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ボイスリアクト  作者: 夕村奥
第三章
28/31

避難

俺はこの世界のことはよくわからない。サルトがモンスターの方へ向かったのを見て俺も活躍しなければと思っていた。でも俺は彩子を守らなければならない、しかしいくらサルトが強くても何かあるとまずいからあ俺たちが見に行くことも選択肢のうちにある。いったいどんなモンスターがいるのだろう。俺の予想ではあれほどの轟音を轟かせているのだから、サルトに及ぶ魔物。もしくはそれ以上の魔物。もしそうなのであれば俺は助けに行かなければならない。俺にはボイスリアクトがあるのだから、きっと助けになれるはずだ。でも待機してほしいのがサルトの願いだろう。また、サルトは国で7番目の超級冒険者。きっと危なくなっても大丈夫なのかもしれない。俺の願いはサルトが無事に戻ってくることだ。

「サルトさん、遅いですね」

オリビアが心配そうにつぶやく。

「なにかあったのじゃないか?」

俺はオリビアの方を向いた。

「こんなに待っても帰ってこないなんて、探しに行かなければならないんじゃないか」

ウォーラーが心配そうに言った。

「でもたった一時間で大きな決断を下す機会になるとはな。俺はサルトさんを助けに行く方がいいと思うぜ。何があったんじゃないかって心配するべきだとも思うけども」

「わかります。サルトさんの身も心配する必要はあるけれどもそれでも何かあれば助けに行かなければならないということですね」

「未開拓領域には常識を覆すことがある。俺はサルトに何かあったのだとみている」

ウォーラーには懸念があるようだ。

俺はサルトを探しに行きたいのだが、彩子のことが心配というのもある。だがついてきてほしくない。ここにいて安全にしてほしいと考えている。

「じゃあ俺とウォーラーとファシーとアルフィーとショーンで探しに行くということでいいか?」

「もちろん」

「私は心配です。このままここで待機していた方がいいと思いますよ、でもわかりました。いいですよ」

「ありがとうございますオリビアさん」

オリビアは恥ずかしそうにしているが、まじめな様相を貫いている。

「じゃあ出発だ。みんな準備はいいか?ポーション持ったか?」

俺はこのパーティーでフェリル山の困難に向き合わなければならない。たとえどんな未来が待っていても俺たちなら大丈夫だ。俺にはボイスリアクトがあるのだから。それにウォーラーや王国騎士のショーンがついている。アルフィーは心もとないが俺がこのアイテムで守って見せる。ファシーは一人で逃げられるから大丈夫だろう。彩子やオリビアは心配だがオリバーさんが何とかしてくれるはずだ。俺たちはあくまで剣豪サルトさんの安否を確認するだけだ。何処で何をしているのか。そしてなぜ戻ってこれないのか。それがわかれば十分だ。

「よし、出発だ」

俺たちは彩子とオリビアのもとを離れた。

「無事でいろよみんな。俺たちはサルトさんの所へ行ってくる」


このフェリル山は未開拓領域の範囲が広く、行く先々で知らず知らずのうちに入り込むことがある。そこには常軌を逸したモンスターがいることも珍しくないという。そこそこ危険なフェリル山に智也のパーティーは翻弄されている。剣豪サルトのステータスは2070。ここハワント王国の中でもトップクラスの実力を備えている。しかしここフェリル山に点在する未開拓領域にいる強力なモンスターに対抗できるのかはわからない。もしかすると彼を優に超えるモンスターがいるのかもしれない。智也たちの安否はおそらく彼が迷い込んだ未開拓領域にいるモンスターのステータスにかかっているのだろう。

「ここら辺が未開拓領域のような気もするが。いったいどこからどこなのか。わからん」

「未開拓だからな。踏み込んだ冒険者が開拓できなかったということだろう」

「じゃあどうやってサルトさんをみつければいいのか」

「ドオン!」

「ドオオン!」

「この音を辿っていけばいいんじゃないか。きっとそこにサルトさんがいるぜ」

智也の心は高ぶってきた。智也はボイスリアクトを持っている。ボイスリアクトは不可思議な能力を引き出す能力を持つ。ボイスリアクトには上や下などの概念はないと言われている。そこに存在するだけで打ち消す能力を引き出したのがあるのが智也だ。しかしボイスリアクターの領域には彼は到達していない。

