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ボイスリアクト  作者: 夕村奥
第四章
42/42

信念

「起きろ彩子。朝だぞ」

「うーん」

一晩が明けた。早朝から出発することになっていたので智也が彩子を揺り起こす。智也は昨日彩子に指摘されたことを思い浮かべながら彩子を起こす。

「もう朝なのね」

声を聴いた彩子は智也の手を取りながら体と起き上がらせた。昨日の疲れが完璧に取れてはいないが、ぐっすりと眠っていた彩子は絶好調だ。

「これから行くのね」

「おう」

あと3日ほど荒野を歩くと、海の街ファートルだ。オリビアは腕を頭上に伸ばしストレッチした。彩子もオリビアにつられて腕を伸ばした。

「じゃあそろそろ行きましょうか」

オリビアがパーティーの皆に声をかけると昨日のように一番前で先導した。

「まだ荒野は続くんですか?」

「はい。あと3日ほどかかります。休憩しつつ向かいますので心配いりません。まあ、モンスターに襲われるかもしれませんが。じゃあ行きましょうか」

オリビアたちは野営地から出発した。荒野での旅は初めてではないが、この荒野が初めてのように感じた。オリビアはこの荒野を3日で駆け抜けるつもりだ。皆も彼女についていく。オリバーがついていて彼女は強気だが、討伐できないモンスターが出現するかもしれない不安がウォーラーに付きまとう。昨日のタリュードが狂暴になっていたのも何らかの原因があるとウォーラーは踏んでいる。サルトも先日のバンドーロが複数出現したり、ホワイトリザードが獰猛になていたり、気がかりな事があって、不安が付きまとう。前を歩くオリビアもモンスターが活性化し、獰猛になっていたことを思い出し、信仰と一度止めた。それほどまでに先日の事象が多大なショックになっていたのだ。オリビアらは歩き続ける。「ちょっと止まってください。モンスターの気配がします」

「そこですかオリビアさん」

彼女がモンスターを察知し、オリバーやサルトたちは警戒した。すると3匹のホワイトリザードが彼らの目の前に出現した。

「ホワイトリザードです。それも3匹。気を付けてください」

「おうよ。オリビア。オリバー、オリビアを任せた。サルト、モンスターを攻撃してくれ」

ウォーラーが指示を出す。オリバーは即オリビアの周囲をホワイトリザードから守り、サルトは剣を大きく振りかぶった。

「ドオオオオオオオン、ドオオオオオオオオン、ドオオオオオオン」

サルトの斬撃は一匹ずつ、ホワイトリザードを倒していった。3匹のホワイトリザードは戦闘不能になった。

「ふう。今回も何とかなったか」

サルトの荒野での活躍は目を見張るものがあった。オリバーはオリビアを守り、サルトが攻撃、周りのメンバーを守る。二人はこのパーティーが進む上でとても頼りになるメンバーだ。オリビアは再び、荒野を歩き出した。その後も様々なモンスターに襲われたがサルトがことごとくを撃破した。しばらくして休憩することになった。

「これまでモンスター。明らかに様子が変ですね」

「おう。俺もさっきから変だと思っていたんだ。モンスターと遭遇する回数が多すぎる。何が起きているのだろうか。俺にわからないが、きっとまずいことが起きている。強力なモンスターだって出る可能性が出てきた」

「それはサルトさんが前、フェリル山で交戦したモンスターですか?」

「そうだ。あのモンスターは未開拓領域で生み出されたモンスターだ。だからとても強力なんだ。だが今回のはそれ以上の魔物の可能性がある。ステータスだって2300を超えるかもな」

「俺もそう思います。俺のステータスは2070ですが、2300以上となると一撃で瀕死状態です。おれでも全く歯が立たないでしょう」

「だったら遭遇したら逃げるしかないな。だが俊敏性が高ければ逃げられない可能性がある。だが心配はしていない。これまでステータスが2300以上のモンスターは俊敏性がそこまで高くないんだ。攻撃力、防御力はけた違いだが、逃げることはできる。だが、光線を発射したり、突撃したりするモンスターもいる。光線は一瞬で100メートル範囲のプレイヤーは一瞬で粉々に破壊する。突撃するモンスターは俊敏性が高い傾向にある」

