、なかなか機会に恵まれず。海中都市は海中の下の大きな洞窟の体裁をとっていて、人間も入ることができます。もちろん、海洋生物も暮しています。ただ、2本足の人間族に所属する者が多いですが。海洋人間族というのですが、平均ステータスは人間よりも高めです。海中都市には海洋人間族がすんでいるのですが、最もステータスが高いもので2020くらいらしいです。名はオーブルといい、国のギルド戦でも有名な人です。海洋人間族ではトップクラスに強く、この海中都市ファートルでは負けなしです。性格も良く海中都市の人気者です。私は一度もあったことはありませんが。いつか会いたいものです。海中都市に行って様々な冒険者に会ってみたいです。祭壇も一度見てみたいですね。話はそれますが、海の街ファートルには観光地がいくつかあるんです。一緒に行きましょう」
「楽しみですオリビアさん。海の街ファートル。楽しみです」
「ではあと少しです。進みましょう」
最後の日に差し掛かりオリビアの歩く速度が少し上がったみたいだ。パーティーの皆はそれに一生懸命についていく。オリビアのテンションが上がったのを見て、智也は笑みを浮かべた。オリビアはきっと海の街ファートルにいい思い出があるのだろう。そう思いながら、ひたすら荒野を進んでいった。道中では、多少厄介なモンスターに会ったが、サルトが一瞬で倒した。智也はサルトに処理を任せる旅は味気ない者だなと考えることもあるが、危険が遠ざけられていることを素直に喜んだ。サルトがパーティーに参加していなければ、途中で諦めたかもしれない。そう思いながら智也はオリビアたちの後について行った。しばらくするととあるモンスターが出現した。バンドーロだ。それも2体。だが、サルトがすぐ攻撃態勢に入った。
「ドオオオオオオン、ドオオオオオオオン」
「ドオオオオオオン、ドオオオオオオオン」
サルトの必殺技をかわすことができなかった2体のバンドーロはどちらも戦闘不能になった。頼もしいサルトの強さを再び感じたパーティーメンバーたち。バンドーロは多少強力なモンスターだが、サルトにかかれば敵ではない様子だ。バンドーロを倒し、再びパーティーは荒野を進みだした。進行中、しばらくモンスターは出現しなかったが、1時間ほど歩いたのち、何らかのモンスターの大群が遠くに見えた。
「おそらくモンスターの大群です」
「トカゲっぽいな。ホワイトリザードか?」
ファシーはパーティーの中では目がいいので、大群のモンスターが何なのかが分かった
「ホワイトリザードだぞ。15体ほどいる」
「なんだと。さすがに15体のホワイトリザードは危険でしょう。見つからないように、遠回りしましょう」
「わかりました」
「いや、その必要はない」
そう言ったのはサルトだった。サルトには勝算があるようだ。
「俺のバーンスラッシュはあの程度の相手は簡単に対処できる。もしかしたらすべてに当てられないかもしれないが、俺の直観がいけると言っているんだ。みんな、俺から離れろ」
サルトの周りにオーラが纏いう始めた。その後いつもよりも大きく剣を振りかぶり、剣の化身をホワイトリザードの大群にたたきつけた。サルトからホワイトリザードまで距離があったが、一瞬で距離を狭め、ホワイトリザードの目の前へ化身がたどり着いた。
「ドオオオオオオン、ドオオオオオオオン、ドオオオオオオオオン」
「ドオオオオオオン、ドオオオオオオオン、ドオオオオオオオオン」
6発の化身が15体のホワイトリザードに衝突した。だが、数体のホワイトリザードには当たらず、サルトのほうへ走り出した。
「ドドドドドドドドドド......」
「ドドドドドドドドドド.......」
しかしサルトは2度目を放った。
「ドオオオオオオオン、ドオオオオオオオン」
2つの化身が走りくるホワイトリザードに衝突した。ホワイトリザードの足は止まり、すべてのホワイトリザードを倒した。
「無事に倒せました」
「本当に倒せるなんて思いませんでした。でも遠回りしてもよかったんじゃないですか?」
「智也はなるべく早く行きたいんだろ。俺は智也の役に立てることがうれしいんだ」
サルトの思いが伝わった智也は若干泣きそうになっていた。
「ありがとうございます、サルトさん」
「気にするな」
その後、オリビアは先頭に、オリバー、智也、彩子、サルト、アルフィー、ファシー、王国騎士3人衆のい順に荒野を進んだ。しばらくすると荒野の終わりが見えてきた。
「なにか道が見えてますよ。街道ですよね。皆さまもうすぐです」
オリビアがそういうとパーティー全員に希望が見え始めた。もうすぐ海の街ファートルだ。そう思いながら、オリビアらは荒野の終わりまで歩き切った。
「みなさま、ここです。ここがレグレド荒野の終わりです。ここからが海の街ファートルに向かう街道です。この街道はそこまで長く続きませんから、もうすぐです」
「ようやくだな、彩子。海の街ファートル楽しみだな」
「そうね」
「海中都市には様々な店があります。もちろん武器防具、アイテムを売っている店もあります。そこでしか買えないものもたくさんあります。ぜひ海中都市に一緒に行きましょう。でもその前に、ファートルの有名な観光地に案内します」
「ありがとうございます、オリビアさん。でも俺は冒険者ムラセに会いたいです。俺と同じ異世界から来た人らしいのです」
「わかりました。それを優先して探しましょう」
こうしてオリビアらパーティー一行は海の街ファートルに向けて街道を進みだした。このタユデル街道はあまり長くないのでパーティー一行はすぐに海の街ファートルにたどり着いた。
「海の街ファートルにつきましたよ皆さま。では初めに観光しましょう!」
「ちなみにどんな観光地なんですか?」
