荒野
レグレド荒野で一晩を過ごした。今晩、何もなかったがいつモンスターに襲われるかわからない。智也のパーティーは進み続ける。高耐久のバンドーロに知性が高いタリュード。どちらも厄介な相手だが、サルトがいれば安心だ。ただ、サルトが対応できないモンスターが急に出現するかもしれない。オリビアはサルトでも対応できないモンスターの出現を危惧しているのだが、それらのモンスターが出現する率は限りなく低い。基本、未開拓領域にいるモンスターなのだが、この荒野は前とは明らかに違う。モンスターの凶暴性やステータスが上がっているのだ。いったい何が起きているのだろう。智也や彩子はこの世界に来てからあまり長くはいないのでわからないが、オリバーやウォーラーは長くこの世界で様々なモンスターと出会ったりしてこの世界をよく知っている。だが彼らには何が起きているのかわからない。ベテラン冒険者が分からないのだから、智也や彩子はどれだけこの現象が不気味か判断できない。この荒野は数年前と比べて大きく変わっている。何がこの荒野を変えたのか。強力なモンスターの出現か、または裏の世界で何かが起きているのか。それはほとんど誰も知らない。知っているものは当事者だけだ。これは人為的なものか、それとも世界の現象なのか。智也はこの世界の異様な光景を見て、固唾をのんだ。この裏には何が起きているのか。異次元のステータスを持つモンスターが生み出されたのか、それ以外か。智也らにわかることはこの荒野には何かがあるということだ。オリビアはそのことは何となく感じていた。先頭を歩くオリビアは少し身震いをしていた。でも自分が先導しないとという使命感を感じていた。オリバーはオリビアを見守るようにそばについていた。夜が明け、朝がやってきたがモンスターは今現在はいない。このまま進んでいこうとオリビアは考え、オリビアらパーティーは歩きだした。皆はオリビアの後をついてきている。ウォーラーたちは昨日のモンスターの凶暴性を感じ取って、少し身構えて歩いた。智也は自分の出番が来るということを心の中で喜んだのだが、昨日のモンスターを思い出して、何とも言えない気持ちになった。自分のステータスは低く、いつモンスターに襲われ、命を落とすかわからないのだ。それはオリビアやアルフィーも同じだ。しかし智也は自分の能力をやっと使える立場になりそうだと嬉しそうにしていた。アルフィーはサルトのそばからついていた。いつモンスターに添われるのかわからないからだ。サルトはそばにいるアルフィーを見て、絶対守ろうと決意する。この荒野は前と同じく荒野エージェイルと同じような違和感をおぼえる。そうサルトは感じていた。ウォーラーは警戒しながら荒野を歩く。それはほかの王国騎士と同じだった。このパーティーを絶対に守って見せる。そう思いながらウォーラーたち王国騎士3人衆は荒野を進んだ。そしてしばらく進むと、大きなモンスターが出現した。よく見てみるとバンドーロだ。1体だけだった。サルトがバーンスラッシュを2発放って倒した。モンスターに対する素早い処理で、智也はサルトの強さの片りんを見て心を打たれた。俺もいつかこのような強い冒険者になりたいと思った。オリバーはオリビアを見守っているうちにサルトが一瞬で倒したので、驚くことも許されなかった。オリビアから見て左に出現し、オリビアが左を見たが、彼女が見たのは、一瞬のうちに倒されたバンドーロだった。動き出そうとすると、もう一体のバンドーロが出現した。しかし、そのバンドーロは他よりもはるかに小さかった。ひとまずサルトがバンドーロめがけて必殺技を放ったが、それを軽くかわした。その直後、バンドーロがオリビアめがけて一瞬で飛び込んできた。間一髪にオリバーが攻撃を受け止め、跳ね返した。
「なんだ、この速さ」
智也は驚いた。彼と同じようにパーティーの皆は驚いた。サルトの攻撃をかわしたことに何よりも驚いているようだった。
「サルトの必殺技はステータス2000越えのモンスターや冒険者を葬るほどの業だぞ。みんな、気をつけろ