「そうですね」

ウォーラーとサルトが真剣に話し合っていると智也が問いかけた。

「俊敏性が高いモンスターが出てくる確率ってわかりますか?」

「わからない。俺も昔書籍で読んだくらいだからない。でも確率はそう高くない。ドラルゴンと強力なモンスターがいたのだが、光線を吐き、ステータスが確実に2300以上だったらしい。突撃するモンスターも俺が知る限りだとステータスが2300以上のやつは複数いる。

やはりドリリオンやワガンダルが有名だ。どちらもステータス2300以上だ。どちらも突進を得意とするモンスターだ。一撃で大きな木を薙ぎ払い、巨大な岩石を粉々にするらしい。山を吹き飛ばすほどのものではないが。だがステータス2300以上は人間界には存在していないのだがな。だからおおよその値で示されいているんだ。ちなみに一撃で山を破壊するモンスターも存在する。イルグスだ。ステータスは2500以上で伝説のモンスターだ。今、そのモンスターと対峙できる唯一の存在はこの国で冒険者ムラセだけだ。そのモンスターは必殺技、破壊光線を持っている。ドラルゴンも持っているのだが、イグルスは規格外の攻撃力で、山を一つや二つ破壊することができる。この攻撃を防ぐことができるのは冒険者ムラセの風壁だけだ。それほど危険なモンスターなんだ。世界にはイルグスの攻撃を防ぐ冒険者や騎士も何人かいるようだが、この国では冒険者ムラセだけだ。幸いイルグスというモンスターは誰も倒すことができずに封印されているが。しかしいつ封印を破り復活するのかはわからない。覚えておいてくれ」

「そうなんですね」

智也は二人の話を聞いて驚いた。世界には俺には創造のできないモンスターや冒険者がいるのだと感じた。ステータス2500。智也にはその数値を聞いて恐ろしさで鳥肌が立った。これから旅をしてボイスリアクトを使いこなせるようになったら、その領域にたどり着くことはできるのだろうか、智也は頭の中で思い浮かべるのであった。

「ではそろそそ休憩しましょう。皆さま、疲れましたよね」

オリビアがパーティーの皆に声をかけた。休息の時間だ。智也がテントと水、軽いおやつを出現させ、皆は休憩した。

「このおやつは私のものだ、智也!」

「ファシーはまだ食べるのか。これは俺の分だぞ」

「じゃあ出してらるからこれで我慢しろ」

「サンキュー智也」

ファシーは毎日智也に食べ物をおねだりする癖がついているのだ。智也は仕方なくボイスリアクトでクッキーを出した。

「クリエイト・・・・・・クッキー」

ファシーは満面の笑みでそのクッキーを口へ放り込んだ。

「おいしー智也。サンキューな」

「今度はやらないぞ」

智也とファシーは仲が良く、パーティーの皆は元気づけられている。しばらく休息し、荒野を再び動き出すころ、皆は異常な光景を目の当たりにするのだった。

「モンスターが出現しました。バンドーロ3匹です」

「3匹もか?どうなっているんだ?」

3匹のバンドーロは遠距離の地面から牙を出現させ、オリビア、アルフィー、智也の直撃しようとしたが、サルトがアルフィーと智也に一直線に向かう牙を、オリバーはオリビアを抱きかかえて、宙を舞った。

「お嬢様!」

「タタッ」

「ギイイインッ、ギイイイインッ、ギイイイイイインッ」

たたみかけるように、1匹のバンドーロがオリバーの着地点に牙を複数出現させ、傷を負わせようとした。もう1匹のバンドーロはサルトの足元から複数の牙を出現させサルトに傷をつけようとした。その間、もう1匹のバンドーロがアルフィーと智也の地面から牙を出現させ、オリバーが着地と同時に傷を負わせようと、サルトが飛んでいるうちにアルフィーと智也に牙が刺さるように連携した。だがオリバーは着地点に目を研ぎ澄まし、牙の出現と同時にそれを切り倒し、着地した。サルトは牙を見るや否や一斉にそれらを切り倒した結果二人は無事だった。

