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ボイスリアクト  作者: 夕村奥
第四章
39/42

経験

街道を出発した智也らパーティー。所要時間は5日ほど。だいぶ長い旅ではあるが食料などはすでに調達づみ。防具やポーションなどの事前準備もばっちりだ。智也らは長旅で疲れている。しかし留まってはいられない。冒険者ムラセに会ってこの世界について知っていることを教えてもらうことが智也の第一目標だ。彼以外にもボイすリアクターはいるし異世界人だっていると思うが、なかなか巡り合えない。また、彼以上に経験を積んだ異世界人、またはボイスリアクターはなかなかいないだろう。また、ボイスリアクトは貴重品でギルドやや盗賊だって喉から手が出るほどほしいものだ。見知らぬ人に教えるわけがない。彼であればボイスリアクターであることは知れ渡っているから、きっと話をしてくれるだろう。智也は話をしてくれることを期待している。彼でなくても、ボイスリアクターとして教えてほしいに決まっている。だから旅をして情報が欲しいのだ。何も動かなければ情報はこない。なにか行動しなければ情報を得るのは難しいだろう。この世界では情報を取引材料にするという文化があるらしい。何らかの有益な情報を金銭や物などで取引しているのだ。それがボイスリアクトであっても同じだ。この世界は情報というのがとても高く評価されているのだ。智也はボイスリアクトを所持しているのを隠しながら生活しているが、その理由は何より狙われるからだろう。この世界は盗賊や悪いギルドが多く、人にやすやすと情報を与えて盗賊や悪いギルドに目をつけられたら何をされるかわからないというのがある。もし盗賊の中に智也を襲って高価値のボイスリアクトをとってしまえば、すぐに売り払って人生を謳歌するだろう。だから智也はなるべく人にボイスリアクトを所持しているという情報を与えようといはしない。智也が異世界にやってきて、初めの街に来た時、ボイスリアクトを探しているという情報がギルドに書かれていた。それはそれだけ貴重なものだから必要とされているのだろう。そのまま智也はボイスリアクトを所持しているとギルドに報告すればよかったのかもしれない。だが、情報が洩れれば盗賊や悪いギルドに狙われるほそれがあり、それが彼を苦しめているのである。だが智也が懸念していることはそれだけではない。智也はボイスリアクトというのが悪人の手に渡ってしまうことを恐れているのだ。悪人が好き勝手ボイスリアクトを使い村や町を襲撃したり、商人の荷物を狙って大規模な攻撃をかけることもあり得るのだ。使いこなせるかどうかは分からないが、智也はそれについて気にしているのである。彼は自分の信用のおける相手にしかボイスリアクトを見せていない。オリビアやアルフィー、彩子などだ。もちろんオリバーやサルトなどを信用していないわけではなく、ただいうタイミングを逃し続けているのだ。オリビアは智也のボイスリアクトに強い興味を示し、彼を守り抜くと誓っている。オリバーはオリビアの護衛をしているのだが、おリビアはオリバーに智也さんたちを守るように命じられている。今はパーティーメンバーではないが、ヘンリーだって智也たちを一生懸命守ろうとした。その思いは今でも変わっていないだろう。智也はみんなから守られていることには気づいていない。オリバーやオリビアやヘンリーだけでなく、サルトやウォーラーだって智也を守りたいと思っている。サルトは智也見てからというもの、一緒にいたいという気持ちが強くなった。智也は皆に愛されている。しかし、智也が能力を発揮するときは仲間を守りたいときだったりする。もしかするとみんなの気持ちが智也に届いているのかもしれない。ウェーゼから街道を進み、荒野を抜け、海の街ファートルを目指す。パーティーはみな周囲を警戒しているが大きな街道は警備が厳重で盗賊などには襲われにくいので軽く警戒しているくらいだ。大きな街道を歩く限りはモンスターや盗賊に襲われる気はしなかった。一日街道を歩くと、そこでの野宿しようとしたが近くに町があったので宿を借りることにした。

