困難
これから俺たちが向かう街道には盗賊が待ち構えているらしいがステータスを聞くだけじゃサルトさんがいるから大丈夫だろう。それよりも荒野のほうが危険だ。何か目印があればいいのだが荒野は方向感覚が狂う。一度通ってはみたが木などの目印がなく、経験豊富なオリバーさんたちがいても遭難する可能性もある。また、バンドーロやタリュードなどのモンスターのステータスもそこそこ高くステータス的にサルトやオリバーたちがいれば大丈夫な気がするが、油断は禁物だ。バンドーロは土属性のモンスターで牙を地面から出現させるらしい。どれくらいの範囲で出現させるのかはわからないが、遠距離範囲攻撃だったら面倒だ。ステータスが俺は570しかないし、アルフィーはもっと低いし、オリビアだっている。バンドーロが攻撃する前にサルトやオリバーが倒してくれればいいのだが、もし倒せなかったりすると危険だ。だが俺たちは進み続けるしかないのだ。まず同じ異世界から来たであろう冒険者ムラセに会って話を聞きたいと思っているのだが、まだ会えていない。一度もあったことはないのだが、いったいどんな人なのだろう。俺たちよりはるかに強いというのは分かるんだが、性格はどうなのだろう。様々な場所に出現する強力なモンスターを倒しているらしいから優しい人なのだろうけど、俺にはわからない。だがいろんな話を聞きたい。同じ異世界人だから共感する話もあるはずだ。異世界人ならではの悩みだとか思い出だとか語り合いたい。同じ境遇なのだから俺が今必要な情報だったりとかわかるはずだ。俺たちはなぜこの世界に来たのか。なぜ俺はボイスリアクトを持たされたのか。このアイテムでどんなことができるのか。元の世界に帰る方法はあるのか。だが俺はこの世界の役に立ちたい。せっかくこの世界に来たのだから、何らかの形でこの世界が危険に陥っているようだがら、モンスターを倒したり、ボイスリアクトを使ってこの世界を少しでも変えていきたい。このボイスリアクトには世界を構築する力があるらしい。ウェダーボイスリアクトも同様だが、ウェダーボイスリアクトは何度も生み出すことができるらしい。ボイスリアクトでも生み出すことはできるが、各々の経験によって生み出される場合が多く、創造値によるものらしい。だがウェダーボイスリアクトは誰でもなんでも生み出すことができるらしい。それに世界の価値観を変えてしまうことだって普通のボイスリアクトよりもはるかに簡単だろう。俺はそれほどのアイテムだと聞いている。それ以外の情報はおれにはわからないが、俺は世界を構築したい。そして彩子を驚かせたい。これからの旅は長そうだが、彩子はついてきてくれるのだろうか。だが心配いらないぞ彩子。俺はきっとすごいボイスリクターになって世界を変えて見せる。見ててくれ。そういえば、マリーさんにギルドに来るように誘われてなかったっけ。たしかネタガトンデというギルドだったっけ。俺がボイスリアクトを持っていると知っている一人だ。彼女は冒険者ムラセを知っているようだった。俺もいつか冒険者ムラセのようなすごい冒険者になりたい。
「そういえばマリーさんのギルドに誘われていたよな。一回行ってみないか?」
俺はパーティーのみんなに問いかけた。
「そんな話だったんですね、前に列車の中で見知らぬ女性と話していてて、その人のギルドですか?」
「はい。そうです」
オリビアはそれを聞くと嬉しそうに歩幅を大きくした。
「では行きましょう。確かネタダトンデというギルドでしょうか?」
「いいえ、ネタガトンデというギルドです。俺はそのギルドのマリーさんに誘われたんです。冒険者ムラセという人を良く知っているようでしたので、何かの縁だと思いまして、行くことにしたんです」
「俺たちもついて行ったほうがいいか?」
サルトが俺に問いかけた。
「俺が誘われたみたいなので無理についてこなくて大丈夫ですよ。俺だけで行くのも全然いいですよ。待ち合わせしましょうか?」
「それは悪い。俺たちもついて行きたいんだ。智也が誘われてるんだったらそのギルドを見ておきたいんだよ」