その後、バンドーロは変形し、一瞬のうちに変幻のバンドーロの形になった。その名は数年前、ある一つの町を滅ぼしたとされるモンスターの名だ。その町にはステータス2000を超える冒険者はいなかったが、1800や1900を超える冒険者は何人かいた。それにそこそこの規模の町だったので、冒険者は100名以上いた。だが倒しきれず、結局、ステータス2110の剣聖が倒したようだった。しかも、とある剣聖は腕の一つを負傷した。そのモンスターの名は変幻のバンドーロで、幻をつかさどり、当たる攻撃を当てられないのだ。剣聖がどうやって倒したのかは知られていない。
「あれは変幻のバンドーロだ。みんな、気をつけろ。攻撃力は低いが普通のバンドーロよりははるかに上だ。スピードも速く、それに幻を使って攻撃を当てられないんだ」
ウォーラーがそういうと、変幻のバンドーロは一瞬でウォーラーの前にやってきて、一撃を加えようとしたが、サルトが受け止め、はじき返した。その後。サルトが攻撃を当てようとしたが、なかなか当たらず、後ずさりをした。
「あのモンスターを倒す方法はあるんですか?」
「倒す方法は分かりません。とある剣聖が倒したんですが、どうやって倒してのかはわからないんです。脅威度はSランクで最上級のモンスターです。ファイアドラゴンの脅威度はAです。ですが防御力はドラゴンのほうが上なので何回か攻撃を与えられれば倒せるかもしれません」
バンドーロは一瞬でオリビアに後方に出現し、オリビアに攻撃しようとした。しかし、オリバーが攻撃を受け止め、はじき返した。するとバンドーロは牙をパーティー全員の下に出現させた。その牙は普通のバンドーロに比べれば明らかに鋭く、長くなっていた。それに範囲が全員に広がっていた。しかしサルトが全員の足元に出現した牙をすべて切り飛ばした。
「ありがとうございます。サルトさんがいなければ今頃パーティーはどうなっていたか。明らかに撤退でした。いや撤退すらできなかったかもしれません」
「いえ、俺はこのパーティーを海の街ファートルに送り届けることですから」
サルトは照れながら、バンドーロのほうを向いた。サルトは必殺技を連射した。
「ブウウウウウン、ブウウウウウウウン、ブウウウウウン」
3回必殺技を放った。しかし幻のようにバンドーロはかわし、サルトの攻撃は当たらなかった。
「確かに当たったはずだったが。どうしてあのスピードでかわせるんだ」
直後、バンドーロはもう一度パーティー全員の下から牙を出現させたが、サルトが全部切り飛ばした。バンドーロは一瞬でサルトの後ろに出現した。
「あそこにいたはずなのだが、一瞬で俺の後ろに。まるで幻を見ているようだ」
サルトは必殺技では当たらないことを悟り、直接剣で当てようと試みた。サルトは一瞬でバンドーロの元へ移動すると、バンドーロはもう一度幻を見せようとした。攻撃はサルトには当たっているように見えたが、攻撃は外していた。
「そもそも俊敏性が高い上に幻を見せてくると、当たるわけがない」
サルトはもう一度バンドーロの後ろに移動し、何とかして当てようと素早く切ろうとしたが、間一髪でかわされてしまった。
「先読みをしてみよう」
サルトは今度も真後ろに移動し、幻を見る前に移動しそうな方向に剣を振った。しかし、攻撃はなぜか当たらなかった。
「これが変幻のバンドーロ。範囲攻撃にとにかく攻撃が当たらない。じゃあ今度は両方向に攻撃をするだけだ」
サルトはバンドーロがかわせないように両方向に必殺技を放ち、自分は真正面で一刀両断しようと試みた。しかし何度しようと無駄だった。今度もサルトは全方向に必殺技を放ち自分はバンドーロの後ろに移動し、目をつむって何回か剣を振って攻撃した。しかし何をしても無駄だった。その後も何度も何度もサルトは試したが、ダメだった。サルトは考えうるすべての可能性を試したが、幻という表現が間違っているのではないかと疑いもした。だがこの国では変幻のバンドーロと呼ばれているので何らかの理由になっているのだろうと思ったが、結局何をしても変幻のバンドーロに一撃を与えられない。どうやらあの噂は本当だったようだ。変幻のバンドーロは倒せる相手ではない。とサルトは考えるのであった。しばらくお互いにらみ合っていたが、バンドーロはサルトに攻撃を仕掛けた。