「この宿すごくにぎわっているね。ウェーゼから延びる街道に隣接する街だからかな」

アルフィーのテンションが上がっている様子だった。しかし昼から歩き続けているせいか、空腹な様子だ。

「じゃあこの宿でご飯でも食べるか!」

「僕も」

「俺も」

「私も食べたいです!」

パーティーのみんなは空腹だ。飯はまだかまだかと待ってるうちに何やら豪華な料理が出てきた。魚の料理と山菜の料理だ。そのほかにも肉にハーブをきかせた料理もたくさん出てきた。

「それではいただきます」

智也はあまりにも空腹で一番乗りに食べようとしたのだが、先に食べたのはファシーだった。

「いただきまーす!」

「おいファシー。これは俺の分だ」

「いや私のだ。返せ」

二人はいつも通り賑やかだが、サルトやアルフィーやオリビアなどは黙々と料理に集中していた。こんな風景はなかなか見られない。しばらくするとテーブルに会った料理がなくなっていた。みんなで完食したということだ。

「ごちそうさま」

そういうとオリビアとオリバーが先に宿の自分の部屋のほうへと戻っていった。

「おいしかったな、智也」

「おうよ、ファシー。だがお前食べるの早くないか?」

「おまえだってがつがつ食べてたろうが!」

「なに!」

「なんだと!」

智也とファシーはいつもながら仲がいいのか悪いのかわからない一方で、サルトとアルフィーは静かだ。

「じゃあ俺部屋戻るよ」

サルトがアルフィーに挨拶をし宿のほうへ歩いて行った。宿は2階なので階段を上り、部屋に入った。ちなみにサルトとアルフィーは同じ部屋だ。

「そういえばウォーラーさん。この町の特産品ってありますか?」

「個々の特産品はひょーどろだな。細い紙に形や色を付けて、願い事を一つそこに書く。好きな色を一つ選んで願いごとをするんだ。楚の願い事は大体1パーセントくらいは本当にかなっているらしいんだ。

「そんなばかな。願い事がかなうなんておとぎ話じゃないんですか?」

「それがこの町の明かされていない風習なのさ。智也もお願いしてみないか。

「俺は願い事よりも自分でかなえたいと思うほうなんでいいですよ」

「そうか。俺はもうお願いしてきたぞ」

「どんなお願いですか?」

「オリビアと仲良くなれますようにって」

「今でも仲いいじゃないですか?」

「できればもっと仲良くなりたいと思っているんだ」

「ふざけてますよね」

「まあな。俺だって願い事の一つや二つあるんだよ」

智也はちょっぴり声を出して笑った。こんな日は久しぶりだ。

「俺は自分よりも世界がどうだとか、なにができるだとか考えている人だけど、身近な人の話で笑うのっていいな」

ウォーラーも智也の笑いにつられて笑った。

「じゃあ俺部屋戻るわ」

「ありがというございました」

ウォーラーは部屋に戻った。智也も戻ろうとしたところ、彩子が話しかけてきた。

「おう。204号室だな。じゃあ戻ろうぜ」

「私も一緒には入らせて!」

「だめだ、 ファシー。二人部屋なんだ」

「残念」

智也たちは明後日街道を抜ける距離におり、みな明日に備えてぐっすりと寝た。一晩が明け、早朝、街を出発した。これからどんなたびになるのだろうか。盗賊は昨日まったくみんなの前には出なかった。明日も出なければいいと思う智也。今日は盗賊が出るのか、出ないのか。しかし街道よりもはるかに危険度が増す荒野を通らなければならない。皆、明日には抜ける街道よりもはるかに危険な荒野を抜けなければならない。だが気を付けていればきっと乗り越えられるだろう。なぜなら彼らは何度も困難を切り抜けてきたからだ。荒野ではきっと街道のように安全な道ではないだろう。だが進み続けなければきっと後悔するだろう。そう思って智也らは街道を進むのであった。