サルトは俺に何かいいところでもあるのだろうか。ずいぶん俺に興味を持ってくれている。
「ついて行ってもいいですけど、なにもないですよ」
「じゃあみんなでそのギルドに行きましょうよ」
「おー」
オリビアさんが嬉しそうに智也の顔を見上げた。オリバーは相変わらずオリビアの真横に立って危険がないか見守っている。アルフィーは智也の真後ろについている。ファシーは町中をじろじろと見ている。
「では行きましょう」
オリビアが号令をかける。そして俺たちパーティーの全員はマリーのいるギルドへ向かうのであった。
オリビアは馬車での移動に慣れてて、徒歩で移動するのは少し疲れているようだった。宿での休憩があるとはいえ山道を上り下りしたり街中を歩き回ったり、結構疲れているようだ。ファシーが全く疲れている様子は見せず、サルトも同様だ。だがアルフィーは疲れているようだった。
「マリーさんのいるギルドは?」
「ここです」
オリビアが指示したギルドはそこにあった。大きさ的にはウェーゼではそこそこにギルドで、俺は気分を高ぶらせた。屋根には銀色の装飾がされてあった。その上には銀色の竜の像がたてられていた。今にも飛び出しそうな雰囲気だった。なぜ銀色の竜なのだろうか。それはギルドの人に聞いてみないとわからないのだろう。俺は今にも空へ向かって飛び出しそうな銀色の竜に驚いていた。大きさがそこまで大きくない。重くはなく軽い素材を使っているようだった。ギルドの外壁や銀色の竜の像を見回し、ギルドの中へ入っていった。
「カララン」
「いらっしゃいませ」
「すみません。マリーさんはいらっしゃいますか?」
オリビアが初めにギルドのドアを開け店員に話しかけた。
「マリーさんですね。少々お待ちください」
「はい」
店員が中に入っていくとちょっとの時間が過ぎ、ようやくマリーが姿を現した。鉄道の中で見たマリーと服装が異なっていた。店員としての服装に着替えたようだった。
「お待たせしました。智也さん。智也さん。私たちのギルドに入ってくれるのですか?
マリーの目はきらきらと輝いていた。俺は少し悩んだが、このギルドに入ることに決めた。冒険者ムラセさんへの印象やボイスリアクトに対する理解が俺に決断を促した。
「では入らせていただきます」
「ありがとうございます!」
マリーは喜んでいるようだった。俺はいったいこれでいいのかわからなかったが、こういう経験も悪くないだろうと思った。それになんらかのギルドに所属することでこの世界に対する理解も進みそうだったからでもある。俺はこのままではいけない。この世界のことをもっと知って、俺自身のことだって知っていかないといけない。どうすれば俺は役に立つのか。どうすれば俺は…」
「大丈夫智也?」
彩子が再び俺を心配したみたいだ。いつも俺は一人で考え事をしている。まるで自分で自分を縛り付けているみたいだ。俺はなぜこんなに自分一人で悩むのだろう。でも彩子は俺のいつも悩んでいるとき心配してくれる。俺はそれがうれしいんだ。、だからこど俺は彩子に返したい。そう思っているら先マリーに話しかけられた。
「こちらの契約書に記入とサインをしてください」
「わかりました」
俺は契約書に俺の知りうる情報とサインをした。しかしボイスリアクトのことは書かなかった。マリーさんは理解のある人だったがギルドの全員がそういうわけではないと思ったからだ。俺はまだこの世界の人全員を信用していない。最初の街で俺はこの世界ことを疑問に思った。俺たち異世界人、または冒険者に厳しすぎるのではないかと察した。今の俺はこの世界のことを知らなさすぎる。俺はこの世界の事を知ってくためにギルドに入ることにした。このセ干拓があっているのか間違っているのかは誰にもわからない。