一瞬でサルトに懐に移動し、攻撃を仕掛けた。だが、サルトは攻撃を受け止めた。直後、バンドーロは手がつかまれているまま足を使って攻撃を仕掛けた。攻撃は重くサルトには多少のダメージにはなったが、大きなダメージにはならなかった。次の瞬間、バンドーロは2本のとても長く鋭い牙をサルトの足元に出現させた。その直後、バンドーロは上にジャンプし、挟み撃ちした。だがサルトは一瞬で牙を弾き飛ばし、上からのバンドーロの攻撃を受け止めた。その後、サルトはバンドーロを足をつかみ、上に投げ飛ばした。そして必殺技を数回はなった。
「ブウウウウウウン、ブウウウウウウン、ブウウウウウウン、ブウウウウウウン」
「ブウウウウウウン、ブウウウウウウン、ブウウウウウウン、ブウウウウウウン」
合計8回放った、しかしバンドーロには一撃も与えられなかった。サルトはこのモンスターは倒すことができないと判断し、逃げ出そうとした。どんな攻撃も当てられなければ、倒すことができないからだ。一方、智也の願いをかなえたいと考えることもあった。じゃあどうすればいいんだ、とサルトは葛藤した。そのまま膠着状態とななり、数分が経過した。その後、バンドーロは手拳で攻撃を仕掛けたのだが、サルトに受け止められた。そのままサルトは地面にたたきつけようとしたが、地面に衝突する直後、サルトの手からバンドーロの足が消えてバンドーロは無傷の状態でそこに立っていた。
「どうなってるんだ。攻撃が当たらないとかいう話じゃないのだが。俺に変幻のバンドーロは倒せるのか?」
「サルトさん、大丈夫ですか?」
オリビアは心配そうにサルトのほうを見ていった。もちろん智也やアルフィーたちも心配そうに見ている。
「あの、オリビアさん、このモンスターは剣聖が倒したんですよね。それは知っているんですが、本当に倒したのでしょうか。今の俺には難しいのですが。剣聖にはなにか得意技があるんですかね」
「はい。どの剣聖が倒したのかはわからないんですが、確かに剣聖にはいろいろなスキルや特技がありますね。存在そのものを消滅させる魔法があるのかもしれません」
「いや、俺が戦った時、地面にバンドーロをたたきつける瞬間手からバンドーロの足が消えたんですよ。存在そのものを消滅させる魔法でも攻撃を受ける瞬間、その魔法すらかわす可能性もありますよね」
「その魔法は一例にすぎません。ほかに何かあのモンスターに攻撃を当てるにはいろいろな想像つかない技がるかもしれません」
オリビアがそういうとサルトが返答した。
「俺にバーンスラッシュ以外の特別な技はありません。俺ではこのモンスターには勝てません。逃げることを考えてくれませんか?お願いします」
サルトが手を合わせながらお願いし、オリビアも熟考した。
「わかりました。皆さん、ここから引きますよ」
オリビアがパーティーの皆にそういうと、ウォーラーはしょうがないと言いたげな顔で答えた。
「あのモンスターは教科書にも載っているモンスターだからな。俺たちでは無理なのかもしれないからな」
「わかりました。俺もオリビアさんの意見に賛成です。しかしどうやって逃げるんですか?」
「俺がおとりになる。俺がひきつけているうちに前に進んでください」
「サルトさんなしでこの荒野を動くのは危険ですよね。大丈夫なんですかね」
「大丈夫でしょう。私オリバーやウォーラーら上級冒険者に彩子さんがいるんですよ。それでどこで待てばいいのでしょうか」
智也は少し疑問に思いサルトに話しかけた。
「これを持っててくれ」
「これは何ですか?」
「これは俺の魔力が込めてある。これを持っていればよほど遠くにない限り居場所がわからないなんてことはない」
「じゃあこれを持ってあのモンスターに見つからない場所まで行けばいいんですね」
「そうだ。じゃあ行ってくる」
こうしてサルトがバンドーロに向かった。サルトがバンドーロを倒せない以上、このパーティーとサルトは離れるしかない。サルトが無事に合流できればいいが。オリビアらパーティーはサルトが合流するまでに無事に要られることができるのか。サルトは無事にパーティーと合流できるのか。




