人知
智也たちはまず宿を出てこれからについて話し合った。智也と彩子は旅を続けるのはあらかじめ決まっていたが、アルフィーやファシー、オリビアたちは智也についていくのか気まなければならなかった。
「ウェーゼから海の街ファートルまではまず鉄道を使って、大樹海を抜けるルートと、街道を進み、荒野を抜けるルートがあります。一つ目のの鉄道のルートはここ最近ですがモンスターが狂暴化しているうわさがあります。鉄道で平野を抜けるのですが、このフェルケア平野は強いモンスターも多く、智也さんと彩子さん、アルフィーさんやファシーさんでは切り抜けるのは難しいでしょう。また、大樹海、ハミスカスにはステータスがほかの場所よりも数段高く、平均ステータスが1100を超えているようです。特に気を付けなければならないのはステータス1500を超えた魔物でしょうか。最近目撃情報が増えていまして、大樹海ハミスカスといえばステータス1790のガルーダスやステータス1820のリンドーレでしょうか。ガルータスは攻撃力が高く、炎を主とした攻撃を放ちます。ステータス1790なのでオリバーとほぼ互角で、危険なモンスターです。このガルータスは群れを作る傾向があるそうで、数匹いるだけで大きな脅威になります。リンドーレは木に変異したモンスターで群れを作る傾向はないですが、周囲の期に紛れてどこから攻撃してくるかわからないのです。また、防御力は高く、厄介な相手です。フェルケア平野は鉄道で抜けるので、冒険者が雇われている場合が多く、出てくるモンスターも大樹海ハミスカスに出てくるモンスターよりも弱く、大樹海よりも危険度は低く出ています。ですが油断は禁物です。そこには弱いモンスターを食って強くなるモンスターも現れるらしいです。数は少ないですが、ステータス1500を超えるほど強力だと聞いています。食うことでどんどん強くなり、凶暴性を増すようです。また、フェルキア平野のモンスターは凶暴性が増しているのです。躊躇なく襲ってくるみたいなので注意してください。2つ目のルートはウェーゼからのびる街道をひたすら進み、荒野が見えてくるので荒野をひたすら進む方法です。街道には特別危険なモンスターはいませんが、盗賊がねじろとしている屋敷が近くに何か所もあって危険ですが、大樹海を抜けるよりはリスクは少ないでしょう。屋敷にいる盗賊の頭領はステータス1500を超えているようですが、驚くほどでもありません。大きい街道だけあって警備も固く、盗賊が表立って行動できない様です。なので危険度は低いです。しかし次の荒野を抜けるのが難しいんです。荒野は道や木などが何もなく、方向感覚が狂います。また、強力なモンスターが出現する場合があるようです。ステータスが1780と1650のモンスターです。それぞれ名がバンドーロ、タリュードです。バンドーロは土属性のモンスターで地面をえぐり取ったり地面から牙をむき出しにしたりと厄介なモンスターです。防御力がべらぼうに高く、厄介なスキルを持っているので実力はステータス以上だといわれています。タリュードは攻撃のスピードがとても速く俊敏性も高いモンスターです。スピードだけならオリバー以上です。これを踏まえまして、私とオリバーもついていきます。智也さんたち運命を共にすると決めたのです」
「僕もついていくよ。智也さんの役に立ちたいんです」
オリビアの次はアルフィーだ。アルフィーは智也のことを好意的に思っている。その後、サルトが志願した。
「じゃあ俺もついていこうかな。みんなには危険そうだし。それにアルフィーが智也に同行するんだったら行くことは決まったよなものだろ。今回は雇われじゃなくて自分の意思で決めたからな。お金はいらないぜ」
「ありがとう。サルトさん。僕、うれしいよ」
「じゃあ俺もついて行こうかな、オリビア。ついてきてほしいんだろ」
「そんなわけではないよ。でもついてきてくれたらうれしいな」
オリビアは笑みを浮かべた。その後ウォーラー以外の王国騎士の2人はこれまで通り同行するようだ。
「これまでについてきたのに俺たちだけ外されるのはしゃくだろ。いいぜ俺たちも同行する」
「ありがとうございます」
「私も行くぜ」
「ありがとな、ファシー」
智也が恥ずかしそうに笑みを浮かべた。
「お前のためについていくんじゃないぞ。智也と旅をするのは楽しそうだからな。それとお前の秘密を知りたいからな」
ファシーは顔を赤らめた。
「秘密ってなんだ」
ファシーは少し驚いた。それから智也の耳元でささやいた。
「智也のボイスリアクトのことだぞ。ほかのやつに行っていいのか?」
「そうだった。みんなに説明してなかった。秘密にしていたんだった」
「そんなんでいんか、智也」
「悪かったな、ファシー」
こうして智也たちはこれまで旅をしてきたメンバー全員で旅を続行することになった。これからは冒険者ムラセに会うために海の街ファートルに行くようだ。海の街ファートルまでは二つのルートがある。どちらが楽に行けるのかはわからない。旅に楽なものはないだろう。皆はリスクを承知で旅をしようとしているだろう。しかし危険はなるべく避けたいだろう。だがメンバーにはあのサルトがいる。