「ありがとうございます。では冒険者クエストについて話したいと思います。冒険者クエストは様々な人からの依頼をクエストとして受注します。例えば鉱石の採取だったり、モンスターの討伐、護衛の任務など様々なクエストがあります。張り出されるものもあれば、直接依頼が来ることもあります。ランクが高いほどいい依頼が来ることが多いです。危険な依頼もランクが高いほど来ます。智也さんのステータスではいい依頼が来る可能性は低いですが彩子さんやオリバーさん、サルトさんがいればいい依頼が来る可能性もあります。パーティーでクエストは受注できるので今のメンバーだったら大丈夫ですよ」
「そうなんですね。でも俺は別に行きたいところがあるので、クエストは受けません。すみません」
「いいんですよ。私はボイスリアクトを持っている智也さんが来てくれることがうれしいんですから。もちろんギルドの人には言いませんよ。智也さんも心配していらっしゃるみたいなんで。でもパーティーとしてクエストを受注するにはパーティーメンバーの登録が必要になりますが。そうしますか?」
「必要になったらまた来ます。ありがとうございます。では、行ってきます」
マリーが一度俺たちを引き留めた。
「どちらに行かれるんですか?」
「海の街ファートルです。大樹海ではなく街道と荒野を通っていきます」
「智也さんのステータスでは厳しいんじゃないですか?で智也さんはボイスリアクトを持っているから何とかなりそうです」
「じつはパーティーメンバーにサルトさんがいるんです」
「あの剣豪サルトが!?」
「そのほかにも数人頼りになる仲間がいるので何とかして見せます!」
マリーは拍子で驚いたが調子を立て直した。ほかに何か聞きたいことがあるようだった。
「ではお気をつけて」
「では行ってきます」
俺たちウェーゼから海の街ファートルに向けて歩き出した。困難な旅が待ち植えているだろうが、きっと大丈夫だろう。俺たちは歩みを止めない。何かが待ち受けていようと、俺たちは立ち向かって見せる。そうして荒野につながる街道にたどり着いた。だが俺は何かおかしいと思った。何か見落としてないか確認したが、結局何も見つからなかった。サルトやオリバーがいるから大丈夫だろうと思った。だが、俺の直観が何かが足りないと言いつける。一体なんだろうか。アルフィーを連れて危険地帯を抜けようとしているからなんのだろうか。オリビアはオリバーが守り、アルフィーがサルトを守ったら俺は誰に守られるのか。ウォーラーたちか。だったら戦う者は?でもサルトが俺たちが攻撃される前に倒してくれたらどうなのだろう。そうであれば安全だ。だがどうなるかは結局のところ分からない。
「武器やポーションを買っていきませんか?」俺は行く直前でビビってしまった。でも危険を極力避けるためには守りを固めるしかないと思い願い出た。するとオリビアが賛成してくれた。
「荒野の魔物の中には危険なものもいますしね。ステータス差が大きいモンスターもいるみたいですしし」
俺たちは遠距離攻撃を恐れてかステータスの低い者の防具を買いに武器屋に向かった。ウェーゼで有名の武器屋だ。ここなら一級品装備でも手に入るはずだ。案の定俺たちは防御力が高い防具を揃えることができた。竜のうろこをふんだんに使った一級品の鎧だ。この緑の鎧は良い竜のうろこを使っているので状態異常になりにくい効果を持つ。また、防御力の高い黒いローブを手に入れた。このローブの防御力は普通の鎧よりも高い防御力があるようだ。ローブなので俊敏性が高く攻撃を避けることにも特化したものだ。また、ミスリルを使った防具を手に入れた。ミスリルはとても固いので防御力を大きく伸ばすのに効果的だ。とても高かったが遠距離攻撃にそなえるために購入した。また、良質なハーブを用いた高性能ポーションを手に入れた。アルフィーもポーションはもっていたのだが。より強力なものを手に入れた。手に入れたポーションの中には口からの飲むものではなく、肌に塗って吸収するものもあった。肌から吸収するタイプのものは傷に塗ると飲むよりの高い効果を発揮するものだ。パーティーには回復魔法持ちはいないので防具やポーションは必要不可欠だった。ようやく防具とポーションがそろい装着させ、海の街ファートルへ向かった。この選択がよかったのかは誰にもわからない。