「見るまでのお楽しみです」
「そうですか」
テンションが上がっているオリビアに様子に少し伝染する智也。これからどんな景色を見れるのだろうと少々緊張しだす智也。彩子はオリビアの勧める観光地について気がかりになっていた。景色を見ると、感動する場所なのだろうか。彩子は少し気がかりに、でも楽しみにしている。アルフィーは海の街ファートルについて興味があった。それは良い絵を描けるかもしれないからだ。アルフィーの絵への原動力は小さなものではない。素晴らしい気色を見つければ、絵に残したくなるのだ。ウキウキしているアルフィーを見てサルトもうれしそうな様子だ。オリビアはみんなに幸せになってほしいと思っていてこの旅の思い出を作りたいと考えている。この10名の思い出を。
もう迷わない。俺はボイスリアクターになるんだ。どんな敵が現れようともきっと諦めない。未来へ進んでいく。失敗もするかもしれない。でも彩子だってヘンリーさんだって信じてくれた。中途半端なところで諦めたくない。どんな絶望的な環境でも、道はどこかにあるはずだし、なかったとしても乗り越えて立派なボイスリアクターになって、新しい世界を構築したい。この世界中の人を救いたい。これが俺の願いだ。高い壁を乗り越えるぞ。ここまで俺がこだわっている理由は分からない。ボイスリアクトを使いこなせていないし、いつ使いこなせるのかわからないのに、非現実的だとわかっているのに。みんな俺のことを考えてくれて申し訳ない気持ちだ。俺にできるのか?冒険者ムラセは全国、いや全世界の強力なモンスターを倒し、世界を救っている。なにも可能性がないわけではないし、先例もいる。俺はきっとできるはずだ。まだ食事やちょっとした物を出すことはできるが、異能力を意図的に使うことはできない。これまで使えた時はあの竜人族の時の木の葉の渦巻きだったな。俺が無意識に使ったのだ。ヘンリーさんの盾でも防ぎきれなかった気功玉だったが、その木の葉の渦が守ってくれた。その時くらいだ。どうすれば使いこなせることができるのだろう。これまでは偶然だった。自分が心の中で願ったのかもしれないけれども。冒険者ムラセに出会うことでができたら、俺の世界は確実に変わるはずだ。彼は自分と同じ日本から来た可能性が高い。それにボイスリアクトを使いこなせているらしい。それに比べ俺は使いこなすことができない。この差は歴然だ。だが、彼に会って使い方のコツを学べるのかもしれない。オリビアはあのとき自分に世界を救ってくださいと言ってくれた。俺は必ずこのアイテムを使いこなせるようになるぞ。
「今から案内します。ついてきてください」
先導するオリビア。それについていく俺たち。結構な人数のパーティーなので街では目立った。サルトが大男なのもあって、結構目立ってしまった。だが俺たちはオリビアについて行った。大通りを左に、狭い路地を右に、広場から延びる坂をひたすら上った。
「まだですかオリビアさん」
「もうすぐです」
「坂を上るということは絶景が待ち受けているだろう。楽しみだ」
「はあっはあっ」
長い坂を上り終えたところ、オリビアの一声で坂は素晴らしい景色に様変わりした。
「ここです。どうでしょう?きれいでしょう?」
夕日が海に反射してとても幻想的な風景になっていた。もうすぐ日が暮れそうな時間でタイミングが良かった。オリビアはもしかすると計算していたのかもしれない。夕日が建物の壁に赤い光があたり、赤い光に照らされた壁がそこら中にあった。海と夕日のコントラストが見事だ。俺はこの夕日を仲間と見れてよかった思った。この仲間と一緒にこの世界を攻略していくぞと俺は決心した。彩子の隣でこの幻想的な景色を見ることができてとてもうれしかった。オリビアさん、ここに連れてきてくれてありがとう。
「この景色、私とても好きなんです。いつか仲間を連れてここに来たかったんです。だからこれてよかったです」
「ここに読んでくれてよかったです。ありがとうございますオリビアさん」
「いいえ。私がここに来たかっただけですから」
智也とオリビアが話している中、アルフィーはいつの間にかスケッチしていた。この景色を残すぞと言わんばかりに。アルフィーの後ろにサルトがいたのだが、なにやらアルフィーの絵に興味があるようだ。
「この絵すごくいいな」
「そんなすごくないよ」
「いいやすごい。俺には描けない」
「これくらいの絵描ける人たくさんいるよ」
「そうか?」
二人は普段通り仲良く話している。ウォーラーはオリビアの後姿をじっと見つめている。立派になったなあと感じている。パーティーは宿屋に移動した。ファシーは早く智也の出すご飯を食べたくてうずうずしているようだ。そろそろ夕食の時間なので、智也がボイスリアクトで食事を出した。今日はカレーライスだ。智也は長年の成果で辛さの調整も多少はできるようになっていた。
「クリエイト......カレーライス」
するとあらかじめ用意したテーブルに10個のカレーライスが出現し、皆その光景に感動した。
「改めてみるとすごいな智也。こんなものも出せるとは」
「そんな褒めないでくださいよ」
「おいしそうだな智也」
ファシーが今にもカレーライスに飛びつきそうにしていた。
「いただきます」
ファシーがまず初めにカレーライスに手を付けて一瞬で食べ終わった。
「おかわり智也!」
「はやいなファシー。俊敏性が高いだけでなく、食べる速度も速いんだな」
「大好物を目の前に躊躇してられるか、早くおかわり智也」
「わかったよ」
ファシーと智也のやり取りを見てパーティーの皆は笑みを浮かべていた。
「にぎやかになったなあ」
「そうね」
皆食事を終えると明日の海の街ファートルの散策に向けてウキウキしながら寝るのであった。