「やっと荒野の入り口についた。俺たちはまずどこへ進めばいいんですかね?」

智也がオリビアに尋ねた。

「この荒野はレグレド荒野と呼ばれていてエージェイル荒野と同じように、強力な魔物が複数出現します。例えばバンドーロ。この魔物は土属性で牙を地面から出現させるモンスターです。広範囲に攻撃する場合もあるので注意が必要です。攻撃力はあまり高くありませんが遠距離攻撃にたけたモンスターです。そのためステータスが1780もあります。次の危険な魔物はタリュードです。俊敏性が高く、攻撃の頻度が高いです。防御力が高くても攻撃頻度が高ければかなりのダメージになるでしょう。この荒野は迷いやすいので注意が必要です。でも私はこの荒野は知っているので道は分かります。しかしこの荒野は迷いやすくて有名のなので私とオリバーから離れないでください。絶対に皆様をラーファルまで送り届けます」

「ありがとうございます。頼もしいです。俺と彩子だけだったら何度も迷っていた気がします。あの時もヘンリーに助けてもらいました」

「ヘンリーさんはすごく頼もしい方だったんですね」

「そうです。俺もあの旅でヘンリーさんのこと知れてよかったです。でもリュゴン村というところで離れ離れになって」

「あの襲撃事件ですか?道中知らせを見まして」

「リュゴン村にローブを着た男が襲撃して、召喚魔術を使う人だったと思うんですけど、瀕死の人が数十人に上ったとか。幸い死者は出ていなかったようですけれど、それ以外の情報はないです」

「本当ですか?それであのローブの男は?」

「十数人の冒険者と交戦し、しばらくして去ったようです」

「死者だけですか?モンスターが死んだとかは聞いてませんか?」

「私の知りうる情報はそれだけです。詳しいことは分かりません」

智也は死者はいないと聞いてうれしかったが、モンスターが死んだという可能性はないのか疑った。もしかすると死んでしまったのかもしれないと考え困惑した。本当に大丈夫なのか。冒険者ヨシキは無事みたいだけど、ヘンリーは。智也は今すぐにでも情報が欲した。「誰でもいい。ヘンリーの情報を」。と。


ヘンリーはどうなったのだろうか。おれは頭の中がヘンリーのことでいっぱいだった。ヘンリーは今どうしているのだろうか。彼は強いから大丈夫だと思っているが、考えれば考えるほど悩んでしまう。どうすればヘンリーに会えるのだろう。もう一度会いたい。俺はそう願っているのだが、もし生きていたとしていったいどこにいるのか。どこなのか見当がつかないが、むかしヘンリーがよくいた場所なのかなとは思っているが、結局のところ分からない。あの町で待っていればよかったのか。それは生きていたとしての話だが。あローブをかぶった男はとても強かった。規格外のモンスターを出現させたことや、とび膝蹴りでヘンリーの強力な盾を二つ破ったことや、冒険者ヨシキに何度も攻撃されたが、戦い続けられていた。それにあの時のヘンリーの顔。間違いなく怒りと動揺の顔だった。きっと前に何かあったに違いない。俺はそう思った。だがヘンリーに聞いてみないとわからないことだらけだ。ヘンリー、一度でいいから、会いたい。そして昔のように3人で旅をしたい。いや、今のパーティーに向かい入れて一緒に満足するまで旅をしたい。よし、これをあの町にいつか戻って願い事として書こう。いつかきっと、ヘンリーたちと一緒に旅に出ようと。そしてたくさんの発見と多くの経験を積んでヘンリーの言う立派な冒険者になって見せると。これは二つのお願い事だな。二つは欲張りなのかもしれない。でも俺はかなえたい。いつかきっと。

「じゃあ荒野を抜けましょう。大丈夫です。私についてきてください」

オリビアはパーティーの全員に声をかけた。すると智也のパーティーは前よりの一体感があった。智也は昔のことを思い出して感傷に浸っていた。それに気づいた彩子は不安そうに言った。

「あなたまた考え事してるの?」

智也はハッとなって現実に戻された。

「大丈夫だぜ、彩子」

こうして智也と彩子、オリバー、オリビア、ウォーラーたち、ファシー、サルト、アルフィーは荒野レグレドへ歩を進めるのであった。



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