サルトは国のギルド戦で7位の超級冒険者だ。超級冒険者の中でも頭一つ抜けている。彼は幼いころから才覚に恵まれ、日ごろの鍛錬を通して国で7位までに上り詰めた。彼がいるなら旅の危険度は大きく下がるだろうが。大樹海には多くの危険度の高いモンスターがいるらしい。もしかすると新種のモンスターが出現するかもしれない。もし、ステータス2000以上の新種のモンスターと遭遇したら、サルトがいても危ない。可能性としては低いが、最近は新種のモンスターの目撃証言が多い。可能性が0ではないのだ。だが、サルトは自分よりも強いモンスターとも戦った。彼自身の経験と冷静に判断する頭脳を持つサルトは強力なモンスター相手でもうまく対処するに違いない。
「ではいきましょうか。海の街ファートルへ。海が目の前に迫る家々に急な坂、そして美しい海。どれをとっても素晴らしい」
オリビアはウキウキしながら歩いている。
「オリビアさん。海の街ファートルってどんなところなんですか」
「急な坂に広い海がいいアクセントになっているのです。海はとても透き通っていて、青々としています。家々も海とのコンストラストを基調としていてとてもきれいな街なんです」
「そうなんですね。俺も見るのが楽しみになってきました」
「そうでしょう、そうでしょう」
オリビアは終始ウキウキしている。落ちバーは一度行ったことがあるので、海の街ファートルがどのようなものなのか把握している。だがオリビアほどウキウキな様子ではないようだ。オリバーはオリビアの世話役なので、いちばんはオリビアの無事なのだ。
「お嬢様、楽しそうですね。少しうれしい気持ちになりました」
「オリビアさんはいつもこうなんですか?」
「はい。私はいつもお嬢様を見ているのですが、少しはしゃぎっぱなしで、止めどころが見つからないのです。ですが、私もこういうお嬢様のことが好きですよ」
オリバーはオリビアの執事なので、遠くで見守っている。
「海の街ファートルは水の神シズーハを信仰していて、その信仰心は大都市に匹敵すると言われているんです。水の神シズーハは1000年前に天界から降り、干からびていたこの地ファートルに水をもたらしたと言われています。それを水の神シズーハが干からびた土地から解放させたのです。すごいでしょう」
「でもなんで干からびていたのでしょう」
「おそらくモンスターの影響でしょう。ステータスが2000を超えるモンスターが出現する際、負のエネルギーを放出するんです。特に人知を超えた2300を超えるほどの超強力なモンスターが出現する際は一体を荒野にしてしまうらしいんです。そのモンスターは勇者やボイスリアクターやウェダーボイスリアクターしか倒せないのです。また、勇者であってもステータス2300以上は別格で普通の攻撃が通らず、本気を出しても倒しきれない場合がほとんどなのです。ボイスリアクトでも同じく、2300以上は別格で2300を離れれば離れるほど、ボイスリアクターでも倒しにくくなります。それが超強力なモンスターなのです。一帯を荒野に変えたり、モンスターの群れを出現させたり、大都市に攻め入ったり、超強力なモンスターの脅威は個体によって違います。通常、ステータス2300以上は存在しないのですが、それは人間の力の最大値が2300なのです。なのでそれ以上の力は人間には出せないので最大値が2300になっているのです。また、ステータスが2300以上になると、仮にステータスが2300以上あれば10の差が2300未満の3倍から5倍ほどになるのです。なぜ3倍から5倍になっているのかというと、詳しく知っている者はいないようです。なので区切りよく2300以上は存在しないということにしているのです。厳密にいえば2400も数値としてもありえます。人間には不可能というだけで。セレントリウスを襲ったモンスター、ドラルゴンのステータスは2450と言われています。ということは普通の冒険者ではまったく相手にならず、超級冒険者でもまったく相手にならないです。相手になるのは、勇者、「ウェダー」ボイスリアクター、だけだと言われている。攻撃力、防御力が圧倒的の相手を倒すには、それ以上の圧倒的な力で立ち向かえばいい。実際、勇者パーティーは勇者の力を使って見事倒すことに成功しました。2300以上のモンスターはそれくらい危険なものなんです」
「人知を超えたモンスターの影響で大きな被害を受けることがあるんですね」
「はい。私たちはだから智也さんのボイスリアクトが頼りなのです。お願いします。この世界を救ってください」
智也はオリビアのいつもと違う様子に驚いた。智也はオリビアの目を見てこう返した。
「わかりました。俺が何とかしてあげますよ」
「ありがとうございます!」
「ファートルは素晴らしい町なんです。ついたら案内しますよ。ところで一つ目にしますか。それとも二つ目のほうにしますか?」
智也は悩んだ。一つ目は大樹海が危険らしい。かといって二つ目も荒野が広がる地帯だ。智也は悩みに悩んで、二つ目のほうに決めた。
「荒野は一度体験した場所だ。方向感覚が狂うのは大樹海だって同じだ。だったら一度経験した荒野のほうがいいと思ったんだ」
「わかりました。では街道のほうへ向かいましょう」