しかし能力を引き出すというのもボイスリアクトの一つの能力に過ぎない。実はボイスリアクト自体にも能力が備わっている場合もある。詳細は不明である。智也はリアクターと呼べるまで成長していないが、彼は確かにボイスリアクトで物を出現させられる。上下の概念がないということはステータスなどが関係ないのである。この世界、とくに人間世界は主にステータスという概念で動いている。ステータスが高いほど良い待遇を受け、たくさん稼げる。しかしボイスリアクトの能力は上や下の概念がないので待遇という次元ではないのである。ステータスが2200を超える最上位冒険者でも、ある一面だけを見たらステータス500の普通冒険者に劣る可能性があるのがこのゲームリフレクターの世界である。ステータスという一面が人間界で支配的になっているからステータスで待遇が変わるのである。なのでボイスリアクトは重宝される。しかしボイスリアクトがあれば使用して能力を発揮できるのかといわれるとそうではない。適正がなければ使用しても能力は発揮できないのである。智也は適正を持ち、ボイスリアクトを使用出来る。なので彼はステータスという概念から解き放された存在なのだ。

「ドオオン。ドオオオオン!!」

「音が鳴っているぞ。あっちだ」

智也たちは音が鳴る方へ向かう。そこにはサルトと数人の冒険者と全長数メートルほどの虎のようなモンスターがいた。

「グオオオオオオオオン!」

サルトが智也の方に向いて叫んだ」

「なんでここにいるんですか!?逃げてください。こいつは強いです」

「グオオオオオオオオオオオオン!」

虎のモンスターは一瞬でサルトの後ろに移動した。

「ブウウウウン!」

「スカッ」

虎は大きく振りかぶってサルトの頭めげけて拳を叩きつけた。しかしサルトは間一髪でかわし、虎のモンスターの尻めがけて大剣を振った。

「ドオオオンン!」

攻撃は見事に直撃し、モンスターは少し怯んだがいまだに健在だ。瞬間、サルトの顔にめがけて虎の拳が弾丸のように飛んできた。

「ドオオン!」

「ううッ」

サルトは少し怯んだが直ぐに体勢を立て直した。

「なんでここにいるんですか。俺はここでこの方たちを助けるために戦ってるんです。早く逃げてください」

「俺はサルトさんの様子を見に来ました。とりあえず無事でよかったです」

「俺はまだ戦えますよ」

瞬間、モンスターが百連撃をお見舞いした。

「ドドドドドドドドドドドドド!」

「サルトさん!?」

サルトは攻撃を身一つで受け止めた。

「うおおおおおおおおおお!」

「ドドドドドドドドドドド!」

「うおおおおおおおおおお!」

「ドオオン!」

サルトはなんとか攻撃は耐えたが、限界のようにみえた。このまま戦っていても勝ち目はないとわかっていた。

「大丈夫ですか、サルトさん」

「なん...とか...」

「絶対位に大丈夫じゃないですよ。俺も戦います」

「だから智也たちは逃げろ!」

「俺は逃げません。昔俺は仲間が同じ言葉を言いました。その時は俺は逃げました。俺は決して逃げたくなかったのに。今度は仲間を守って見せます」

「お前たちが今逃げないと、あの人たちは動けない。逃げられないんだ。お前たちがおぶって逃げろ」

「いやです。俺は逃げません。二度と仲間を見捨てないって誓ったんです」

「お前たちが今逃げないと、俺の夢はかなえられない。俺の夢は仲間が幸せに生きていくことなんだ」

「落ち着け、智也。今俺たちが彼らを避難させないと、彼らは終わりだ。ここはサルトに従おうぜ」

「そんな、俺...」


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