「ありがとうございますサルトさん」

サルトは危険にさらすと思い、3匹のバンドーロめがけて必殺技バーンスラッシュを放った。

「ドオオオオオオオン、ドオオオオオオオン、ドオオオオオオン」

「もう一回!」

「ドオオオオオオオン、ドオオオオオオオン、ドオオオオオオン」

サルトが大きく振りかぶった直後、サルトアイの化身が3匹のバンドーロめがけて突撃し、3匹のバンドーロは倒された。

「なぜ3匹のバンドーロが。荒野エージェイルよりも危険だぞこれ」

「何が起きているんだ」

無事に3匹のバンドーロを倒したのはいいが、このまま荒野を進み続けていいいものか悩むウォーラーやサルト、そしてオリビア。

「ちょっとこのまま進むのは危険かもしれませんね」

「はい。私が前通行したときは先ほどのように3匹のバンドーロの出現、獰猛なモンスターの出現率は低かったです。このまま進むのは危険と思われます。

額に手を当てながらオリバーは言った。智也はどうすればいいのか悩んだ。このまま進み続けてパーティーを危険にさらすのか、引き返して安全をとるのか。後者であれば公開するだろうと思ったが、安全には代えられないと思い。智也は引き返そうと申し出ようとした。

「安全じゃないのは変わりありません。ですが智也さんが旅をしたいと思い私たちは同行しているのです。それに今引き返したら絶対に公開します。あとから又チャレンジすればいいと考えても、それがいつになるか。私はチャレンジするべきだと思います」

オリビアは勇気を振り絞りいったのはこの言葉だった。ここで諦めればきっと後悔する。そう思い、皆は進むべきだと申し出た。

「そうだ。進むべきだ。ここで諦めるなんて智也についてきた甲斐がない」

「智也の旅についていくといたのは俺たちだからな」

サルトやウォーラーたちからも応援の声が智也に届いた。一度諦めようとしたが、皆がこう言っているんだし、ここで諦めるのはよくないなと思い、智也はオリビアに自分の気持ちを伝えた。

「俺、ここまでみなとこれてよかったです。できれば進みたいと思っています。

智也は初めてパーティーの皆のことを信用した瞬間かもしれない。オリビアも賛成し、再び荒野を歩き続けるのであった。


智也はいつも自分で背負って周りになにも話をしない。何度言っても智也は一人で考えて一人で解決しようとする。それはよくないことだが、どうしても変えられないのならしょうがないと思う。でも私は智也の助けになりたい。一人で悩んでいるのならどうして悩んでいるのか聞きたい。でもあまり干渉しすぎてもよくないことは分かっている。でも助けになりたい。智也は私のことをどう思っているのだろうか。心配しすぎてもよくない気がしている。彼には自分の信念があって、だから自分一人で解決したほうがいいというのも分かっている。でも悩みすぎても物事は解決しないことも分かっている。であればどうすればいいのだろうか。結局自分自身のことは自分で考えるほうがいいと思うがでも、彼の考えていることが気になる。こんな私でも智也は思ってくれているのだろうか。私は智也のパートナーとして、ちゃんとやれているのだろうか。

「よう彩子。どうした?」

「いいえなんでもない。オリビアさん、智也になんて言ってた?」

「俺の要望通り、荒野を進行するみたいだぜ。サルトさんやウォーラーさんたちも賛同してくれたんだ。うれしいぜ。まだ旅ができることに。でも不安だ。俺が行くって言ったせいで犠牲が出ないか。もし犠牲者が出た時何を言えばいいのか」

「もう、今考えてもしょうがないことはやめようよ。それよりも今できることを考えましょう」

「そうだな」

「そうよ」

荒野の旅はまだまだ続く。獰猛化し、数が増えたモンスター。この荒野で一体何が起きているのだろうか。今だ誰も理由を突き止めたものはパーティーにはいない。レグレド荒野の異変。突き止めるものはいるのか。奇妙な光景を目撃したオリビアたち。荒野は以前より危険で、様々な発見がある。トラップのようなものはないが、敵は多く、活性化したモンスターの恐ろしい行動に目を見張ったオリビアたち。彼らの行く末は。




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